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恒常性(ホメオスタシス)

我々の体は、外部からの様々な刺激や疲労などの内部要因によって、常に影響を受けています。

体温や心拍数などの体内環境が大きく変動すると生命活動が危険になる場合もあるために、体には一定の範囲に留まるように調整機能が備わっています。

神経性調節機構および液性調節機構と呼ばれるシステムで、特に意識しなくても体内環境の変化に応じて自動的に対応してくれます。

便利なシステムではあるのですが、調整能力を超える変動があった場合や、システムそのものに不調が起こった場合には体調不良を来し、さらには病気へと進んでしまうことがあります。

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神経性調節機構

神経細胞を介して調節を行うシステムで、神経線維内では電気信号によって刺激が伝わるので、スピーディーな対応が可能です。

神経線維(正式には軸索)は長く伸びた形をしていますが、脳から末端までつながっているわけではなく、シナプス間隙と呼ばれる隙間があります。

この隙間では電気信号が途絶しますので、神経伝達物質と呼ばれる体内物質が刺激の伝達を担います。

主な神経伝達物質は、アセチルコリン(Ach)・ノルアドレナリン(NA)・セロトニン(5HT)・ドパミン・グルタミン酸・ガンマーアミノ酪酸(GABA)などで、特にここに例示した物質は後々何度も出てきますので、早めに名前だけでも覚えておきましょう。

中枢神経と末梢神経において刺激伝達を担う物質は少し異なるのですが、種類が違っても刺激伝達の仕組みは同じです。

神経線維を伝わってきた電気信号が末端(図では左側の軸索)に到達すると、そこに貯蔵されていた神経伝達物質がシナプス間隙に放出されます。

放出された神経伝達物質が、次の神経細胞(図では右側の樹状突起と記された神経線維)に結合することで刺激が伝わります。

間隙にいつまでも神経伝達物質が残っていると、常に刺激を送り続けることになりますので、役目を終えると短時間で、分解酵素によって分解されるか放出した末端に再吸収されます。

神経を伝わった刺激は、最終的に効果器と呼ばれる組織や臓器などに到達し、刺激に応じた働きを行います。

液性調節機構

神経を介さずに刺激を伝達する方式で、刺激伝達を担う物質を血液や組織間液に分泌し、その流れによって運びます。

代表的なものがホルモンで、血液中に放出されて、広い範囲に刺激を伝える働きがあります。(個々のホルモンについては内分泌系に作用する薬で紹介します)

局所的に働くものをオータコイドと言い、主要なものを列記しておきます。

  • ヒスタミン
  • セロトニン
  • アンギオテンシン
  • ブラジキニン
  • プロスタグランジン
  • トロンボキサン
  • ロイコトリエン
  • インターロイキン
  • インターフェロン
  • 腫瘍壊死因子(TNFα)

これらも後から登場しますので、名前は覚えておきましょう。

プロスタグランジン・トロンボキサン・ロイコトリエンは、炎症に関係して細胞膜リン脂質のエイコサエン酸から作られる刺激伝達物質で、総称してエイコサノイドとも呼ばれます。

インターロイキン・インターフェロン・TNFαなどはサイトカインと呼ばれる方が多い物質です。

これらの生理活性物質(刺激伝達物質)が効果器に到達・結合することで、それぞれに応じた働きを発現します。

昔は、ホルモンとオータコイドを厳格に分けていましが、様々なオータコイドが発見されて、局所的な作用という定義に当てはまらないものが増えました。

今ではオータコイドという区分名をあまり使わなくなったように思います。


セロトニンは、神経性でも液性でも登場する伝達物質です。

この特性ゆえに、体内の様々な部位で多様な作用を発揮します。

受容体

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恒常性の維持を担う神経性調節機構でも液性調節機構でも、刺激伝達物質が関係することは前項で紹介しました。

刺激伝達物質が次の神経線維や効果器に結合することで刺激が伝わりますが、この結合する部位を受容体(レセプター)と呼びます。

結合した刺激伝達物質が受容体から細胞内に入るのではなく、結合によって細胞内の別物質(セカンドメッセンジャー)の量が変化し、それが機能性蛋白質の活性や量に変化を及ぼすという間接的な刺激を与えます。(核内受容体は例外で、別物質を介しません)

また、受容体には特異性があり、どの刺激伝達物質でも結合するわけではなく、それぞれが結合する受容体が別々に存在します。

アセチルコリンが結合する受容体がAch受容体・ノルアドレナリンが結合する受容体がNA受容体で、Ach受容体にノルアドレナリンは結合できませんし、NA受容体にアセチルコリンは結合できません。

ただし、構造に一定以上の類似性があれば、刺激伝達物質以外でも結合します。

この仕組みは刺激伝達物質に限ったことではなく、他の生理活性物質や薬の大部分も受容体を介して刺激を伝えます。


受容体の構造的分類として、イオンチャンネル内臓型・G蛋白質共役型・キナーゼ連結型・核内型があり、この区分は研究者には重要なのでしょうが、医療現場で必要になったことはありませんので、覚える必要はないと思います。

むしろ、伝達物質と対になる受容体名の方が重要で、今後頻繁に登場するものを列記します。

他にも数々登場してきますが、これだけは今覚えてしまいましょう。

  • アセチルコリン・・・・・・Ach受容体
  • ノルアドレナリン・・・・NA受容体
  • セロトニン・・・・・・・・・・5HT受容体
  • ドパミン・・・・・・・・・・・・D受容体
  • グルタミン酸・・・・・・・・NMDA受容体
  • ガンマーアミノ酪酸・・GABA受容体
  • ヒスタミン・・・・・・・・・・H受容体
  • アンジオテンシン・・・・AT受容体(AⅡ受容体)
  • プロスタグランジン・・PG受容体
  • トロンボキサン・・・・・・TX受容体
  • ロイコトリエン・・・・・・LT受容体

受容体に対する薬の作用

薬の一部は、刺激伝達物質などの生理活性物質と構造が似たもので、その物質の受容体と結合して刺激を操作します。

受容体に対してどのような刺激を与えるのかで、薬を分類することができます。

受容体作動薬(アゴニスト):受容体と結合し、生理活性物質と同じ刺激を与える薬です。

受容体遮断薬(アンタゴニスト):受容体と結合しますが、細胞に刺激を伝えない薬です。この薬が受容体と結合している間は、生理活性物質が結合できないために、作用を阻害することになります。

結合の様式によって、競合的遮断薬と非競合的遮断薬に細分されます。

競合的遮断薬は、受容体との結合において生理活性物質と競う薬で、どちらが多く結合するのかで阻害の程度が変化します。

非競合的遮断薬は、一度結合してしまうと外れないあるいは構造変化によって、その受容体に生理活性物質が結合できなくしてしまう薬で、阻害が強く長く続くことになります。

受容体部分作動薬(パーシャルアゴニスト):受容体と結合して細胞に刺激を与えますが、その刺激が生理活性物質よりも弱い薬です。生理活性物質が存在しない環境下では、弱いながら刺激を伝えますので作動薬として作用します。生理活性物質と併存する環境下では、この薬が受容体に結合すると、本来の作用よりも弱くなってしまうので、遮断薬のように振る舞います。

パーキンソン病や統合失調症などの、作用が強すぎても弱すぎても好ましくない領域で、部分作動薬がよく使われます。

受容体と直接結合しなくても、間接的に刺激や抑制する薬もあります。

  • 伝達物質の遊離を促進する薬
  • 伝達物質の分解酵素を阻害する薬
  • 伝達物質の再取込を阻害する薬
  • 伝達物質の合成を促進する薬

これらの薬は受容体への刺激を増やすように働きます。

ただし、再取込を阻害する薬では、シナプス間隙のような狭い領域においては作用が顕著ですが、広い領域ではほとんど作用が発現しません。

また、合成材料となったり合成酵素を亢進させて合成を促進する薬では、伝達物質が不足状態にある時にのみ刺激作用が現れます。

  • 伝達物質の遊離を抑制する薬
  • 伝達物質の合成酵素を阻害する薬
  • 貯留した伝達物質を枯渇させる薬

これらの薬は受容体への刺激を減らすように働きます。

特に、伝達物質を枯渇させる薬は、いくら遊離の信号が届いても放出するものがなくなるので、その作用は強力です。

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