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貧血治療薬

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貧血の分類

貧血とは赤血球およびヘモグロビンが減少する疾患の総称です。

いくつかのタイプがあり、発現する症状は同じですが、原因によって全く別の疾患と言える程の違いがあります。

赤血球の分化に合わせた分類が最も分かりやすいと思いますので、分化の段階:貧血名:原因を紹介します。

  1. 骨髄幹細胞  :再生不良性貧血:骨髄の傷害や機能不全
  2. 赤血球前駆細胞:腎性貧血   :腎臓から分泌される造血因子の不足
  3. 前赤芽球   :巨赤芽球性貧血:ビタミンB12および葉酸の不足
  4. 赤芽球    :鉄欠乏性貧血 :鉄分の不足
  5. 赤血球    :溶血性貧血  :赤血球の崩壊

なお、悪性貧血は巨赤芽球性貧血と同じ原因なのですが、食事などによるビタミン摂取不足ではなく、胃切除によってビタミンB12吸収に必要な内因子が不足することで発症する場合を言います。

鉄剤

鉄欠乏性貧血の治療に使用される薬です。

鉄は体内で組織鉄・血清鉄・貯蔵鉄として存在しており、服用した場合はこの順序で補充されていきます。

貧血症状は数週間で消失しますが、治癒のためには貯蔵鉄まで補充される必要があり、数カ月間は継続することが一般的です。

吸収率が悪く、多量に服用しても便秘・下痢・吐気などの胃腸系の有害作用を起こすだけで、あまり補充は進みません。

ニューキノロン系・テトラサイクリン系・ビスホスホネート系などのキレートを形成しやすい薬と同時服用すると、消化管内で結合してしまい吸収されなくなります。

また、鉄は必須ミネラルなのですが、過剰症が報告されており、過剰な摂取は肝機能障害を起こす場合があります。


鉄にはイオン化でFe2+となる第一鉄と、Fe3+となる第二鉄があります。

人の腸では、第一鉄は比較的吸収されやすいのですが、第二鉄はほとんど吸収されません。

食品中の鉄は大部分が第二鉄で、胃酸によってイオン化をした上で腸内細菌による還元をうけて第一鉄に変換されます。

つまり、胃酸を抑制する胃酸分泌抑制薬や、腸内細菌にダメージを与える抗生物質は、鉄分の吸収に悪影響を及ぼす可能性があります。


ビタミンB12・葉酸

核酸合成の補酵素で、不足すると正常赤血球への分化ができなくなる成分です。

巨赤芽球性貧血の治療に使用します。

悪性貧血では内服しても吸収されませんので、注射で投与します。

補足ですが、ビタミンB6もヘム鉄の合成に関与しますので、貧血治療に使用される場合があります。

蛋白同化ステロイド・シクロスポリン・ロミプロスチム

蛋白同化ステロイドには造血作用があり、再生不良性貧血や溶血性貧血に使用される場合があります。

シクロスポリンは免疫抑制剤なのですが、骨髄機能回復を目的に再生不良性貧血に使用されます。

再生不良性貧血に対する第一選択薬は、抗ヒト胸腺細胞免疫グロブリン+シクロスポリンです。

ロミプロスチムはトロンボポエチン受容体を刺激する薬で、再生不良性貧血の治療薬として新たに登場した薬です。

造血因子

エリスロポエチン

腎臓から分泌されるサイトカインで、赤血球への分化・増殖を促進します。腎不全による腎性貧血や、自己血貯血のために使用します。透析患者の貧血にもよく使われますが、血圧が上昇しやすく、連用によって赤芽球癆を起こす可能性があります。

ロキサデュスタット・ダプロデュスタット・バダデュスタット

低酸素状態で誘導されるプロリン水酸化酵素を阻害する薬で、内服によって二次的にエリスロポエチンの産生を促進します。

コロニー刺激因子(CSF)

白血球(顆粒球)系細胞の分化・増殖を促進する成分です。

エルトロンボパグ

トロンボポエチン受容体の刺激で血小板を増加させます。骨髄前駆細胞の分化を促進する作用もあり、再生不良性貧血の治療にも使用します。


これらの薬剤による貧血治療には時間がかかることが多く、効果も十分でないケースもあります。

速効性や一時的でも確実な効果を期待する場合には、輸血を行います。

先天的な溶血性貧血では、脾臓の摘出手術が行われる場合もあります。

血液凝固・血栓溶解に関連する薬

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血液凝固・線溶系

血管は我々が想像する以上に傷つきやすい組織で、損傷を受けた場合に速やかに出血を止める仕組みが常時稼働しています。

血液を凝固させて出血を止める仕組みを血液凝固系と言います。

血栓を作って出血を止めるわけですが、いつまでも血栓を残しておくと血流が悪くなってしまいますので、役割を終えたら取り除く必要があります。

この血栓を処理する仕組みを線溶系と言います。

血液凝固系と線溶系がペアとなって働いてくれていることで、血液循環が維持できているわけです。

血液凝固系の進行過程は次のとおりです。

  1. 1.血管内皮が損傷を受けると、その部位に血小板が凝集します
  2. 2.血小板の凝集が血液凝固因子を刺激します
  3. 3.血液凝固因子がプロトロンビンをトロンビンに変換します
  4. 4.トロンビンがフィブリノゲンをフィブリンに変換します

1の反応を一次止血・2~4の反応を二次止血と言い、血小板の凝集による血栓は不安定で、一般的に血栓と言うのはフィブリン塊のことです。

血液凝固因子は多種類あり、連鎖式で爆発的に反応を進行・拡大していきます。

第Ⅱ因子・第Ⅶ因子・第Ⅸ因子・第Ⅹ因子の生成にはビタミンKが必要です。

また、Ca2+(カルシウムイオン)は第Ⅳ因子でもあり、多くの過程の進行に関与しています。

凝固系に比べれば線溶系は簡単な行程で、プラスミノゲンがプラスミノゲンアクチベーターによってプラスミンに変換され、プラスミンがフィブリンを分解します。

プラスミンが長時間存在していると新たな血液凝固ができませんので、短時間で失活します。

凝固系が稼働している間は、プラスミノゲンアクチベーターを阻害するインヒビターによって変換が阻害され、線溶系はストップしています。

さらに、凝固阻止系や線溶阻止系もあるのですが、あまりに専門的な内容になってしまいますので省略します。

抗血小板薬

血液凝固系の最初に登場する血小板の働きを阻害する薬で、血液の一次凝固を抑制することによって血栓防止に使用されます。

多くの薬がありますが、作用機序から分類すると、次の3つに集約されます。

  • ◎強力な血小板凝集作用を持つTXA2の産生を阻害する
  • ◎血小板内c-AMPの濃度を上昇させて遊離Caを減少させる
  • ◎血小板5HT2受容体を阻害してCa濃度上昇を抑制する

アスピリン

血小板のシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害して、TXA2の産生を阻害する薬です。COX阻害作用は非可逆的で、血小板は核を持たないために回復ができず、一度阻害されるとその寿命の間は効果が続きます。他のNSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬)にも同じ作用はあるのですが、可逆的な作用であるために血栓防止目的には使用しません。ただし、高用量のアスピリンを使用すると、血管内皮細胞のCOXまで阻害され、血小板凝集抑制作用を持つPG-I2の産生まで抑制されることになり、効果が相殺されてしまいます。(増量が効果の増強にならないこの現象をアスピリンジレンマと言います)

チクロピジン・クロピドグレル・チカグレロル

血小板ADP受容体に結合し、ATPからc-AMPへの変換を抑制する薬です。血栓防止効果は良いのですが、肝障害や血小板減少を起こしやすく、定期的な血液検査で安全確認が必要です。クロピドグレルはチクロピジンより有害作用が少ないので、使用頻度が増えており、アスピリンとの合剤も登場しています。チカグレロルはクロピドグレルに勝る薬として登場したのですが、人種差によるものか?日本人でのデーターでは劣る結果となっています。

シロスタゾール

血小板内のホスホジエステラーゼⅢを阻害する薬で、c-AMPの分解を阻害します。血管拡張作用もあり、臓器への負荷が少ない薬で、他の血栓防止薬を使用している患者が出血の可能性がある高度危険検査を受ける際に、代替えに使用されるケースもあります。効果は穏やかで安全性は高い薬ですが、うっ血性心不全や妊娠中には禁忌です。

リマプロスト・ベラプロスト

プロスタグランジン系薬で、アデニルシクラーゼの活性化によりc-AMPを増加させます。血管拡張作用も有しています。サブタイプによって適応に違いがありますので、選薬には注意が必要です。リマプロストはPG-E1で、慢性動脈閉塞疾患と腰部脊柱管狭窄症の適応です。ベラプロストはPG-I2で、慢性動脈閉塞疾患と肺高血圧症の適応です。プロスタグランジン系の共通事項として、子宮収縮作用があるために妊娠中に禁忌です。

サルポグレラート

血小板5HT2受容体を遮断して血小板凝集を抑制するとともに、血管平滑筋5HT2受容体にも作用して血管収縮を抑制する作用もあります。慢性動脈閉鎖症などの整形領域で使用される薬です。この薬も比較的安全性が高いのですが、妊娠中には禁忌です。

オザグレル

血小板内TXA2合成酵素を阻害する薬です。注射薬と内服薬で適応が違い、注射はクモ膜下出血の術後・脳血栓症急性期に使用し、内服薬は気管支喘息に使用します。(喘息に対する作用は抗炎症によるもので、血小板との関連はありません)

抗血液凝固薬

血液凝固因子を阻害する薬・トロンビンの作用を阻害する薬・Caを除去する薬などが含まれます。(トロンビンもCaも血液凝固因子ですから、広い分類では全て血液凝固因子を阻害する薬に入ります)

ワルファリン

ビタミンKの作用を阻害することで血液凝固因子の合成を阻害する薬です。血液凝固因子を直接阻害するわけではありませんので、投与前に合成された凝固因子が存在する間は効果が出ません。効果に個人差があり、ビタミンKによって効果が減弱しますので、含有する薬や食品で効果が大きく変動します。(納豆・青汁・クロレラにはビタミンK含有量が多いので、食べないように説明します)定期的にプロトロンビン時間を計測して、効果確認と服用量調整が必要です。胎盤関門を通過しますので、妊娠中には禁忌です。

アピキサバン・リバーロキサバン・エドキサバン

活性第Ⅹ因子を直接阻害する薬で速効性があり、ワルファリンのように効果変動を起こす要因が少なく、細かな用量調整が不要とされています。適応に制限がある点と、正式に認められたモニタリング指標がないので、定量的な効果確認ができない点が欠点です。(抗FⅩaアッセイが候補のようです)

ヘパリン

体内にも存在する成分で、アンチトロンビンⅢを活性化してトロンビンの作用を阻害します。作用時間が短く内服では分解されてしまいますので、点滴静注で使用することが多いです。(透析などの体外循環でも使用されます)胎盤関門を通過しませんので、妊娠中でも使用は可能です。拮抗薬はプロタミンです。

ダビガトラン・アルガトロバン

トロンビンの活性部位に結合して血液凝固作用を阻害する薬で、アンチトロンビンⅢが少ない肝機能障害でも効果を発揮します。ダビガトランは内服薬で、アルガトロバンは注射薬です。ダビガトランは生物学的利用率が低く、活性化には2段階の代謝が必要なので、血中濃度の個人差が大きく、用量調整が必要な場合があります。モニタリング指標はPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)です。

クエン酸ナトリウム

Caを除去することで血液凝固を抑制する薬で、人体に適応するのではなく輸血や採血の血液が凝固しないように使用します。

血栓溶解薬

名前のとおり血栓を溶解する薬で、止血が完了していない状態での使用は禁忌です。

ウロキナーゼ

血漿中のプラスミノゲンをプラスミンに変換する薬です。血栓の外側から溶解していくことになりますので効力は弱く、血栓消失までに多量を要する場合が少なくありません。血栓以外の場所で出血を起こすことがあり、注意が必要です。

組織型プラスミノゲンアクチベーター(t-PA)

フィブリン上に存在するプラスミノゲンをプラスミンに変換する薬で、ウロキナーゼよりも効率的に血栓溶解します。急性心筋梗塞や脳梗塞において、発症後数時間以内に投与することが推奨されています。

止血薬

トロンビン

フィブリノゲンをフィブリンに変換する血液凝固因子で、上部消化管出血の止血に使用します。胃酸によって失活しますので、牛乳などを服用した後に服用します。致死的な凝血やアナフィラキシーを起こす場合があり、静注は禁忌です。

ビタミンK

ビタミンK欠乏症やワルファリン使用による出血に使用します。血液凝固因子の産生によって効果を発揮しますので、効果発現までに12時間以上を要します。また、肝機能障害があると、凝固因子産生が進まずに無効な場合があります。

トラネキサム酸

プラスミンの作用を阻害することでフィブリンの分解を抑制する薬です。抗炎症作用や色素沈着抑制作用もありますので、止血以外の目的でも使用される成分です。

カルバゾクロム

毛細血管の抵抗性を増大して止血すると考えられている薬です。単独での効果は弱く、補助的に併用される薬です。

アドレナリン・ノルアドレナリン

血管収縮作用によって局所的な止血に使用します。大量に血管に入ると、交感神経興奮作用が起こります。

外用止血剤

アルギン酸ナトリウムやゼラチンは手術創の止血に使用されます。

タコシールは、フィブリンやトロンビンをコラーゲンシートに固着したもので、手術創の止血や接着に使用されます。

血液製剤

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血液そのもの、あるいは血液から分離された製品です。(改変を加えた製品も含みます)

特定生物由来製品に該当しますので、製剤の持つ利点や欠点を説明した上で、使用の同意を得る必要があります。

後日に有害事象(感染症など)が発生した場合に、追跡調査や確認ができるように管理簿は20年間の保存義務があります。

血液は生体組織であり、輸血は一種の移植ですので、他に選択肢があるのであれば実施しない方がよいと思われています。

分類

全血製剤:血液に凝固防止のクエン酸ナトリウムなどを添加したもので、大量出血によって赤血球と血漿を同時補充しなければならない時に使用します。

血液成分製剤は、赤血球・血小板・血漿に分離した製剤です。

赤血球製剤:貧血や出血で赤血球の補充が必要な場合に使用します。ABO式血液型不適合による新生児の溶血には、合成血が使用されますが、これは赤血球を合成したわけではなく、O型赤血球を生理食塩水で洗浄した後にAB型の血漿を加えたものです。

赤血球を含む全血製剤・赤血球製剤は、赤血球の糖代謝を抑制するために2~6℃で保存します。

血小板製剤:血小板減少による出血などに使用されます。他の成分よりもヒト組織適合白血球抗原(HLA)に対する抗HLA抗体が産生されやすく、効力の低下や有害事象が発生しやすい製剤です。継続使用する場合は、白血球除去フィルターを使用して抗体産生を防止します。血小板は低温や静置で凝集しやすいために、20~24℃で振盪保存します。

血漿製剤:複数の血液凝固因子が欠乏した出血に使用されます。凍結状態で保存されていますので、使用直前に解凍・加温し、経時的な失活を防ぐために3時間以内に使用します。

血漿分画製剤は、血漿に含まれる成分をさらに細分したものです。

アルブミン製剤:重度熱傷による大量消費、出血やネフローゼ症候群による体外排泄、肝硬変による合成低下などで起こる低アルブミン血症に使用されます。高張にした製剤は、腹水や肺水腫などの浮腫を改善する目的で使用されます。

免疫グロブリン製剤:低グロブリン血症や重度感染症に免疫能を高める目的で使用されます。特定の抗体を多く含む製剤を、抗原除去のために使用するケースも多いです。

血液凝固因子製剤:血友病などで特定の血液凝固因子が不足している場合に使用されます。

アンチトロンビンⅢ製剤:血液凝固を抑制する成分で、血栓症や播種性血管内凝固症候群(DIC)に使用されます。

組織接着剤:フィブリノゲンとトロンビンを主成分とした製剤で、血液凝固反応を誘導して、傷や手術部などの接着に使用されます。

有害作用

溶血を起こす副作用には即時型と遅発型があります。

即時型溶血性副作用はABO型の血液型不適合によるもので、輸血直後から24時間以内に起こり、血管内溶血によって大量のヘモグロビンが尿細管に排泄されて、腎障害を起こす危険があります。

遅発型溶血性副作用は他人の赤血球対する抗体産生によるもので、1~2週間後に残存している赤血球を溶血させます。

脾臓などで分解されるために血管外溶血と呼ばれ、ヘモグロビンがビリルビンに代謝されるために軽い黄疸や貧血を起こす場合があります。

溶血を伴わない副作用は、白血球や血小板に対する抗体産生や、病原体感染によるものです。

抗体産生は免疫の過敏反応で、症状はアナフィラキシー・輸血後移植片対宿主病(輸血後GVDH)のような重症なものから、蕁麻疹程度の軽症まであります。

製剤に放射線照射を行うことで、輸血後GVDHを防ぐことができます。

製剤となる前の血液は、病原体チェックが徹底されるようになりました。

しかし、全種を網羅しているわけではなく、感染直後では検出されないケースもあります。

ちなみに、B型肝炎ウイルスでは44日・C型肝炎ウイルスでは24.5日・HIVウイルスでは43.5日の検出空白期間があります。

この期間内の血液が製剤化される危険は、現在の技術で防ぎようがありません。

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