〓 | 巻末の解説で、文芸評論家の結城信孝氏は、この『忘られぬ死』をクリスティー、ベスト1に推している。理由は<作品全体の主題をあくまでも男女の恋愛感情に置いているところが『忘られぬ死』が有するきわだった美点であり、そこに作品の価値があるように思う>だそうだ。確かにトリックではなく、物語が面白い。それがクリスティーの真骨頂であると思う。ところでラスト近く、ピンポイントで登場したミセス・リース・トールバットは何者? |
〓 | 湊かなえ、第3弾。内容はやはりドロドロだ。仲の良い小学生4人と東京から引っ越してきたエミリという小学生。そのエミリちゃんが殺された。エミリちゃんの母親とその時一緒に遊んでいた4人の小学生の闘いが始まる。4人はエミリの母親から責められ、その事件を忘れられずにその後の人生を過ごし、4人とも人を殺してしまう。その経緯を4人が語ることで物語である。そして最後にエミリの母親が語る。その語りを読ませるのだが、それぞれが濃いので5つの小説を読んだ感がある。 |
〓 | 湊かなえ、第2弾。これも面白かった。自分の娘を教え子に殺される、というハードな内容。森口悠子は生徒たちの前で、その一部始終を語る。そして法にゆだねるのを止め、ある制裁を犯人の2人の生徒に与えた。少年AとB。この物語で、彼らもまたその一部始終を語る。違う立場で何度も同じ場面が展開される。彼らも何者でもない、ただ2人ともお母さんが大好きで、お母さんに褒めてもらいたい子供であった。ラストもぞっとするが、暗さを感じないのは何故かな。 |
〓 | 名鉄の名古屋駅で、湊かなえの本を探していたら、見つけたのがこの『少女』という本。タイトルにちょっとひいたが、他になかったので読んでみた。これがなかなか面白かった。主人公の2人の女子高生、由紀と敦子。人の死ぬ瞬間を見たいと願ったり、また2人の女子高生が自殺したりするが、物語は暗くなく(ポップさが怖いか)、由紀と敦子の友情物語もあり、面白く読めた。<ー世界は広い。遠くまで逃げれば、なんとかなるでしょ>、そして由紀が敦子の為に書いた小説<ヨルの綱渡り>、はなかなかいい。ただ人間関係が濃密で、2回読んでやっと理解した。 |
〓 | この本はなかなかいい本だと思う。仕事バカではなく、人生を豊かにする為の方法として共感できるところが多い。<人生の理想は「責務ミニマム、面白いことマキシマム」、仕事とはあえて言えば「どうでもいいもの」>等、グッとくるところが多い。元気になれる本だ。 |
〓 | 主人公はニュージーランド人のエドワード・フェアフィールド。探偵である。舞台は巣鴨にあった拘置所。第二次世界大戦後、そこに戦犯として拘留されているのが、骨と皮のようなキジマという男。罪状は捕虜収容所所長時代の捕虜虐待。観察力に優れ、頭脳明晰な脱走名人。しかし、記憶喪失。そのキジマとエドワードが拘置所内で起きた殺人事件を解明しようとする。そこにキジマの友人のふとっちょとその妹が絡む。殺人事件は、戦争中に起こった暗い過去に端を発するものであった。戦争が終わっても、多くの人間が、その暗い過去を引きずりながら生きているのは辛いものだ、と思った。 |
〓 | ジョーカー・ゲームシリーズ、第3弾。魔王と呼ばれる男、D機関の設立者、結城中佐の正体を暴こうとするものが登場する『追跡』。興味津々で読み進むが、やはりそうであったか!のパターン。やられた。ドイツのUボートの恐ろしさがよくわかる『暗号名ケルベロス』には可憐なスパイが登場する。その他、D機関のメンバーの凄さがわかる『誤算』、D機関のメンバーが暗躍する『失楽園』が収録されている。 |
〓 | ココイチでカレーができるのを待っている時、堀江整形外科で順番を待っている時などに最適なのが、星新一。もちろん、名鉄、新幹線、御堂筋線、南海本線の電車の中でもOK。ってことで新潮文庫の星新一、9冊目。まだまだあって楽しいな。主人公は大概ぱっとしない奴らだ。その奴らが奇妙な事件に巻き込まれる。詳しい話は伏せておくが(というか忘れてしまったが)、日常から一時の逃避ができる、いい薬になります。 |
〓 | 第一話『ダブル・ジョーカー』。2つのスパイ機関の対決。D機関に対抗するのが、風機関。まったく異なるのがその教えだ。D機関の教えはスパイとして目立つことはしてはならず、人を殺すな、自分は死ぬなと説く。これに対して風機関は、躊躇せずに殺せ、潔く死ねだ。しかしながら、D機関とその二番煎じである風機関との勝敗は明らかであった。その他『蠅の王』、『仏印作戦』、『柩』、『ブラックバード』、『眠る男』等、結城中佐の教え子達が活躍する。 |
〓 | 陸軍中野学校をモチーフにした小説。そのスパイ養成学校を<D機関>という。なんかワンピースの「D」を思いだす。それとも「イニシャルD」か。まあそれはともかく、<D機関>を設立した結城中佐が個性豊かな曲者である。彼の教えは<何ものにもとらわれないこと>。軍人の常識、世間の常識にとらわれず、自分で見聞き、体験したことだけを信じて生きる。その学校のメンバーたちは誰もが、自分に自信をもち、自分だけを信用する。そんな彼らが活躍する小説。5つの短編からなる。 |
〓 | 16歳のアンは小学校の教師となる。そこで出会う生徒たち、特にポール・アーヴィングは変わった子だった。その他、ダイアナはじめ、<山彦荘>のミス・ラベンダーとシャーロッタ4世、マリアが引き取った双子のこども、デイビーとドーラ、ジンジャーというオウムを飼っているハリソン氏などが登場する。アンの個性もいろんな人たちに認められていく。そしてアンはギルバートとともに大学に行くことにする。 |
〓 | 色彩を持たないというのはどういうことか。多崎つくるは、色彩を持った人たちに囲まれていた、ということだった。もっと言えば、個性やなんやではなく、名前に色が入っていたのだ。赤松、青梅、白根、黒埜というのが、高校時代の親友の名前だ。多崎は自分には個性がない、と解釈してしまう。その彼らに突然絶縁されてしまう。長年つらい思いをしていたが、現在の彼女に促され、その理由を確認する為に彼らに会いに行く。驚くような理由でもあり、彼らも実は多崎を悪く思っていないこともわかった。そして逆に?現在の彼女に新しい男の影が見える。最後まで答えは出ないが、進むべき道を心に決める。 |
〓 | 松浦弥太郎は『暮らしの手帖』の編集長である。『暮らしの手帖』と言えば、現在NHKの連続テレビ小説で放映中の『とと姉ちゃん』だ。ということで、難波の丸善書店の特設コーナーで見つけた。毎日をシンプルだが質のいいもので暮らす、というコンセプトだ。ブルックスブラザーズの白いシャツが欲しい。雨の日が楽しくなる、ブリッグの傘が欲しい。 |
〓 | プロゴルフ、2015年日本女子ツアーの賞金女王になったのが、イ・ボミだ。それを記念して出版された。イ・ボミ人気は凄く、彼女の使用している本間のゴルフクラブも大人気だ。実力があるので、アメリカツアーに参加してもよさそうだが、そのつもりはないらしい。たまにはメジャーも狙ってみたらいい。 |
〓 | 何か面白いタイトルやなあ、と思っていたら、これはイギリスのことわざのようなもので、おとなしい鳩の群れに入れられた悪戯な猫、ということらしい。舞台はメドウバンク校という女子高で、おとなしい鳩というのが、そこの生徒と教師たちだ。と言っても校長はユニークな人で、今までにない学校を作るべく努力して来た。おかげで英国でも名門と言われるようになり、外国から生徒が集まってくる。今回面白いのは、事件の秘密を握った一人の女子高生がポアロに事件の解決の依頼をしにいくところ。 |
〓 | やっと3巻目を読み終えた。デカルト、スピノザ、ライプニッツなどを例に挙げ、自らの哲学の優位性を語っているところは面白く読めた。カントはある意味、人間の能力の限界を示し、それ以上は語れないというところの線引きをしている、と感じた。語れないところは安易に語ってはいけない、と諌めているようだ。 |
〓 | <時間を無駄にしないために、大事なこと。それは「極限まで忙しくしろ」ということだ>。ぐだぐだと考える、というよりは言い訳を考えるている暇があったら、すぐにやれということだ。金がない、時間がない、というのも全て言い訳だと断じる。やりたいことをすぐにやれ、人の言うことは気にするな、ということだ。そして好きなことをやる為に大事なことは、<Give,Give,Give>であるという。 |
〓 | このシリーズの1、2、より化学の専門ネタはそんなに多くなく、人物や物語が幅を効かせてきた感じがした。今回は、ドーピングの話、ゴムアレルギーの話、犬を救うための抗がん剤の話、見えない毒の話等。登場人物も大活躍?七瀬舞依はスタンガンでやられるし、沖野と同じ研究室であり、ライバルでもあった氷上も登場する。 |
〓 | 南海電鉄と言えば、現役日本最古の私鉄だ。それが地元にある。これまた日本最古の公立公園である浜寺公園あり、住吉大社あり、高野山あり、難波の高島屋あり。そして難波にはちょいと前まで南海ホークスの本拠地であった大阪球場あったのだ。今は難波パークスになったけれど。最近の南海電車はラピートの車両が、真っ赤な(ガンダムの)シャー号になったり、真っ黒なスターウォーズ号になったり、九度山を走る高野線は真田赤備え列車になったりとにぎやかだ。 |
〓 | ミス・マープル物。『カリブ海の秘密』でマープルのベストパートナーであったラフィール大佐が亡くなった、ということを知った。そしてこの大金持ちの男・ラフィールから、マープルに依頼が届いた。詳細は知らされないマープルであったが、指示通りに動いていくと、段々と事がわかってきた。実はラフィールの息子があらぬ疑いをかけられていたのだ。そして、ラフィールはマープルに助け求めたのだった。話が進むにつれ、いろんな人物が登場して面白い。内容は少女殺人事件。犯人の動機は愛、というか、愛着だ。 |
〓 | 2013年、直木賞受賞作。現在の小説やなあ、とつくづく思う。登場人物は就職前の若者で、全員ツイッターをやるのは当たり前で、別アカウントも持っており、また就職の為のES(エントリーシート)を書く練習をしたり(最近の就職試験も大変やな)しているところなどは、時代は変わったなあ、と思う。自分をアピールすることも必要となり、そして個人の裏情報もわかりやすくなった。で、何者とはいったい何者か?つねに傍観者の立場で物を言う、嫌なやつ。それは誰かと思いきや。。 |
〓 | 武術研究家、甲野善紀氏の本。著者は古武術を研究し、昔の名人、達人の技を現代に甦させようとしている。実際、体力はなくてもその技を習得すれば、とんでもない力が発揮できる。その技の使い方も具体的に説明がされており、自分で練習できる。介護の現場で、重たい人を支える時などに大いに役立っているようだ。勝ち負けでなく、その技の追及に喜びを見出し、社会に役立つような新しい職業をつくる、という著者の意気込みに賛同します。 |
〓 | 小川洋子『薬指の標本』を思いだした。標本にして封じ込める。恋人の指を。小川洋子は薬指だったが、中村文則は小指だ。不安にさせる小説。心をざわつかせる小説。心配事がある時に読むと不安が倍増するから止めておいた方がよいかもしれない。ラストはエネルギーを爆発させて、ある境地にたどり着く。これも著者自身が語る初期の代表作。 |
〓 | 磯山香織と甲本早苗の武士道シリーズ第4弾。時は流れて二人は大学生となり、磯山は教職課程もなかなかとれず、桐谷道場の師範代となり、甲本は桐谷道場で教える沢谷と結婚した。しかし、磯山の武士道ぶりは凄みを帯びてくる。それが沢谷との「シカケ」と「オサメ」の特訓だ。この辺りをしっかり押さえているのは流石だ。桐谷道場にはアメリカ人、ジェフも来るし、跡継ぎは誰かなどという問題も出てくる。あの黒岩玲那もちょくちょく登場するぞ。そして最後は磯山らしからぬことが起こり、驚かされた。 |
〓 | ちっとは政治のこともわかっとかんとなあ。この人も『ニッポンのジレンマ』で出ている若き国際政治学者だ。この本は現在の世界状況を知るのに丁度いい。全体の状況を見て、うまく事を進める人のことを「プロ」と表現しているのは面白い。もっとも政治のプロだけでは突破力はないかもしれんが。主人公の女子高生2人。由紀と敦子。人が死ぬ瞬間を見たいというハードなテーマで、2人の女子高生が自殺するがが、暗くなく、由紀と敦子の友情物語もあり、面白く読めた。<世界は>人間関係が濃密で、2回読んでやっと理解できた。 |