〓 | 最近 YouTube をよく見ていて、ひろゆきの動画は面白い。切れ味が鋭い。で新刊書のコーナーにひろゆきの本書があったので読んでみた。<「忖度抜き」「タブーなし」>の発言が心地よい。まず、彼の語る日本の現状にはあらためてなるほどと思った。それは、<日本は「安い国」>であること。「世界競争ランキング」で2020年は34位であること。<海外諸国に比べて日本人の働き方そのものは非効率>だということ。<一人ひとりが自分で働き方を選べるほうがいい>。<学歴という目安がないと、そもそもの信用が得られにくい>。最近の若者はスマホは使っているが、<多くの大学生がパソコンを使いこなせていない>。<「苦労信仰」が日本人に根付いている>等、なんとなく気づいているようなことをはっきり語っているのがいい。現在フランスに住んでいるので、よけいに日本のことを客観視できるのかもしれない。 |
〓 | 国民的女優ムン・スンは、カ司令官の妻であったが、親愛なる指導者キム・ジョンイルの寵愛を受けていた。パク・ジュンドは、カ司令官を採鉱収容所のトンネルの中で殺害し、彼の妻であったムン・スンを手に入れ、親愛なる指導者とも親しくなった。この物語のラストは、パク・ジュンドがムン・スンとその子供たちを親愛なる指導者の目の前でアメリカに亡命させることに成功する。この後捕えられ、激しい尋問を受ける場面とムン・スンを逃がした場面が交互に語られる。最後にパク・ジュンドは命を落とすのであるが、尋問官もパクを認めていた。、フラッシュバック的にパク・ジュンドがそれまでの経緯を語りだすというわけだ。物語の合間にプロパガンダ演説が挿入されているという手の込んだ構成だ。収容所を脱出する時に、蛾を食べたり、大根を引き抜いたり、池のマスを捕って食べたりとか場面は強烈だ。しかし、なんと言っても一番強烈なのは、尋問の旧組織での釘を使った脳の手術の場面だ。独裁国家の強烈な統制の下、多く人間が自由を求めている。自分は犠牲になりつつも、愛人を救ったという愛の物語でもある。 |
〓 | キム・ジョンイル政権下の北朝鮮。主人公のパク・ジュンドは、孤児院<長い明日>で育った。厳密には孤児ではなく、院長が父だ。母は歌手で平壌に送られた。14歳の時に軍隊に行き、対南浸透トンネルの兵士となり、暗闇戦闘術の訓練を受けた。その後日本人を拉致する部隊に加わる。仲間のキルは亡命しようとしたが、連れ戻した。語学学校に入り、英語を学ぶ。その後漁船に乗り、無線により情報収集の任務にあたる。漁船の仲間は胸に妻の入れ墨をしているが、ジュンドは未婚なので、船長は彼に女優ムン・スンの入れ墨を施した。ムン・スンの夫は、伝説の軍人・カ司令官であった。仲間の二等航海士は亡命を企てたが、阻止できなかった。彼はサメにやられたと嘘をつき、自身の体にも、サメの傷をつけた。下船後、英雄となった。二等航海士の妻に世話になり、その後アメリカ行きに加わる。テキサスでアメリカの諜報員・ワンダと親密になる。情報がワンダ届く、カメラを渡される。帰国後ジュンドは最悪の仕事も手伝いをさせられる。そこの老婆モンナンと脱出をする。胸の入れ墨がムン・スンであることにより、ジュンドは尋問管たちに、伝説の軍人・カ司令官に間違えられる。 |
〓 | 今さらながら、と思いつつ読んでみたが、なかなか刺激的であった。他人に引っ張られて動くグライダー型よりも自力で動ける飛行機型の勧め。知識は寝かしておくと純化される。自分が前に出るよりも化学反応が起こる触媒となれ。知識も不要なものは処分し、忘れること。知的活動の3つの種類。既知のことを再認する。未知のことを理解する。まったく新しいことに挑戦する。そして拡散と収斂等。忘れずにおこう。 |
〓 | 久々にぶっ飛んだ本を読んだ。レプリカ工場で働く往本。粒山。うみみず。名前も個性的。現実と妄想の間を行き来する往本。外見は悪いが、超女にもてる粒山。さぼって本ばかり読んでいるうみみず。往本はそこでシロクマが動いているのを見た。工場長は、それはスパイだとし、往本に抹殺しろと言う。そんな怪しいスト―リーを超えるような内容だ。それぞれのレプリカントが登場し、どんどん増えていき、本物は誰かがわからなくなる。自我とは何かという哲学的内容も含まれるが、笑いの要素も十分だ。文体が短い文字数で綴られてるので、リズム良く読める。驚くのは参考文献の多さ。アーサー・ケストラー『機械の中の幽霊』再読してみるかな。 |
〓 | どの時代から語るのかと思ったら、なんと地球に大陸が発生したところから。そして新型コロナウィルスまで。これを一気に解説する。ここが凄い。『サピエンス全史』の日本史版を書こうとしたようだ。社会学者らしく、日本のシステムはどうなっていったのかに絞って語るので、個々の人名とかはほとんど出てこない。そして日本の通史としては、大きく3つに分ける。<バラバラに生きていた人々が、一部の権力者によってまとめ上げられいく「古代」、それが崩壊していく「中世」、再び列島中が1つになった「近代」>といった具合だ。それだけではなく、テーマ別に日本を語る。米、神話、土地、家族、未来、戦争、そして歴史と幅広い。日本の大きな流れを理解する上で非常に面白い本であった。 |
〓 | 久々の安東能明。面白かった。<警察官のリアルを描き続けたい>というだけあって、荒唐無稽なTVドラマみたいではなく、実際のプロの警察官の話であるように思える。今回の主人公は綾瀬署勤務の柴崎令司。所内で女の子の失踪事件が起きた。捜査を進めるにつれ、以前に起きた事件と酷似していることに気付く。同一犯人の仕業かと。だが、幾つもの疑問点が出てくる。そして。。。99%怪しくても、残りの1%の裏が取れなくてはならない、という思いが真実に近づいていく。坂元という女性署長や、高野という女性部下の活躍によるところが大きい。警視庁や千葉県警との交流で気をつかったり、捜査本部を立ち上げるときに食事の手配の心配をするところなどがリアルやなあと思わせる。 |
〓 | 本書は星新一が収集したアメリカのヒトコマ漫画を17のパターンに分け、それぞれに星新一なりの解説をしているという珍しい本。星新新一のエッセイというべきか。精神分析医がよく登場するのも、アメリカと日本違いで面白い。あとがきで星新一が言っているが、<笑いと想像力の関係だが、かつて私は、想像力があるから笑うのかと思っていた。しかし、最近に至って、笑いが先で想像力はそのあとから出てくるもののように思えてきた。…要するに普通ならざることへの直観能力が笑いである。論理の飛躍になるかもしれないが、笑いは、普通とはなにかを知る経路でもある>。なるほどと思う。これでアメリカの普通がわかるかな。 |
〓 | 平成(ひらなり)くんは、平成に改元された日に生まれた。そして平成が終わるとともに安楽死をしようと考え、安楽死のやり方を実地検分をしていく。なんで安楽死?と思い、平成くんに寄り添う恋人の愛。安楽死を後もこの世にいるかのようにテクノロジーを駆使して準備する。今までの自分を機械学習させ、AIを使って、自分らしくスマートスピーカーに発言させるなど非常に現代的。これで、無駄話にも相手をしてくれる。生活の中でブランド物がどんどん出てくるのは村上春樹っぽいが、村上春樹の方がファンタジーかな。 |
〓 | 松岡正剛の365冊の1冊。金日成までの朝鮮半島の歴史を描く。特に興味深かったのが、現在の金日成(金正恩の祖父)以前の朝鮮であった。高句麗、百済、新羅の三国時代から統一新羅時代、高麗時代、李氏朝鮮時代、そして植民地としての朝鮮を経て、今日の朝鮮となる。植民地としての朝鮮とは、日本が朝鮮を植民地としていたことだ。そして、ロシア、中国が絡んだ結果、日清戦争、日露戦争となった。視点を変えれば、朝鮮は常に外圧を受けてきた。ソ連、中国、日本、そしてアメリカからの。日本は秀吉時代に失敗しているが、その後朝鮮に開港を強制し、日清戦争の後、朝鮮を植民地とした。そして金日成による抗日パルチザン活動、そして第二次世界対戦での日本の敗戦により、朝鮮は独立化に進んだが、アメリカ、ソ連が朝鮮の統一を許さなかった。朝鮮戦争は現在は休戦状態となっている。著者もいうように本当の統一は、外圧によるものではなく、自らの意思で成し遂げなければならないのであろう。文化面からみれば、グーテンベルグよりも早く印刷技術があったことや、東洋最初の天文台をつくったことなど、驚くことが多い。 |
〓 | 『一九八四年』の作者、ジョージ・オーウェルのもう一つの代表作。農場に飼われていた動物たちが反乱を起こし、動物たちの農場にしてしまう、というお話。動物たちのトップに立つのがブタたちである。ブタ同士の権力闘争を経て、その他の動物たちを支配下に置き、自分たちの都合のいいように事実を捻じ曲げ、逆らう動物達の粛清していく。ブタは私腹を肥やしていくが、他の動物たちの生活は以前よりも苦しくなるばかり。最終的にブタたちが人間そっくりになるというオチだ。なんかイソップ物語のようだ。このモデルがソビエト国家をイメージされるとして出版が反対されという。当時のイギリスがソビエト批判ができない空気があったとう、当時の政治情勢が窺える。もちろん、著者はもちろん意図的であったようだ。著者のジョージ・オーウェルは1903年、イギリス植民地化のインドで生まれた。1945年に本書が出版された。 |
〓 | 1949年に発表された本で、その時の未来である1984年のことを描いた小説。そこでは、影の権力者<ビック・ブラザー>がオセアニアの世界を牛耳っている。人々は<テレスクリーン>で常時監視されている。過去の出来事も党の都合のいいように随時書き換えられるが<二重思考>によって納得する。また<ニュースピーク>で、言語は単純化され、人々は考える力を失っていく。主人公スミスはそれに抵抗しようとするが、党のメンバーのオブライエンによって、肉知的・精神的苦痛を加えられ、党の考えに従属させようとする。この対決は読みどころ。オブライエンは言う。<もし完全な無条件の服従が出来れば、自分のアイデンティティを脱却することが出来れば、自分が即ち党になるまで党に没入できれば、その人物は全能で不滅の存在となる>。自分より知性のある狂人に怯えるスミス。ともに抵抗した愛人ジュリアの運命も気になる。その戦いの後はちょっと怖ろしい。党の敵・ゴールドスタインが記した書物<あの本>、そして付録として掲載されている<ニュースピークの諸原理>も読みごたえがあって面白い。 |
〓 | NHKのテレビドラマでもやってましたね。波瑠主演で。台湾で日本の新幹線を走らせるというプロジェクトを描いた物語。車両は日本製だが、軌道・システムはドイツ・フランスの欧州連合、取りまとめは台湾高鉄が行った。最高時速300km/h、台湾の北から南まで90分で行ける。主人公多田春香が、学生時代に出会った台湾人。阪神大震災、台湾での震災、を経てお互いの進路が交わっていく。その他、仕事を進めていく上での几帳面な日本人とおおらかな台湾人のぶつかり合い、そして台湾で生まれた日本人も多くいた事など、面白く読めた。昔台湾に出張に行った時の台北の街は、野良犬のいる難波、って感じやったのが思い出される。行ったことないけど、田舎町もなかなか良さそうだ。何か懐かしい、そして活気があるのはこの本でも充分感じられた。「路〜台湾エクスプレス」の第2話、第3話、うまく録画できてるかな。 |
〓 | ある日私はプールサイドで、アニュスという美女を目にした。アニュスの夫ポール、アニュスの妹ローラ。ポールに対するアニュスとローラの愛と性について語る。そしてゲーテと愛人ベッティーナ。ベートーベン、ヘミングウェイ、ダリなど登場し、愛と性と作品の永遠性ついて語る。イマゴローグによって人間はそのイメージによって決定される世の中にあって、人は死んでも残る作品のようなものに不滅性を求める。<創造は権力より以上のものであり、芸術は政治より以上のものである…>。<感情というものは、そもそも、われわれの中に知らず知らずに、そしてしばしば意に逆らって湧き上がってくる。われわれがそれを感じようと欲すると、感情はもはや感情でなくなり、感情を模倣する紛い物、感情の誇示になってしまう。>。<われわれは誰しもすべて、われわれ自身のある部分によって、時間を超えて生きている。たぶんわれわれはある例外的な瞬間にしか自分の年齢を意識していないし、たいていの時間は無年齢者でいるのだ。>。ゲーテの愛人ベッティーナもゲーテを愛していたというよりも、ゲーテを愛したということで<歴史>の中に存在させたかったからだという。 |
〓 | 本書は1967年〜1993年にかけて起きたエボラ・ウイルス、マーブルグ・ウイルスについてのノンフィクションである。コロナウイルスとは違い、形からフィロウイルス(ひも状ウイルス)と呼ばれる。最初に発見されたのがマールブルグ、そしてエボラ・ザイール、エボラ・スーダン。エボラ・ザイールの致死率は90%だという。またその死に様がえげつなく、多量の出血で体がドロドロになるという。最前線で戦った人たちのインタビューをベースに書かれた本書は、読んでいても緊張感が高まる。ワシントン郊外のレストンのモンキーハウスでエボラウイルスは発見された。ウイルスハンターたちは宇宙服を着て、何千匹ものサルを殺しにいく。サルに唾を飛ばされたり、ひっかかれたら一巻の終わり。本書のクライマックスとも言える。しかしこのレストンのモンキーハウスで発見されたエボラウイルスは、サルを殺すが、人には感染しなったのだ。ほとんど同じ見えるウイルスではあったが、人が90%死亡するウイルスと人に無害のウイルスがある。ウイルスは生物の棲家を見つけるとそこで変態することがあるという。いつ構造が変わって人に有害となるかがわからないのが怖ろしい。生物の宝庫である熱帯雨林地域から発生したウイルスは、交通機関の発達した現代ではあっという間に世界中に広がる。著者は最後にこういうことを言っている。<地球は人類に対して拒絶反応を起こしていくのかもしれない>。<地球の免疫システムはいま、自己を脅かす人類の存在に気づいて、活動をはじめたのかもしれない>。 |
〓 | ゴルフ好きのカメラ店のオッチャンが、阪神淡路大震災ですべてを失った時、車のトランクに残っていたゴルフクラブを見て、残りの人生をゴルフに賭けようと思ったという。そして59歳でプロテストに合格した。その古市さんが書いたレッスン書だ。強調するのは「心」のあり方。常に感謝と前向きな姿勢だ。技術論としては、インパクトでも右足体重で、フェースの向きを変えずにスイングするというもの。独特ではあるが単純で、スムースな振りと伸びのあるフォローという点でいいと思う。そして正しく当たれば飛距離も伸びる、というわけだ。この単純さが肝心。 |
〓 | 足の親指がペニスになった一実。そして盲目の婚約者・春志。フラワーショーのメンバーの保と映子。春志との別れ、映子との恋愛、フラワーショーへの出演。一実と映子と保の三角関係。そして春志との再会。得意な体質を持つ保はペニスとヴァギナの結合に拘るが、それよりももっといい気持ちの通じ合うスキンシップによる快楽がある、というのが本書のテーマであると思う。通常でない身体的特徴をもつフラワーショーのメンバーがいたからこその結論であるのかもしれない。そうならざるをえないのかもしれないが。親指ペニスの危機一髪もあるが、エログロ感はそれほどではなく、アンダーグラウンドで屈折した彼らではあるが、温かく、ほのぼの感があって、面白く読めた。 |
〓 | ある日起きると、足の親指がペニスになっていたという奇想天外なお話。昔ちょっと読みかけてほっておいた本。読み始めは?って感じだったが、読み進めるうちに面白くなってきた。設定は奇抜であるが、じわっと面白い。目の見えない彼氏は、男でも女でも仲よくする為のスキンシップにこだわりはない。体に特徴のある人たち<フラワーショー>のメンバーたちとの交流も一見ハードなものであるが、けっこういい感じで付き合っていく。 |