イラスト1

漢方をもっと身近に

西洋薬と東洋薬のハイブリットにより、
より効果的で安全な治療を。

炎症の発生機序

症状

発赤・発熱・腫脹・疼痛が4大症候で、炎症という文字が示すとおり炎が沸き立つような症状です。

副次的に機能障害を併発することも少なくありません。

開始時点の反応はブラジキニンという刺激伝達物質が引き起こすもので、その刺激が連鎖反応を起こして炎症となります。

いずれの症状も不快なものですが、傷害によるダメージを修復するためや、更なる傷害を防ぐための警告反応でもあります。

よって、完全に抑制することは、好ましくないケースもあります。

アラキドン酸カスケード

アラキドン酸は炎症反応の途中に登場する重要な物質であり、炎症が進行する行程が水が一気に流れ落ちるように進行することから、滝を表すカスケードという言葉を合体して、炎症の進行を表す名前になっています。

ブラジキニンの刺激によって、細胞膜のホスホリパーゼA2が活性化されます。

ホスホリパーゼA2は細胞膜のリン脂質からアラキドン酸を遊離します。

アラキドン酸にシクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素が作用すると、プロスタグランジン(PG)やトロンボキサン(TX)が産生されます。

産生されたPGやTXには、組織血流量の増加・痛覚閾値の低下・発熱などの作用があるために、最初のブラジキニンが引き起こす症状をさらに強くします。

また、アラキドン酸にリポキシゲナーゼという酵素が作用すると、ロイコトリエン(LT)が産生されます。

LTには白血球の遊走を促進したり、気管支を収縮する作用があります。


通常の痛み止めは、COXの作用を阻害することで、炎症の行程を途中で止める薬です。

すでに産生されたPGやTXの作用は阻害できませんので、我慢できなくなってから使用するよりも早期に使用した方が効果的です。

また、COXの阻害によって行き場を失ったアラキドン酸は、LT産生の方向に向かうことになります。

通常ではあまり問題になりませんが、喘息の素因がある人においては、気管支が収縮して喘息発作を誘発することがあります。

アスピリンという鎮痛薬で散見された副作用であるため、アスピリン喘息と呼ばれます。(アスピリンに限らず、COXを阻害する薬であれば、どれでも起こりうる副作用です)

副腎皮質ステロイド薬

イラスト2

副腎皮質ホルモン

副腎皮質ホルモンには糖質コルチコイドと鉱質コルチコイドがあります。

これらのホルモンは性ホルモンと同様に、コレステロールから合成されます。

鉱質コルチコイドは電解質代謝(Na増加・K減少)や体内の水分保持に関与しており、アルドステロンが代表的な成分です。(血圧の腎性調節機構でも重要な役割を担っています)

糖質コルチコイドは以下の広範囲な領域に関与しています。

◎糖質代謝:組織への糖の取り込みを抑制し、インスリン分泌抑制・グルカゴン分泌促進により血糖値を上昇

◎蛋白質代謝:蛋白質を分解してアミノ酸からの糖新生を促進

◎脂肪代謝:脂肪を分解して遊離脂肪酸やコレステロールを増加

◎骨・Ca代謝:骨芽細胞を阻害して骨形成を抑制し、腸のCa吸収や腎のCa再吸収を抑制

◎抗炎症・免疫抑制:アラキドン酸の産生抑制、炎症性サイトカインの産生抑制、白血球・マクロファージの機能抑制、抗体産生抑制

外的ストレスに対応する全作用を持つとされており、1種でこれほど多方面の作用を持つ薬はなく、抗生物質とともに医療を大きく変えた薬です。

副腎皮質ステロイド薬とは、糖質コルチコイドそのものであったり化学構造に改変を加えた誘導体の総称です。

糖質コルチコイドは弱いながら鉱質コルチコイドの作用も持ち、副腎皮質ステロイド薬の中にも鉱質コルチコイドの作用を持つものがあります。(この作用は利点となるケースよりも欠点となることが多いです)

広範な作用を持つことは良いことばかりではなく、その作用を望まない状況下では有害作用となります。

副腎皮質ステロイド薬の欠点は、有害作用も多岐に及ぶことです。

●免疫抑制   → 感染症増悪

●粘膜修復力低下→ 消化性潰瘍・口内炎誘発

●脂肪皮下沈着 → 肥満(体幹部)

●肝糖新生促進 → 糖尿病誘発

●電解質異常  → 浮腫・高血圧

●Ca吸収低下 → 骨粗鬆症

●副腎委縮   → 副腎不全

●蛋白異化促進 → 筋委縮

●眼圧上昇   → 緑内障悪化

他にも、無菌性骨壊死・抑うつ・不眠・ムーンフェイスなどもあります。

また、外用で使用した場合には、皮膚委縮・紅斑・色素沈着を起こす可能性があります。

主な薬

内服や注射によって体内に使用する薬は、およそ3つのクラスに区分されます。

ヒドロコルチゾン

糖質コルチコイドそのもので、内服・注射・外用で使用されます。副腎皮質ステロイド薬の中では作用が弱い成分ですが、ショック時の対応では他よりも優れた効果があります。電解質への作用も有しています。

ブレドニゾロン

ヒドロコルチゾンの約4倍の強さがあり、電解質への作用もあります。半減期が短いので使いやすく、様々なケースに使用されます。

デキサメタゾン・ベタメタゾン

ヒドロコルチゾンの約30倍の強さですが、電解質への作用はありません。脂溶性が高く、半減期が長いので有害作用に注意が必要です。つい最近、コルナウイルス感染症の治療薬としてデキサメタゾンが認可されました。しかし、サイトカインバーストと呼ばれる免疫の過剰反応に対応する薬であり、安直に使用すると免疫抑制によってウイルス数が増加する可能性があります。コロナウイルスを撃退する薬ではありません。

強さの比較を記載しましたが、これは同量を使用した場合であって、現実的には使用量で調節しますので、臨床においてこの数値程の差にはなりません。

効力としてはもっと上のクロベタゾールもありますが、外用でのみ使用します。

ブルチカゾン・ブデソニドは、主に気管支喘息に対して吸入薬として使用される成分です。(ブデソニドはクローン病に対して内服あるいは注腸フォームとしても使用されます)


外用ステロイド薬の強さ

外用に使用される副腎皮質ステロイド薬には、非常に多種の成分があります。

強さはweak(弱)~strongest(最強)の5段階のランクに分類されます。

ただし、成分だけではなく、結合する酸や基材によってもランクが変わる場合があり、注意が必要です。(明確な法則はありません)

ヒドロコルチゾンを例にしますと、酢酸ヒドロコルチゾンは「弱」ランクで、酪酸ヒドロコルチゾンは「中等度」ランク、酪酸ジプロピオン酸ヒドロコルチゾンは「かなり強」ランクです。

また、軟膏・クリーム・ローションなどの基材によっても、ランクが違う場合がありますので、外用のステロイド薬は成分名だけから強さの単純比較ができません。

外用薬といえども長期大量に使用していると、内服した場合と同じ有害作用の危険がありますので、症状が抑えられる範囲内で可能な限り弱いランクを使用すべきです。

非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)

イラスト3

作用機序と問題点

通常使用される痛み止めの大部分は、非ステロイド系抗炎症薬に分類されます。

(略して非ス薬やエヌセイズとも呼ばれます)

作用は、シクロオキシゲナーゼ(COX)という炎症に関連する酵素を阻害することで、炎症反応(アラキドン酸カスケード)を途中段階でブロックします。

つまり、プロスタグランジン(PG)やトロンボキサン(TX)の産生が抑制されますので、それらの成分が引き起こす炎症症状を軽減することになります。

しかし、PGやTXは不利益な作用だけではなく有益な作用も持っていますので、産生抑制が好ましくない影響を及ぼすこともあります。

PGには、胃粘膜の防御因子を強化する働きや、腎血流量を維持する働きがあり、産生抑制によって胃腸障害や腎障害を起こす可能性が高まります。

TXには血液凝固を促進する働きがあり、産生抑制によって出血を起こしやすくなります。

また、アラキドン酸がロイコトリエン(LT)に変換される割合が増え、この成分が持つ気管支収縮作用によって、喘息発作を誘発する可能性も高まります。(アスピリン喘息と呼ばれる副作用です)

オータコイドに関連しない問題点もあります。

胎児の動脈管が早期に閉鎖したり、子宮中の羊水が減少を起こす場合がありますので、妊娠末期には禁忌とされます。

ライ症候群という一種の脳症を誘発する場合があり、その発症例は小児に集中していることから、15歳未満には使用注意とされます。(現実には、特別な場合以外は小児に使用しません)

改良・副作用防止対策

上記の問題点を少しでも軽減するために、製剤学的な工夫が成されてきました。

胃腸障害の軽減を図って、プロドラックにしたり、坐薬や経皮投与薬にして胃腸を経由しない剤形にしたものがあります。

服用回数を減らし、血中濃度の急激な上昇を抑えるために、徐放性製剤にしたものもあります。

半減期が長く効果が持続する成分の開発も、同じ理由です。

しかし、これらの対策は胃腸を通過する時の直接的な傷害を軽減するだけで、PGの産生抑制による胃腸障害を防ぐことはできません。

COXの研究から、COX1とCOX2が存在していることが判明しました。(COX3も脳に存在しています)

COX1は生体機能維持のために常時発現している酵素で、COX2は炎症の刺激を受けた時に発現する酵素です。

COX1を阻害せずにCOX2だけを阻害する薬があれば、有害作用が少ない抗炎症薬になると予想され、COX2選択阻害薬の開発が進みました。

COX2の阻害効果はPGに強く・TXに弱いことから、想定されていたような理想的な抗炎症薬にはなっていませんが、新しい選択肢にはなっています。

主な薬剤

NSAIDsには非常に多くの種類があり、全てを紹介することは不可能でありあまり意味がありませんので、代表的な薬を紹介します。

アスピリン

サリチル酸系で、最初に合成された薬としても有名です。市販薬のバファリンAは胃粘膜保護成分のダイアルミネートと結合させたもので、鎮痛・解熱に使用されます。医療用でのアスピリンは主に血漿板凝集抑制による血流促進の目的で使用されます。他のNSAIDsとは違い、COXを非可逆的に阻害します。血小板は核を持たない組織であるために、一度阻害されるとCOXの再生ができずに最後まで効果が続きます。ただし、高用量(鎮痛・解熱に使用する量)では、血管内皮細胞のCOXまで阻害されて、PGの産生が減少します。PGにも血小板凝集を抑制する作用があり、その作用が弱まることで効果が減弱してしまいます。量を増やすと効果が減弱するので、この現象をアスピリンジレンマと呼びます。この理由により、血小板凝集抑制では少量を継続的に使用します。

ロキソプロフェン

プロピオン酸系で、解熱・鎮痛・抗炎症の作用を平均して持ち、胃腸障害は比較的少ない系統です。プロドラックであり、吸収後に代謝を受けて効果を発揮します。現在、最も使われている鎮痛薬です。(イブプロフェンやケトプロフェンなど、この系統の薬は非常に種類が多いです)

メフェナム酸

アントラニル酢酸系で、比較的強い鎮痛作用を持ち、昭和後期には最も汎用されていた薬です。インフルエンザ脳症との関連が疑われてから使用量が激減しました。

インドメタシン

インドール酢酸系で、解熱・鎮痛・抗炎症作用が強いですが、胃腸障害も強い薬です。今では内服薬として使用するよりも、主に坐薬や外用薬として使用されます。市販薬のバンテリンがこの成分です。

ジクロフェナク

フェニル酢酸系で、インドメタシンと同程度の作用を持ちながら胃腸傷害は比較的少ない薬です。ロキソプロフェンの登場前には最も使われていた薬です。スイッチOTC薬として、市販薬でも配合している薬があります。

エトドラク

ピラノ酢酸系で、COX2選択性があり、解熱・鎮痛・抗炎症のバランスが良い薬です。COX2選択性がある薬に共通して、胃腸に対する悪影響は少ないのですが、TXへの阻害作用が弱いために鎮痛や抗炎症作用は穏やかになります。

メロキシカム

オキシカム系で、解熱・鎮痛・抗炎症作用が強く、作用時間が長いので1日1回服用です。COX1よりCOX2を3倍以上強く阻害し、弱いながらCOX2選択性があります。胃腸や腎への有害作用は少ないですが、蓄積に注意が必要です。整形外科領域の慢性疼痛疾患に対してよく使われる薬です。

セレコキシブ

コキシブ系で、COX2選択性が高く、COX2選択阻害薬です。ロキソプロフェンと同程度の鎮痛・抗炎症作用をもち、胃腸障害は極めて少ない薬です。ただし、血液凝固を抑制するPGを減らし、血液凝固を促進するTXをあまり抑制しないので、血液凝固を促進することになり、血栓塞栓のリスクがあると警告が出されました。

塩基性抗炎症薬

チアラミドはNSAIDsではないのですが、鎮痛・抗炎症作用を持つ薬です。

NSAIDsは大部分が酸性の薬剤(セレコキシブのみ中性)なので、それと対比して塩基性抗炎症薬と呼ばれます。

COXの阻害作用はほとんどなく、詳しい作用機序は分かっていません。

作用・有害作用とも弱く、NSAIDsが使用できない場合に選択されます。(消化性潰瘍・血液障害・肝障害・腎障害・アスピリン喘息には同じく禁忌です)

解熱・鎮痛薬

解熱・鎮痛作用はあるが抗炎症作用がない薬で、こちらもNSAIDsには分類されません。

体温中枢に作用して熱放散を促進させる+痛覚感受性を低下させることで効果を発現すると考えられています。

(一時期、脳内のCOX3を阻害すると説明されていましたが、作用が合致しないために否定されました)

アセトアミノフェン

アスピリンと同等の解熱・鎮痛作用を持つ薬で、小児に対する安全性が比較的高いために、15歳未満への第一選択薬となっています。ただし、代謝物によって肝障害を起こす可能性があり、飲酒をする者に影響が大きいとされますので、大人に継続使用する場合には注意が必要です。小児によく使う薬が安全な薬とは限らないという典型的な例です。

ピラゾロン系(ピリン系)

作用は強力なのですが、ピリン疹と呼ばれる特有の皮膚アレルギー症状や、造血障害を起こす場合があり、広く使われることはありません。アミノピリンは内服すると胃内でニトロソ化合物を生成し、発癌性を発現するために注射でのみ使用します。内服ではイソプロピルアンチピリンのみが使用されます。(なお、アスピリンは名前が似ていますがピリン系ではありません)

疼痛における鎮痛薬選択順序

疼痛は侵害受容体性疼痛と神経障害性疼痛に区分されます。

神経障害性疼痛は通常の解熱鎮痛剤が効かない痛みで、鎮痛補助薬を第一選択にします。

麻薬性鎮痛薬で紹介済なので、そちらを参照してください。

他の炎症関連薬

炎症性のオータコイドが関係する薬が他にもあります。

トロンボキサンA2合成酵素阻害薬

気管支平滑筋の収縮を抑制しますので、内服で気管支喘息に使用します。また、血小板の凝集を抑制しますので、注射で脳血管疾患に使用します。

トロンボキサンA2受容体拮抗薬

気道過敏性亢進・血管透過性亢進・炎症細胞浸潤などに働くTXの作用を阻害しますので、気管支喘息やアレルギー性鼻炎に使用します。

ロイコトリエン受容体拮抗薬

気管支収縮・気道過敏性亢進・血管透過性亢進・白血球遊走に関与するロイコトリエンの作用を阻害する薬で、気管支喘息やアレルギー性鼻炎に使用します。

抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬

イラスト4

抗ヒスタミン薬も抗アレルギー薬も炎症に伴って遊離されるオータコイドやサイトカインなどのケミカルメディエーター(化学伝達物質)が関与する薬です。

副腎皮質ステロイド薬と比較して有害作用が少ないのが特徴ですが、ケミカルメディエーターの産生や作用を阻害しているだけであり、根本治療にはなりません。

ヒスタミンの作用と区分

ヒスタミンは、ブラジキニンの刺激によって遊離される炎症性オータコイドで、他のケミカルディエーターよりも早い段階で炎症に関与しています。

主な作用は、血管拡張・血管透過性亢進・気管支収縮・胃酸分泌亢進ですが、アレルギー性鼻炎などに伴うくしゃみ・鼻水・流涙などにも関与しています。

本来は、炎症を誘因する物質を排除するための作用で、体を防御する免疫系を補助しているのですが、不快な症状を引き起こす悪玉物質のような側面も持っています。

受容体にはH1受容体とH2受容体のサブタイプがあり、H2受容体は胃酸分泌のみに関与し、他の作用はH1受容体が関与しています。

よって、H1受容体を阻害する薬は抗炎症に、H2受容体を阻害する薬は胃酸分泌の抑制に使用されます。

抗ヒスタミン薬

正式にはヒスタミンH受容体遮断薬と言いますが、H1容体を阻害する薬を抗ヒスタミン薬・H2受容体を阻害する薬をH2ブロッカーと呼ぶのが一般的です。(H2ブロッカーについては消化器系疾患の頁で紹介しますので、ここでは抗ヒスタミン薬について説明します)

抗ヒスタミン薬は大きく第一世代と第二世代に区分されます。

第一世代に属する薬は、抗ヒスタミン作用の他に中枢抑制作用や抗コリン作用などを持ち、眠気や口渇などを起こす可能性が高いです。

ただ、付随する作用が悪いものばかりとは限らず、これらを応用して広い領域に使用されます。

クロルフェニラミンは第一世代の代表薬で、中枢抑制作用が弱いので各種のアレルギー疾患に使用されます。

プロメタジンやヒドロキシジンは中枢抑制作用が強く、鎮静作用を精神科領域で使用します。

シプロヘプタジンは食欲増進に、メクリジンは乗り物酔い止めに活用されますし、ジフェンヒドラミンは鎮痒作用を外用薬として使います。

第二世代は眠気が少ないことを特徴としており、アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎に使用します。(第一世代のように、他の用途に使用するものはありません)

H1受容体に対する選択性が高いのですが、他のケミカルメディエーターにも阻害作用を持つものもあり、次に紹介する抗アレルギー薬にも分類されるものが少なくありません。

抗アレルギー薬

ヒスタミン以外のケミカルメディエーターを阻害する薬の総称で、気管支喘息の予防やアレルギー疾患の治療に使用されます。

ケミカルメディエーター遊離阻害薬

グロモクリク酸が代表的な薬で、マスト細胞からのケミカルメディエーター遊離を抑制することで、抗炎症作用を発揮します。細粒・エアロゾル・吸入液・点鼻・点眼という剤形により適応症が違います。安全性が高い成分なので、昭和後期には小児に対して汎用された薬です。(第二世代抗ヒスタミン薬の多くもこの区分に入ります)

抗ロイコトリエン薬

アラキドン酸にリポキシゲナーゼが作用して産生されるロイコトリエンを阻害する薬です。ブランルスカスト・モンテルカストとも気管支収縮を抑制しますので、気管支喘息に使用されます。速効性はありませんが、予防効果に優れますので多用されています。(小児用製剤の登場によって、グロモクリク酸からこちらに変更されたケースが多いです)アレルギー性鼻炎にも適応はありますが、抗ヒスタミン作用がないので効果は穏やかです。

抗トロンボキサンA2薬

トロンボキサンの合成を阻害するオザグレルと、トロンボキサンA2受容体拮抗薬であるセラトロダストがあります。気管支収縮・気道過敏性を抑制する作用から、気管支喘息に使されます。しかし、主流にはなっていません。また、アザグレルには血小板凝集や脳血流低下を抑制する作用があり、注射剤がクモ膜下出血術後や脳血栓に伴う障害に使用されます。

Th2サイトカイン阻害薬

スプラタストはヘルパーT細胞からのサイトカイン産生を抑制し、IgE抗体の産生が抑制されて抗アレルギー作用が発現します。

抗IgE抗体製剤

オマリズマブはIgE抗体と結合して無効化するモノクロナール抗体で、他剤で無効の気管支喘息や突発性の慢性蕁麻疹に使用されます。

関節リウマチ治療薬

イラスト2

関節リウマチとは

自分の免疫が骨組織を敵と認識して攻撃する疾患で、自己免疫疾患の一種です。

なぜ発症するのかはよく分かっておらず、原因が特定できない以上、現在の医療では確実な治療法はありません。

関節の破壊は発症後半年以内に出現し、症状の進行は初期の1年が顕著だとされています。

よって、早期の診断と治療開始が重要になります。

治療目標は進行の防止によって、寛解状態を維持することです。

症状の改善および日常生活動作の改善は期待できますが、治癒に至ることはなく、治療の中断は病状の進行につながりますので、アドヒアランスが重要です。

疾患修飾性抗リウマチ薬

難しい表現をしていますが、最近登場してきた分子標的薬に対して、免疫系に作用する薬の区分です。

効果発現に1~3カ月を要し、約2年で耐性化による効果減弱が起こるものが多いです。

また、効果に個人差が大きく、重篤な副作用報告も多いという、欠点ばかりが目立つ薬効群です。(逆に言うと、関節リウマチはそのような薬を使用しなければならい程の難治性疾患だということです)

メトトレキサート

葉酸代謝拮抗薬で、遺伝子を構成するプリン体の合成を阻害することによって免疫細胞の増殖を抑え、免疫機能を低下させます。(元々は抗癌剤として使用されていた薬で、同機序で癌細胞の増殖を抑制します)以前は他剤無効時に使用する薬でしたが、今ではリウマチ治療のアンカー薬(中核薬)とされ、初期から使用します。正常細胞の増殖も抑制しますので、間質性肺炎・骨髄抑制・奇形・口内炎などを起こす可能性があります。有害作用を低減させるために、週1~2日のみ服用し、翌日又は翌々日に葉酸を服用して作用を打ち消します。

レフルノミド

こちらも遺伝子を構成するピリミジンの合成を阻害することでリンパ球増殖を抑制し、免疫機能を低下させます。メトトレキサートに匹敵する効果がありますが、有害作用も同様に起こる可能性があります。特に、腸肝循環による残留性が高いため、服用後2年間の妊娠や生ワクチンの予防接種に注意が必要です。(必要に応じて薬を除く対応をします)

金製剤(金チオリンゴ酸、オーラノフィン)

古くからある薬なのですが、未だに作用機序がよく分かっておらず、マクロファージや白血球の貪食能を抑制するのではないかと考えられています。一定量を超えるまで効果が出ませんので、全く速効性はありません。今ではあまり使用されなくなりました。

ペニシラミン、ブシラミン

この薬も作用機序が解明されておらず、T細胞・B細胞などの免疫担当細胞の機能を抑制すると考えられています。味覚異常や蛋白尿を起こしやすいものの、他と比べて比較的有害作用が少ない薬です。ペニシラミンは金属イオンとキレートを作る作用があり、これを応用して重金属の解毒薬としても使用されます。

サラゾスルファピリジン

T細胞に作用してインターロイキンの産生を抑制し、異常抗体の産生を抑制する薬です。5アミノサリチル酸とスルファピリジンを合体させた薬で、潰瘍性大腸炎にも使用されます。免疫抑制による副作用よりも、サルファ剤(スルファピリジン)の副作用や相互作用が問題になるケースが多いです。尿・汗・涙などがオレンジ色に着色します。

タクロリムス

特異的免疫抑制剤で、T細胞の活性化抑制により免疫機能を強力に抑制します。他剤で効果が不十分な場合に選択される薬です。臓器移植に伴う拒絶反応防止にも使用されます。同効薬のシクロスポリンとの併用は禁忌で、切り替える場合は24時間以上あける必要があります。(血中カリウム濃度が上昇しますので、K保持型利尿薬とも併用禁忌です)

生物学的製剤(分子標的薬)

炎症に関与する免疫細胞やサイトカインを選択的に抑制する薬です。

抗原抗体反応を応用した薬が多く、標的にピンポイントで作用しますので、他への影響が少ないという特徴があります。

具体的には、抗TNFα抗体を投与してTNFαの作用を抑制するもの(インフリキシマブ・アダリムマブ・ゴリムマブ)、抗インターロイキン6抗体を投与してIL6の作用を抑制するもの(トシリズマブ)があります。

他にも、TNFα受容体そのものを投与して結合によってTNFαを無効化するもの(エタネルセプト)、T細胞の活性化を起こす部位に結合して機能抑制やサイトカイン産生を抑制するもの(アバタセプト)も、限定部位に作用する薬です。

これらの薬は疾患修飾性抗リウマチ薬よりも高い寛解率が得られ、登場してからリウマチ治療の効果が劇的に良くなったと言われています。(メトトレキサートとの併用が必須となっている種類が多いので、単独で効果がアップしたとまでは言えません)

欠点としては、蛋白製剤なのでアナフィラキシー誘発の可能性があり、継続投与で中和抗体が産生されて効果が減弱する可能もあります。

当然ながら免疫抑制による副作用には注意が必要です。

高額な薬価も問題で、患者負担および国民医療費が膨れ上がる点が心配されています。


TNFαとは

腫瘍壊死因子と呼ばれるサイトカインで、腫瘍に出血性の壊死を起こすことで発見されました。

その後の研究で、細胞接着・アポトーシス・抗体産生などに関与していることが判明し、炎症性疾患では重要な成分となっています。


ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬

最近登場してきた薬で、疾患修飾性抗リウマチ薬にも分子標的薬にも分類されていない薬です。

炎症性サイトカインの産生を抑制するのではなく、細胞内への刺激伝達に関与しているヤヌスキナーゼという酵素を阻害することで、サイトカインの作用が発現しないように働きます。

分子標的薬でも十分な効果が得られない場合に選択される薬で、長期的な安全性はまだ未確定なところがあります。

痛風・高尿酸血症治療薬

イラスト3

健康情報「痛風(高尿酸血症)」に概要を紹介していすので、先にそちらをお読みください。

紹介していない部分について補足いたします。

尿酸と痛風の関係

遺伝子を構成する核酸塩基には、プリン体とピリミジン体があり、アデニン・グアニンがプリン体塩基です。

古い細胞の処分や食事摂取によって余剰となったプリン体は、キサンチンオキシダーゼなどの酵素の作用で尿酸に変換され、大部分が尿中排泄されます。

  • アデニン →(ヒポキサンチン)→ キサンチン → 尿酸
  • グアニン →    →    → キサンチン → 尿酸

名前に酸が付くことから分かるように酸性の物質で、それほど水に溶けやすくはありません。

痛風は高尿酸血症の状態が続き、処理しきれない尿酸の結晶が組織(関節腔)に沈着することで発症します。

関節腔内に沈着した尿酸結晶を好中球が貪食によって処理しようとする過程で細胞膜が損傷を受け、起炎物質が放出されて炎症症状が誘発されます。

症状は典型的な炎症症状で、赤く腫れて熱を帯び・非常に痛みます。(痛風とは、風にあたっても痛いという症状から付いた病名です)

人と猿を除く動物では、もう一段階の代謝でアラントインに変換でき、尿酸よりも水に溶けやすい物質なので尿酸の蓄積はおこりません。

痛風発作治療薬

痛風の痛みに対して使用する薬です。

原因である尿酸には作用しませんので、根本治療にはなりません。

一般的には非ステロイド系抗炎症薬を使用し、少量で強く長く痛みを抑えてくれる種類を選択します。

NSAIDsも大部分は酸性物質なので、使用量が多い薬だと尿が酸性に傾いて尿酸の排泄がさらに悪くなる可能性があるためです。

アスピリンを鎮痛剤として使用する場合の常用量は1000~4500mgにもなりますし、尿細管での尿酸排泄を抑制する作用も報告されていますので、痛風の痛みには適応を持ってはいますが、通常は使用しません。

コルヒチン

白血球の遊走を抑制することで、痛風発作を特異的に予防する薬です。ただし、鎮痛作用や抗炎症作用を持っていませんので、前兆時に使用します。生殖系への影響や肝・骨髄障害を起こす可能性がありますので、長期に連用する薬ではありません。

高尿酸血症治療薬

尿酸の生成抑制や排泄促進によって、尿酸の血中濃度を下げる薬です。

尿酸の減少により痛風の治療にもなりますが、尿酸値の急激な変動は痛風発作を増悪する可能性があり、発作時に服用を開始したり量の増減はしません。

尿酸排泄促進薬

尿細管での尿酸の再吸収を抑制する薬で、尿酸の排泄が促進されます。尿酸トランスポーターを阻害するプロベネシド・ベンズブロマロン・ドチヌラド、尿をアルカリ化してイオントラッピングで排泄を多くするクエン酸Na・Kがあります。尿路結石を起こす可能性はありますが、一般には合成阻害薬よりも先に使用される薬です。(尿路結石はアルカリ化薬の併用である程度は防止できます)

プロベネシドには、ペニシリンやパムの排泄を抑制する作用があり、ペニシリンが高価であった時代に使用量を減らす目的で使用されたこともあります。

ベンズブロマロンは劇症肝炎に注意が必要ですし、催奇形性がありますので妊娠中には禁忌です。

クエン酸Na・Kは、適応は酸性尿やアシドーシスの改善であって、痛風や高尿酸血症の治療ではありません。しかし、安全性が高く、使用できないケースはほとんどありませんので、尿酸排泄促進の目的でよく使用されます。ただし、単独で治癒する程の効果はありません。

ラスブリカーゼは、尿酸を酸化して水溶性の高いアラントインに変換する薬で、結果的に尿酸の排泄が促進されます。腫瘍崩壊症候群における高尿酸血症に使われます。アナフィラキシーやメトヘモグロビン血症に注意が必要です。

尿酸合成阻害薬

キサンチンオキシダーゼを阻害し、キサンチンから尿酸への変換を阻害する薬で、アロプリノール・フェブキソスタット・トピロキソスタットがあります。尿酸の生成は減りますが、キサンチンの濃度が高くなることで、腎臓に負担がかかる可能性があります。また、プリン骨格を持つテオフィリンやアザチオプリン・メルカプトプリンなどの薬の代謝も阻害されますので、薬物相互作用に注意が必要です。尿酸排泄促進薬で効果が不十分な場合に選択されることが多いですが、腎機能障害や尿路結石がある場合には、こちらを優先して使用します。

アロプリノールは、元は抗癌剤として開発された薬で、副作用として尿酸低下が起こったことを逆に利用したものです。使用頻度が多いこともあり、重症皮膚障害の発生報告件数が上位の薬で、使用中の安全確認が重要です。

フェブキソスタット・トピロキソスタットは、アロプリノールそのものがプリン骨格を持っていることから、プリン骨格を持たないキサンチンオキシダーゼ阻害薬として開発されました。効果および安全性ともアロプリノールより優れていると言われています。(フェブキソスタットは、アメリカで心血管系リスクが高いという警告が出され、今後の動向に不安があります)

頭痛治療薬

イラスト4

頭痛の分類

頭痛とは頭が痛くなる症状のことで、病名ではありません。

頭痛を誘発する疾患は非常に多く、頭蓋内圧亢進症・緑内障・副鼻腔炎・三叉神経痛・髄膜炎・くも膜下出血・硬膜下血腫・脳動脈奇形・てんかん・褐色細胞腫などや、単なる風邪でも起こる症状です。

誘発原因が明らかな場合は、当然ながらそちらの治療が優先されます。

他の疾患から派生していない頭痛として、次のものがあります。

  • ◎筋緊張性頭痛
  • ◎片頭痛(血管性頭痛)
  • ◎群発頭痛
  • ◎心因性頭痛
  • ◎薬物乱用頭痛

慢性頭痛の90%は、筋緊張性頭痛と片頭痛(血管性頭痛)だと言われています。

筋緊張性頭痛は、項部から頭部の筋肉が異常に収縮することで誘発される頭痛で、肩こりと似た原理で起こります。鈍く締め付けられるような痛みですが、それ程強い痛みではありません。

片頭痛は、脳血管内の血小板からセロトニンが放出され、やがてセロトニンが枯渇して血管が拡張し、侵害受容体が刺激を受けて痛みを感じます。ただし、この発症機序で確定しているわけではなく、三叉神経の異常興奮が血管拡張を起こすという説もあります。心拍に合わせてズキズキと強く痛み、片と付いていますが両方が痛む場合も少なくありません。

群発頭痛は春秋の季節変わりの時期に多く、片方の目の奥がキリで刺されたように痛みます。特定の時期に集中して起こるので群発と言います。原因が特定されておらず、血管性頭痛の一種と考えられていますが、アレルギーやウイルスの関連も疑われています。

心因性頭痛はストレス・過労・不眠などによって誘発され、頭にお椀を被ったような鈍い痛みです。うつ病などの精神疾患と関連があるようですが、頭痛しか症状がない場合に付けられる病名です。

薬物乱用頭痛は頭痛治療に使用している薬が誘因となって起こる頭痛です。薬の過剰使用で痛覚閾値が下がり、もっと服用量を増やすことで悪化していきます。(ただし、リウマチなどの疼痛性疾患で痛み止めを連用している人にはあまり起こらないので、他の要因が関係している可能性もあります)

治療薬

筋緊張性頭痛は、NSAIDsなどの通常の痛み止めや筋弛緩薬で対応が可能です。

心因性頭痛は、抗不安薬で対応できる場合が多いですが、抗うつ薬を使用するケースもあります。

薬物乱用頭痛は、まず誘因となっている薬を中止し、それとは系統の違う薬で対応します。(アドヒアランスが不十分だと、新たな薬でも同じことになる可能性があります)

血管性頭痛には通常の痛み止めがあまり効きませんので、次の薬を使用します。

トリプタン系

セロトニン(5HT1)受容体を刺激する薬で、セロトニンの枯渇によって拡張した血管を収縮させ、血管作動性ペプチドの遊離を抑制します。常用する薬ではなく、頭痛発作が起こっている状態で頓服する薬です。5HT2受容体も刺激する可能性があり、血小板凝集を促進するために虚血性心疾患や脳血管障害に禁忌で、神経を興奮するためにてんかんにも禁忌です。従来の薬よりも優れた効果がありますが、薬物乱用頭痛の誘因になりやすい薬でもあります。

麦角アルカロイド(エルゴタミン製剤)

セロトニン受容体に作用しますが非選択的で、頭痛発作の前兆期に使用しないと効果がありません。ドパミン受容体やノルアドレナリン受容体にも作用しますので、パーキンソン病や子宮収縮にも使用されますが、その作用が副作用となる可能性もあります。トリプタン系が登場する前は汎用されていましたが、今ではトリプタン系が使えないケースにしか使用されません。

Ca拮抗薬(ロメリジン)

血小板からセロトニンの放出が始まった時点で、血管が収縮します。ロメリジンは脳血管に特異的に作用するCa拮抗薬で、初期段階の血管収縮を抑制することで、頭痛発作を予防します。(発作時に服用しても無効です)

バルブロ酸

抗てんかん薬ですが、大脳皮質拡延性を改善することで頭痛発作を予防します。

その他

ISA-のβ遮断剤、AⅡ阻害薬、ACE阻害薬、ビタミンB2、Mg製剤でも予防効果ありとの報告があり、適応外で使用される場合もあります。(ISA-β遮断剤のプロプラノロールは適応を持っています)

Copyright(c) 2024 tahara kanpou. All Rights Reserved. Design by http://f-tpl.com