〓 | 会計とは、氷山の一角を見るのではなく、木を見て森を見るのだ。監査なんかは、ほとんどそうするそうだ。数字の羅列のイメージが強いが、実は物事を的確にとらえようとしているのが会計だ。一面だけの数字ではなく、あらゆる方面から数字を出す。うわべの数字だけでなく、隠れた数字も見るのだ。目標達成!だけではダメなのである。そこに機会損失(チャンスロス)をしていなかったかも見るのだ。簡単に分かり易くと言うよりも、興味深く解説しているのがいい。面白く読める経済の本 bPである(今んとこ)。 |
〓 | ご存知?松岡正剛による世界文化史概観だ。帝塚山学院大学での講義の内容で、語りの文体なのがわかりやすい。「17歳のための…」とあるが、17歳だけに読ませるにはもったいない。これだけ分かり易く書かれているのは、著者がよくわかっているからだと思う。この1冊で、人類が文明に目覚めて以降、近代までが一気にわかる。もちろん日本と世界を見比べながらだ。さすが、松岡正剛って感じで面白く読めた。 |
〓 | 今回は他人の気持ちはほとんど考えない、お節介やきのおばさんが死ぬ。こういう人はヤバイかも。殺人の動機がポイント。テーマは母親。泣かせる。ジェーン・マープルもますます年老いた設定となっている。 |
〓 | 読書とは何なんだろうか。松岡正剛は、本読むことが人生のベースにある。本のあらすじの覚えではなく、その読んだときの状況、環境、心の状態等、それらすべてをひっくるめて、その本を読んだことでの経験値となる。同じ本でもその場面の違いで経験値も変わる。読書により、救われることもあるが、狂うこともあるのだ。わが青春期のバイブルであった松岡正剛の『遊』の365冊を上回る本の紹介がある。何とチェックリストもついているのだ。まだまだ読まねばならぬ。先ずは松岡正剛が一番身につまされたという大原富枝の『婉という女』を読みたいと思う。 |
〓 | エルキュール・ポアロは、カッコイイ犯罪と言った。用意周到で鮮やかな犯罪であった、ということだ。ジグソーパズルの一片一片を、ピッタリと当てはまるまで考えるポアロの頭からは湯気が出ていたに違いない。江戸川乱歩もクリスティー作品のなかでも五本の指に入ると言ったらしい。&解説の作家・若竹七海さんもこれを強調している。5本の指に入るかどうかは、全部読んで決めよう。ラストは鮮やかであり、厚みがある。 |
〓 | なんとまあ、当たりの柔らかい言い方になったもんだ。池田晶子もいい感じで年を重ね、おだやかで、人生を味わっている。彼女なりの深化であったんだろうな。池田晶子の人生の春夏秋冬は確かにあった。 |
〓 | 看護師が師長になるために経験しなければならない4つの節目。「それは、生・老・病・死の看護を経験すること」と猫田看護師は言った。<…死者にまで看護の領域が拡張されなければ、真の医療に到達できないの>(『ジェネラル・ルージュの凱旋』)。死を司る病院、終末期医療に独自のやり方を確立しているかに見える桜宮病院。病院長には銀獅子と呼ばれる桜宮巌雄が君臨する。『チーム・バチスタの栄光』に始まるこのシリーズ。だんだん面白くなってきた。今回は東城大学病院に立ち向かう碧翠院桜宮病院が舞台となる。主人公は落ちこぼれ医学生の天馬大吉と、幼馴染で時風新報という新聞社に勤める別宮葉子だ。桜宮巌雄と白鳥圭輔との対決も中身は深く濃い。白鳥のいつもよりちょっと真面目ぶりも見物。部下の氷姫も大活躍。 |
〓 | 著者急逝!と帯に書いてあることに驚いた。最初は冗談めかし、わざとそう書いているのかとも思った。しかし本当だった。癌で死んだそうだ。オレより年下やのに。しばらくして「全うしたな、この人は」と思った。人間は必ず死ぬ。全うできる人は少ないと思う。著者自身の言う<一生涯存在の謎を追い求め、表現しようともがいたもの書き>だった。南無阿弥陀仏。 |
〓 | 『チーム・バチスタの栄光』、『ナイチンゲールの沈黙』に続く第3弾。これが一番わかりやすく、落ち着いて読めた。2作目とほとんど同時進行に起こった物語として綴られるが、順番に読んだ方が話は分かりやすい。今回の主人公は救命救急センター部長の速水晃一だ。業者との癒着が問題とされる。病院内の倫理問題審査会(エシックス・コミティ)での委員長・沼田とのやりとり、その後の大学の同級生であった田口公平率いるリスクマネジメント委員会でのやりとりは面白い。またジェネラル・ルージュと呼ばれる所以もなかなかいい。白鳥圭輔も要所で活躍するぞ。 |
〓 | 前作の『チーム・バチスタの栄光』に登場した特異キャラの白鳥圭輔に加えて、負けず劣らすのキャラが登場する。警察庁の加納警視正だ。彼はビデオカメラを用いて現場を撮影し、そこか飛び散った血痕の位置や被害者の身体に受けた損傷の角度などから犯人の身体の大きさやなんやかやを導き出すという凄い技の持ち主だ。白鳥の同級生との設定で掛け合いが見所。物語は看護師の浜田小夜、14才で網膜芽腫(レティノプラストーマ)患者の牧原瑞人が中心となり進む。小夜の歌声がポイントとなる。主人公というべき田口公平は、今回は静かにサポートする役となる。田口が思い出す高階病院長の言葉、<ルールは破られるためにあり、それが赦されるのは、未来によりよい状態を返せるという確信を、個人の責任で引き受ける時だ>は、なかなかいける。 |
〓 | 主人公はオンニョニという。色白で端麗な顔立ちの愛くるしい少女である。何事にも興味深々で李鐘海のところで医術を学ぶ。石合戦で負傷した宦官の韓乃温の怪我の手当てをしたのが縁で、妾になれというのを断り、その代わりに宮廷社会に入る。王の食事をつくる厨房で働くも、学問の才も見い出され、若くして宮女たちに学問を教える役割もする。若き才能に各部署から引き手あまたの状態となる。宦官の韓乃温にしつこく付きまとわれながらも健気に生きるオンニョニ改めチャングムに胸キュンとなる。 |
〓 | バチスタとは、心臓移植の代替手術である。心筋の一部を切り取り縮小縫合し、心臓の収縮機能を回復させる、というものだ。その手術で術死が続いた。その原因を調べる為に白羽の矢がたったのが、出世をあきらめ、患者の愚痴を聞く業務に就いていた田口公平だ。手術を行うのはエリートの桐生恭一。チーム・バチスタのリーダーである。田口による聞き込み調査と手術の立会いで暗礁に乗り上げた時に登場するのが、厚生労働省大臣官房秘書課付技官の白鳥圭輔だ。この男が来てから一気にハイテンションになる。ものおじしない特異なキャラ。一見ムチャクチャな様で筋が通っている、ロジカル・モンスターであったのだ。田口との息もピッタリだ。このコンビの強引でコミカルなテンポで一気に読ませる。非常に面白かった。第4回の「このミステリーがすごい!」大賞の大賞受賞作。著者は現役のお医者さんであるそうな。 |
〓 | タイトルが強烈だ。なんとなくオドロオドロしい話を予想したが、さにあらず。主人公のボビィ・ジョーンズと伯爵令嬢のフランシス・ダーウェントの軽快な探偵ぶりが、この小説を明るく、愉快なものにする。主人公ボビィ(ロバート)・ジョーンズは、あのゴルフの球聖ボビィ・ジョーンズではもちろんない。しかしゴルフが大好きなんである。小説の始まりも、ゴルフのシーンから始まる。9番アイアンのことを「ニブリック」と呼ぶのをこの小説で知った。もちろん伯爵令嬢のフランキーもゴルフをやる。「トミーとタペンス」ばりの痛快な小説であった。 |
〓 | マイ国家とは何か。それは自分自身の自分の為だけの国家である。<やっかいな人種問題などなく、一民族、一指導者、一国家だ。…いかなる力を以ってしても、わが国を二つに分割できない。構内の分裂もなく、国民の分裂もなく、国民の心は政府の心であり、政府の行動は国民の要求だ>。しかしそれは一人だけの国家。この家に営業マンが迷い込んだ。出て来た彼は病院に送られる。そこで何があったのか。表題作の『マイ国家』は不気味だ。言い訳の天才『いいわけ幸兵衛』も面白い。 |
〓 | たまに昔読んだ本を読み返すのも楽しい。1991年に書かれたものだから今から16年前となる。坂田信弘の写真も若い。尾崎将司が絶好調の時で、弟の尾崎直道、中島、倉本らが未だブイブイ言わせていた。デビット石井なんてのもいた。川岸良謙なんて新人だ。個性豊かな男子プロが多くいた。この頃ゴルフ人口が増えたようだ。打ちっぱなしに行っても女の子が目立つようになった。今や宮里藍をトップに女子プロがブイブイ言わしている。坂田が試合に出ている選手に順番にメンチを切っていると、トレビノだけが睨み返してきた。風呂場でバレステロスの背中の筋肉に驚愕した。自分より下手だと思っていたウェイン・グラディが全米プロで優勝した。ツアープロであった坂田の目が面白い。 |
〓 | 短編集。ストーリーは単純だが好きなのは『エドワード・ロビンソンは男なのだ』。ある間違いから事件に巻き込まれ、最初は面食らったが、相手がエドワード君のことを人間違いであると気づいたとたんに形勢逆転。相手を煙に巻いて脱出成功。これにアドレナリンがドバっと出たのか、彼女に猛烈アタックして見事婚約成立。最初の『リスタデール卿の謎』は心温まるハッピィエンド。最後の『白鳥の歌』は恐ろしい。 |
〓 | 作家・三好徹との対談。自己ベスト82を更新したいという三好徹。アプローチで常に同じクラブで打ち方を変える三好徹と、常に同じスウィングでクラブを変える中部銀次郎との話は興味深い。私もやっぱりクラブを変える方が良いように思う。女子プロゴルファーで世界ランク1位のアニカ・ソレンスタムは、タイガー・ウッズに1本のクラブでの打ち分けた方を教わり、それに変えたようだ。しかし、クラブを変える方が簡単で、アマチュアにはそっちを薦めると言っている。アマチュア道を貫いた中部銀次郎が説くゴルフとは、出来るだけ簡単なやり方で「心の迷いをなくす」ゴルフである。 |
〓 | アマチュアゴルファーの中部銀次郎は徹底した確率重視のゴルファーであった。スコアを良くする為には、無理なショットはしない。しかし、試合の前後ではこれまた徹底して練習するのである。特に心が乱れることによるミスを防ぐコツは面白い。できない色々を考えるのではなく、できることをシンプルにやり抜く事が好結果につながるのだ。「悠々として急げ」はカエサルの言葉。ラテン語で「festina lente」。 |
〓 | 山本勘助。最初の青木大膳との対決が面白い。それまで刀を握ったことがなかったが、切ると言う思いだけで腕前抜群の青木大膳を切った。山本勘助はそういう男だ。<身長は五尺に充たず、色は黒く、眼はすがめで、しかも跛である。右の中指を一本失っている。年齢は既に五十歳に近い>とある。現在放映中のNHKの大河ドラマに出てくる片目ではあるが颯爽とした人物ではない。勘助は晴信(武田信玄)が好きであり、それ以上に側室の由布姫が好きであった。軍師として親代わりとして憧れの対象として2人に仕えた。川中島での上杉謙信との戦い、どんでん返し、そして見事な最後を遂げた。正妻の三条氏のことはあまり好きではなかったようだが、果たしてドラマではどうだろうか。池脇千鶴が演じるのでちょいと楽しみである。 |
〓 | 読みどころは何と言っても、最後のポアロと犯人との対決。静かな対決であるが、ある意味恐ろしい対決でもある。何故なら犯人は一向に悪いと思っていないことだ。公と私事。そこにある「ある種のおおまかさ」に含まれる恐ろしい考え方。それは驕りである。そして、ポアロの強い人格が勝つ。江戸川乱歩もベストに押すという作品だ。 |
〓 | ゴルフというスポーツは肉体的、物質的、物理的な要素よりも概念的な要素が進歩にとってより大切である。ジャック・ニクラス、ゲーリー・プレーヤー、ボビー・ジョーンズ、ベン・ホーガン等往年の名プレイヤーの言葉を元に解説していく。なかでもジャック・ニクラスの逸話はなかなか凄い。勝つ人間は、どんな時も勝つ姿勢を失わない。ニクラスはエキシビションマッチでかつ途中で負けが決まった後でも、残りのプレーをおろそかにすることがない。まるで勝者のようなパットをしたという。これが後々ののプレーにつながるのである。「最後に勝つのは俺なんだ」という気持ちをいつも持っているのだ。 |