
優先対応項目
救急救命は命を助けるための緊急対応であり、当然ながら持病への対応などよりも優先されます。
最優先される項目は、気道確保・呼吸維持・循環維持です。
上記3項目がクリアできれば、次は、60mmHg以上の血圧保持・脳細胞を保護するブドウ糖と酸素の供給・老廃物処理に必要な尿量の確保です。
もちろん、救命処置が必要となった原因への対応は必要ですが、以上がクリアできていなければその処置が無意味になる可能性が高いです。
出血状態で救急搬送されてくる患者さんも少なくありません。
出血量が正確に分かるケースはほとんどなく、概算指標としてshock indexが使われます。
shock index=脈拍数÷血圧で、1.0≒23%・1.5≒33%・2.0≒43%の出血量と推定します。
正確な数値ではありませんが、輸血用血液をどのくらい準備するかなどの参考値にはなります。
蘇生用薬
救急救命でよく使用される薬の概要を紹介します。(今までに登場した薬ばかりですので、再確認のために見直しておきましょう)
アドレナリン:エピネフリンとも呼ばれ、心血流量増加や気管支拡張に使用されます。心負担が増加しますので、心疾患がある場合は注意が必要です。
ノルアドレナリン:昇圧に使用します。血管が収縮するので臓器への血流量が低下します。
ドパミン:量によって腎血流量増加→心収縮増強→血圧上昇と作用が変わります。
アトロピン:抗コリン剤で、迷走神経遮断により心拍数や末梢血管抵抗が増加します。
ニトログリセリン:冠血管拡張で心筋の虚血状態を改善します。血圧低下に注意が必要です。
リドカイン:抗不整脈薬で、心室細動や無脈性心室頻拍に第一選択されます。(同成分の局麻用との取り違えに注意)
ベラパミル:非DHP系Ca拮抗薬で、上室性頻脈に使用されます。心収縮力が低下する可能性があります。
カルシウム製剤:心筋や末梢血管の収縮を増強させます。Kの作用に拮抗するので、高K血症にも使用される場合があります。
炭酸水素ナトリウム:重炭酸イオンでアシドーシスを改善します。
モルヒネ:鎮痛作用と血管拡張による前負荷軽減で、急性心筋梗塞に使用されます。
ジアゼパム:痙攣の初期治療や鎮静に使用されます。
ステロイド薬:抗炎症作用で喘息やアナフィラキシーに使用されます。
フロセミド:利尿に使用される代表薬です。
浸透圧利尿薬:脳圧上昇や乏尿性腎不全に使用されます。
症状急変時に使用される薬
脳梗塞
発症後3時間以内であれば、血栓溶解剤であるt-PA(組織型プラスミノーゲンアクチベーター)の使用を検討します。
尿毒性昏睡
血液透析をしますが、腎不全時には高K血症の是正も重要です。腸管内のKを吸着させるために、陽イオン交換樹脂であるポリスチレンスルホン酸Na・Caを経口や注腸で投与します。ただし、陽イオンの選択性が高くありませんので、K以外の陽イオンも吸着する可能性があります。1価陽イオンを選択的に吸着する薬としてジルコニウムシクロケイ酸Naが発売されましたので、こちらが主流に変わっていくと思われます。また、Kを細胞内に取込ませて血中Kを減少させるために、ブドウ糖液とインスリンを注射する手法もあります。
肝性昏睡
血液透析や血液浄化に加えて、昏睡の原因となるアンモニアの吸収を抑制します。血中アンモニアを減少させるために、分岐鎖アミノ酸輸液を使用します。内服が可能な状態になれば、腸内細菌によるアンモニア産生を抑制するためにカナマイシンや、腸内を酸性にしてアンモニアの吸収を抑制するためにラクツロースを服用させます。
糖尿病性昏睡
血糖値計測して対応するのが基本ですが、計測ができない状況では50%ブドウ糖液を静注することが多いです。