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11.12.11
ビブリア古書堂の事件手帖 三上延
メディアワークス文庫


 ちょっと面白い本を見つけた。舞台は北鎌倉の古本屋。店長は怪我で入院中の篠川栞子という美女。そして本とは縁のなかったプー太郎の五浦大輔がからむ。本と言ってもその対象は古本であり、そこには持ち主の人生がつまっている。第一話は漱石全集。第二話は、小山清の『落穂拾い・聖アンデルセン』。第三話は、ウィノグラートフ・グジミンの『論理学』。第四話は、太宰治の『晩年』の初版本。これらの本にまつわる事件を解決をしていく。解決するのはもちろん栞子だ。その糸口は新潮文庫のスピン(読みかけのページに挟む紐)。著者のサイン。蔵書印。刑務所での私本の許可証等。本の知識と本好きな人の気持ちで鮮やかに解決する。主人公の大輔は、アシスタント役だ。せどり屋の志田という男も登場。せどり屋とは、<古書店で安く売られている本を買って、高く転売する人たち>のこと。



11.12.6
風神の門(上) 司馬遼太郎
新潮文庫


 甲賀忍者は団体行動が得意で、伊賀忍者は個の力が優れている、という。その代表格が、猿飛佐助と霧隠才蔵だ。ご存知、真田十勇士の2人。秀吉亡き後、徳川家康は、磐石の体制を敷こうとするが、秀頼、淀君は豊臣の再興を願っている。大阪側につくか、江戸側につくかが、当時の忍者の就職先の選択肢でもある。霧隠才蔵は、猿飛佐助、真田幸村らと出会い、行動をともにするようになるが、幸村との主従関係は持たないというのが、伊賀忍者の特徴ということだ。主人に尽くすのではなく、大きなことがしたい。自由でありたいのが伊賀忍者なのだ。この霧隠才蔵を中心に、狙うはもちろん家康の首。




11.11.27
われ日本海の橋とならん 加藤嘉一
ダイヤモンド社


 中国で「一番有名な日本人」と呼ばれるのが、1984年生まれで今年で27歳になる加藤嘉一だ。最近日本のTVにも出ていて、先日「爆問学問」にも出演していた。単身北京大学に行き、「人民日報」と街角での実践で中国語を覚えた。英語は高校時代に満点近くまで取っていたというから、海外へ目を向けていたのは早い。中国のTVのインタビューを受けたのが切っ掛けで、次々と中国のマスコミに登場し、共産党幹部とも知り合い、さらに胡錦濤とも知り合うようになる。現在コラムニストであり、コメンテーターとして活躍している。確かに彼の中国人評はよくわかる。日本の閉塞感が嫌で日本を飛び出した著者であるが、海外に出れば逆に日本人であることの誇りを持つようになったという。その為にも海外へ出るべきだというのは説得力がある。元気がでる一冊だ。



11.11.23
誰もが書かなかった日本の戦争 田原総一郎
ポプラ社


 面白いし、良くわかった。石原莞爾、東条英機、近衛文麿、伊藤博文、松岡洋右そして天皇。日清戦争、日露戦争、満州事変、日中戦争、そして太平洋戦争。何故、最後の太平洋戦争に突入したのか、というところにドラマがある。ドラマがある、と言うのもおかしいが、やはり凄いドラマがあったと思う。何故なら、誰もが負けるとわかっている戦争であったからだ。ロシアや最終局面でのアメリカとのやりとり、そして『ハル・ノート』の存在。日本の近代史であり、それは朝鮮、中国の近代史でもある。世界の列強に仲間入りした日本が、負けるとわかっている戦争をせざるをえなくなったのは、外交戦略の誤りであったと著者はいう。何故外交戦略を誤ったのか、というのを読み解く鍵がこの本にはありそうだ。<この本を書くために私はジャーナリストになった!>というのは帯の言葉。



11.11.19
アフリカ大陸一周ツアー 浅井宏純
幻冬舎新書


 イギリスのオアシス社がやっている、アフリカ一周のツアーがある。改造したトラック(オアシス号)に乗り、モロッコから西海岸を南下し、ケープタウンから東海岸を北上する。その期間は約10ヶ月。参加人数は24名。このツアーに参加した55歳の著者の記録である。このツアーでは唯一の日本人で、その他はイギリス人、ドイツ人、カナダ人、オランダ人、デンマーク人、フィンランド人、ニュージーランド人、アメリカ人、マレーシア人、アイルランド人たち。キャンプでのテントは2人組。食事準備は3人組みとなり、順番に周1回当番となる。キリンの肉も食卓に上る。ちょっと草っぽかったそうだ。植民地であったころは豊かであったが、独立後、援助に頼りすぎて過ぎで逆に悪くなった国や、動物もいなくなって、他の国から連れてこざるを得ない国があるのが現在のアフリカの状況のようだ。それでもアフリカは、自然や動物の宝庫であることは間違いがない。そして何よりもこのツアーの面白さは、若者から初老の人まで、いろんな国籍の人間が集まって生活を共にすることだ。ツアー途中で終える人がいたり、途中から参加する人もいる。但し協調性も問われ、途中で帰国させられるメンバーもいた。会話は基本英語だ。総費用はなんやかんやと186万円かかったそうだ。



11.11.13
探偵倶楽部 東野圭吾
祥伝社文庫


 日本人離れした彫りの深い顔立ちとスタイルを持ち、全身黒尽くめの服を身にまとった男女2人組の探偵。それが探偵倶楽部の探偵だ。倶楽部制であり、基本的に金持ち相手だ。全部で5話。郡山のキオスクで買って、会津若松へ向かう磐越西線の車中で読んだ第1話『偽装の夜』が印象的だ。全て実は。。。という一ひねりがあって、さすが東野圭吾って感じはあるが、黒尽くめの探偵2人が完璧過ぎるかな。



11.10.31
新史 太閤記(下) 司馬遼太郎
新潮文庫


 秀吉は底抜けの善人だったのか。そのようだ。子供の頃から商人であった。人を殺さず、人を喜ばせる。敵であったものも優遇し、喜んで味方になってもらう。利をわがものにせず、大いに振舞う。子供の頃の秀吉に「他人に驕ってやれる人物になりたい」と言わしている。そのあたりが「人たらし」と言われる所以だ。やはりそれは幼少期の体験がそうさせたんだろう。身分が低かったこともあり、そうせざるも得なかった事情もあった。もちろんそれだけでなく、秀吉が天下人となった大きな要因は、知恵と勇気にプラスして、大気があった。と著者は表現したのであった。



11.10.11
九月が永遠に続けば 沼田まほかる
新潮文庫


 第5回ホラーサスペンス大賞受賞作で、おすすめ文庫王国、国内ミステリー部門第1位ってことで、天牛書店のお薦めコーナーにズラっと斜めに並べてあった。著者はといえば、1948年大阪生まれで、主婦、僧侶、会社経営を経て、本作品でデビュー。異色だ。内容は非常に粘りのあるものだった。主人公は41歳の女性。息子と二人暮らし。精神科医の夫とは別れた。患者であった女性を救う為に結婚を選んだからだ。事件の始まりは息子の失踪。そして愛人の死。人間関係は相当複雑になる。絡み合った事件ではあるが、丁寧で、粘りのある説明で納得させられる。ラストもぐっと粘る。



11.9.26
新史 太閤記(上) 司馬遼太郎
新潮文庫


 <第一級の策士とは底ぬけの善人であり、そうでなければたれが策に乗るか、と藤吉郎は言いたい>。『江』にしてもそうだが、最近の大河ドラマでの秀吉は面白く描いていると思う。昔はどうだったか、あまり記憶にないが。本書では、信長と秀吉の絶妙のコンビネーション。主従関係ではあるが、お互いを理解している。というか偏にこれは秀吉のパフォーマンスのなせる技だ。著者はこれを器量の差ととらえている。著者の信長観は、痛烈ではあるが、やはり冷たい人間と見ているようだ。<ひとは利に動かされ、利に感激し、利のために命をすててもはたらくはず>という考えの持ち主としている。信長から毛利に寝返った荒木村重は秀吉にこうささやき、ドキリとさせる。<筑前殿こそ、天下万民の信を得るおひとではあるまいか>。秀吉はその自分と同じ素質を黒田官兵衛の中に見る。利が最優先ではないのだ。結局、秀吉は底抜けの善人として天下を取ったと解釈しているのか。下巻が楽しみだ。



11.9.3
GOLF チカラの抜き方飛ばし方 高松志門
ゴルフダイジェスト社


 <いかにヘッド(太刀先)を感じるか>を追求し、その結果生まれたのが<ゆるゆるグリップ>であり、そしてそれは、<左手を意識しない>スイングなのだそうだ。それは示現流剣法の<太刀先を感じるためには、左手を使わないのが良い>ことに通じるそうだ。高松志門もゴルフを始めてから、フォロースウィングの過程での左腕の存在に違和感を持っていて、左腕全体を意識から消すのに10年かかったそうだ。そして気持ちよくヘッドを振ることができたそうだ。また、スクエアに立つなんぞは考えず、打ちたい方向を見るだけ、というのも高松志門らしい。気持ちよく楽しいゴルフを目指す。それと、力を抜いてグリップを握るにはグローブをした方がいいそうだ。やってみよう。



11.8.25
田村はまだか 朝倉かすみ
光文社文庫


 こいつは面白い。スナック「チャオ!」で行われているのは、小学校のクラス会の三次会。なかなか来ない「田村」を待ちながら、それぞれの人生を振り返る。一話一話語られる度に、一人ひとりの人生が語られ、明らかにされていくという趣向だ。しかし、田村はなかなか来ない。雪は降る、あなたは来ない。果たして「田村」は来るのだろうか。特別収録されている『おまえ、井上鏡子だろう』も、卒業してから何度も井上鏡子に会うのだが、最初は気付かない。別れてから、あれ?今のは?なんてことの繰り返し。なんか粋な落語聴いているような気になる。第30回吉川英治文学新人賞の受賞作だそうだ。



11.8.9
月の破片 鬼束ちひろ
幻冬舎


 歌を歌う為に生まれてきた一人が鬼束ちひろだ。映画『溺れる魚』のエンディングで流れていた歌(『edge』)を聴いたのが最初だ。のちに観たビデオで歌う姿、その魂の入れように凄いと思った。そんな鬼束ちひろの自伝的エッセイ、面白く読んだ。なんと最近ニューヨークに行って、左手にタトゥーを入れたそうな。有り余るパワーをそこに封じ込めるという。自他共に認める<暴れん坊>で、喜怒哀楽は激しい。音楽の世界に入るきっかけは興味深かったし、米米クラブが好きだったことには親近感がわいた。そしてなによりも、お父さん、お母さん、弟、そして妹をすごく大事に思っている鬼束ちひろを、かわいいと思った。<私にできることは、私にできることだけ>は、名言だな。



11.8.3
おちゃらけ王 朽葉屋周太朗
メディアワークス文庫


 おちゃらけたい。というか、普段十分におちゃらけられない分、しっかりおちゃらけたものを読みたい。といことでワクワクしながら読んだ。結果は、まずまず。もっとおちゃらけてもいい、と思った。読んでる端からカタルシスが得られるような、おちゃらけ。真夏の部屋でもクーラーがいらんような、おちゃらけ。おちゃらけも難しい。倦怠王国ダルカリアの国王としての<怠惰こそが人間の多様性を生みだす>という流れも期待したが、おちゃらけとは方向性がちょっと違うかもしれん。おちゃらけは、怠惰ではいけない。第17回電撃小説大賞、メディアワークス文庫賞の受賞作。<優木まおみも大絶賛>とは帯の言葉。



11.7.16
ワンピース最強考察 ワンピ漫研団
晋遊舎


 10年以上前から始まった『ワンピース』であるが、実は最近知った。女の服の事ではなかった。去年あたりからその名を聞くようになり、今年DVDもらったので一気に480話を観た。あとはコミックでつないでやっと現在放映している話につながった。面白いね。本書も一通り漫画を読んでいるか、日曜日のアニメを観ていなければ、なんのこっちゃである。海賊王と呼ばれたロジャーの遺言、<ワンピース>なる秘宝を探し。海賊達がグランドラインへ進む。主人公・麦わらのルフィは、次々と仲間を増やしながら、この秘宝を見つけ、そして次なる海賊王になることを目指す。ルフィの仲間で言えば、剣士で<海賊狩り>のゾロ、お金とみかんが大好きなこそ泥航海士、ナミ。へたれの狙撃王ウソップ。料理人で蹴りの達人、<黒足>のサンジ。医者で小心者のトナカイ、チョッパー。考古学者ニコ・ロビン。船大工で人造人間のフランキー、音楽家で骸骨のブルック。その他、ルフィの兄・エース、そしてルフィを海賊になるきっかけをつくたったのが、シャンクスだ。登場人物も多く、謎も多い。この本では、その謎の解明と、これから起こるであろう予測の本だ。「黒ひげ」という男が登場するが、アニメ中ではたいしたことのない、しょーもないおっさん風であるが、なかなかどうして、本書の解説を読むとえらい凄い奴のようだ。個人的にはゾロが<鷹の目>のミホークとの決着をつけ、世界一の剣豪になるかどうかが興味深々。それにしてもカッコイイのは、ルフィに麦わら帽子を渡した<赤髪>のシャンクスだ。登場回数は少ないが、ごそっといいとこ取りって感じだ。



11.7.3
トギオ 太朗想史郎
宝島社文庫


 ドロドロの近未来小説?「オリガミ」と呼ばれるスマートフォンを進化したようなものが日常で使われる。現金はあまり使われず、「オリガミ」で支払う。自分の考えを音声にしたり、折りたたんで紙飛行機のようになったり、それが自動操縦できたりと大活躍だ。何より身分証明書である。主人公蓮沼健は、捨てられた子供(「白」と名付ける)を助けるが、それによるいじめに会う。そして仲間と人を殺し、村を出て行くことになる。港町から東暁へ。東暁とは東京のような所。そこではごく一部の人間だけが裕福だ。<真紅の鷲>という裏社会を操る集団があり、ついには主人公蓮沼健の<弟>と呼ぶべき「白」がこの社会の重要人物になる。そして「白」が回想するという形で蓮沼健の人生が語られる。近未来のパラレルワールドか、それとも世界のどこかは本当にこんな感じになっているかも。



11.6.5
人生は愉快だ 池田晶子
毎日新聞社


 池田晶子も死んでもう4年になる。本書は死後出版されたもの。この本では池田晶子が仕事や恋愛についての人生相談に応じているところが面白い。人の出会いは「縁」のものと思ってどんと構えろとか、仕事の上司とは「責任を取る」ことだけを考えろとか、さすがに切れ味はいい。そして釈迦から一休まで哲学偉人たちの死生観に言及する。自分のことを「哲学プロパー」と呼んでいるのも池田晶子らしいと思った。



11.5.29
親指のうずき アガサ・クリスティー
クリスティー文庫


 ご存知?、トミーとタペンスシリーズ。『秘密機関』、『おしどり探偵』、『NかMか』に続く第4弾。この夫婦探偵も初老となった。トミーの叔母さんを老人ホームに尋ねるところから物語りは始まる。そこで出会ったある老婦人が、突然どこかに行ってしまった。タペンスはその老婦人を助け出すべく動き出す。タペンスの一直線ぶりに手を焼くトミーは、年をとってもあいかわらずだ。実際墓地で頭を殴られたり、部屋に連れ込まれて毒を飲まされそうになったりする。物語はさすがの大転回で、パズルが嵌め込まれていく。このシリーズ残るは『運命の裏木戸』一作となった。楽しみはとっておこう。



11.5.15
三人の魔女 テリー・プラチェット
三友社出版


 イギリスの作家・テリープラチェット、ディスクワールドシリーズの6冊目にあたるらしい。『魔女エスカリナ』でも登場した魔女グラニー・ウエザワックスの他、ナニー・オグ、マグラートの魔女が登場する。3人の魔女は殺害された王の息子を預かることになった。その息子(トム・ジョンと名付ける)を芝居小屋の親父ヴェトラーに育てさせ、王位に担ぎ上げようとする。彼女らのドタバタ魔術ぶりが愉快だ。殺害された王ヴェレンスは亡霊となって登場し、若い魔女マグラートは道化と恋に堕ち、魔女グラニーは、世界を15年すっ飛ばさせる。王フェルメットと、その王を操る夫人。最後のオチが効いている。



11.4.26
美女と竹林 森見登美彦
光文社文庫


 何が美女じゃ、何が竹林じゃ。あ〜バカバカしい。真面目に読んではいけない。竹林の何たるかを知ろうとしてはいけない。ましてや、美女との関係に期待してもいけない。えんえんと著者のグタグタと妄想が続く。それが面白くないかと言えばそうではない。このぐたぐたが好きか、好きでないかで大きく左右される。もちろん私は好きだ。が、ちょっとしつこいか。何やらあの哲学者、土屋賢二がダブってきた。



11.3.20
ゴールデンスランバー 伊坂幸太郎
新潮文庫


 3月11日の東北での大震災。予想以上の脅威となった津波。そして追い討ちをかける様に原発問題。仙台に住み、仙台を小説の舞台にしている伊坂幸太郎は大丈夫だろうか?この小説の舞台となるのももちろん仙台。主人公・青柳雅春は、殺人犯人として追われる身となった。しかも首相暗殺犯だ。仙台をパレード中の首相をラジコン飛行機で暗殺したのだ。身に覚えの無いことだ。TVに殺人犯人として放映された。警察が追ってくる。何故か証拠も次々と挙がってくる。誰かに仕組まれているに違いないのだが、特定の誰かはわからない。相手は、巨大な何かだ。巨大な力が動いている。恐怖と不条理。そういう意味では大震災と一緒だ。違うのは相手が巨大と言えども人間ということだ。助けになるのは、わずかな友人たちと父親。彼らの意見は一致した。逃げろ!だ。とにかく、生命を守ること。どうしようもない力の前での選択は<逃げる>ことだった。逃げろや逃げろ。戦うだけがいいことではない。いや、それも戦いか。



11.2.28
「モテる男」はこれでいいのだ。 赤塚不二夫
文庫ぎんが堂


 『おそ松くん』、『天才バカボン』等の名作を残した赤塚不二夫。カサノバの『回想録』に触発されて筆をとったという。名づけて『バカノバ回想録』だ。「我輩の愛すべき女友達」、「我輩のアブナイ男友達」、「我輩の自慢したい有名人」、そして「我輩の原点、漫画の世界」の4章からなる。「…自慢したい有名人」では、美空ひばり、タモリ、青島幸男、たこ八郎等が登場する。そして何よりもよくモテたそうだ。「…愛すべき女友達」の章を読むと、もう大変だ。よく頑張るなあ、という思いとともに、彼のドタバタぶりを知って、こっちも勇気百倍だ(なんのこっちゃ)。「我輩の原点、漫画の世界」では、あの谷岡ヤスジが登場。ハチャメチャぶりでは、赤塚不二夫以上であったが、ちゃんと下書きをしていたそうな。また『天才バカボン』を描いていた時は、篠山紀信、野坂昭如、吉行淳之介、井上ひさしを読者として想定していたそうだ。決してバカを相手にしていたのではないのだ。



11.2.20
戴帽式をまちわびて 櫻乃かなこ
宝島社文庫


 <「現役ナース」の書き下ろしノベル>だそうだ。主人公はアルカディア病院付属看護学校の1年生、鶴巻俊平。全寮制で、女だらけの中の<白一点>(て言うのか?)。厳かな戴帽式までの10日間を描く。しかし、汗や涙や努力や、それによる感動を期待してはいけない。のっけからエロの連続だ。青春物語<性春篇>だ。さすがに白1点はもてるな、っていうか一気に成長した。うらやましい。エロさbPは、スパルタ教師、真藤先生の補講に決定。



11.2.7
義珍の拳 今野敏
集英社文庫


 沖縄から本土に空手を伝えた船越義珍の半生の物語。その昔沖縄では、空手を「手」あるいは「唐手」と言った。船越(富名腰)義珍は、安里安恒、糸洲安恒に唐手を学んだ。当時は試合は禁じられ、練習はひたすら型の練習であった。特に一見地味なナイファンチ(ナイハンチ)を繰り返し練習させられた。それに反したのが本部朝基だ。彼は実践を重んじ、やたらと試し合いを仕掛けていったそうだ。船越義珍は教師となり、空手を教えることを自身の使命と考えた。東京の講道館で教え、柔道の一部門としようとした嘉納治五郎の申し出を断り、空手道場・松涛館を設立するが、戦争で焼失し、その後、日本空手協会を作った。空手の型で平安初段〜五段というのがあるが、この型は腰をしっかり落とした姿勢で行う。どちらかというと体を鍛える為にそのようにしたそうだ。本来の沖縄唐手は、もっと両足の立ち幅も狭く、柔らかく滑るような動きであったようだ。体育的要素を強くし、試合を行うことで広がったが、力とスピードに偏重した。船越義珍もそれを訝ったが、その流れは止められなかった。「空手に先手なし」から「空手に先手あり」となった。空手の生い立ちがよくわかった。また、力とスピードではない沖縄唐手を学んでみたいと思った。和道流の創始者・大塚博紀も弟子の1人にあたる。



11.1.22
やっと。やっと! 大場久美子
主婦と生活社


 その昔、アイドルであった大場久美子がパニック障害になっていたとは驚いた。仕事を止めたい、人生を止めたい、という葛藤があった大場久美子が、その病気と戦いつつ、自分の人生を振り返る。結構最近まで大変な時期であったようだ。彼女も書いているが、医者の応対に本当につらいことがある。<突き放されたような、見捨てられてしまったような気分になる>。彼女がカウンセリングを受けている時に、<終了時間を気にしていることが伝わったり、結論がでていないのに最後の言葉をさがしているような気配がしたり>した時だ。また、まだ起きていないことを不安に思う「予期不安」に対しては、マネージャーの言葉<目の前のことだけ考えましょう。歌謡ショーのことなら、私がなんとかします>に救われたという。それは<私の責任を私の代わりに引き受けてくれようとしていると感じられ>たからだという。今はブログを続け、返事を書いたりすることで元気になっているようだ。やはり、親身になってくれる仲間というのが大事なんだな、と思った。



11.1.15
猿飛佐助 柴田錬三郎
文春文庫


 柴錬立川文庫の一冊目。猿飛佐助は武田勝頼の子であった。佐助を育て、鍛え上げたのが戸沢白雲斎。佐助のあまりに純な性格からして、一国一城の主になる器量はないと見抜いた白雲斎は、清廉潔白な名将・真田幸村に仕えることを薦める。登場するのは、猿飛佐助の他、佐助のライバル・霧隠才蔵、石川五右衛門の息子・三好清海入道、柳生石舟斎の次男・柳生新三郎。武田信玄、上杉謙信を殺し、明智光秀に織田信長を殺させた男・百々地三太夫。その他、謎の男・豊臣小太郎、巨漢・岩見重太郎、そして「江」(今年のNHKの大河ドラマ)の姉で秀吉の側室の淀君が登場する。このメンバーだけでもワクワクするが、柴錬の筆により面白さ倍増だ。多分高校生の頃に買った本で、全体にうす茶色くなってページの周辺は特に茶色になったが、今読んでも面白い。本を読むことが好きになった一冊だ。柴錬立川文庫の2冊目、『真田幸村』も読んでみたくなった。