〓 | なかなか気合の入る一冊だ。「鬼十則」というのは、電通の4代目社長・吉田秀雄が、昭和26年に社員を叱咤激励する為に書き上げたという。電通というと広告業界のbPであり、現在企業のイメージが強い。しかし創業は1901年ということで、なんと100年以上も前からあったのだ。驚いた。その歴史ある電通のなかでも強烈な個性を発揮し、世界の電通にしたのが、この4代目社長・吉田秀雄だ。仕事は自分で創る。大きな仕事、難しい仕事を選べ。取り組んだら死んでも放すな。周囲を引きずり廻せ。摩擦を怖れるな等、かなり精神論ではあるが、今一番欠けているものであるような気がする。 |
〓 | 正に映画のようだ。人生の全てをデイジーという女性に捧げたギャッツビー。読んだ直後は、何やら哀しい物語と感じたが、そうではないのかもしれない。ギャッツは、ギャッツビーに名前を変え、金を蓄え、薄っぺらかったが成功者となった。そして長年の目的であった彼女(デイジー)をものにすることができた。だが彼女の言うように欲張りすぎた。彼女の現在だけでなく、過去も自分のものにしたかったからだ。それが狂わせた。やり過ぎた。ラストで父親が登場するが、何か泣けてくる。 |
〓 | 「天は自ら助くる者を助く」という格言を復活させたのが、著者のサミュエル・スマイルズだ。この言葉に本書の内容は集約されている。著者が一番言いたかった言葉だろう。また、<外部からの援助は人を弱くする>ということも言っている。その他、引用したい文がいっぱい詰っている。そして、自分はさておいてまで他人のためにつくそうとする、人格者となることを第一とする。本の読み過ぎも諌めている。<適度な読書の楽しみは決して奪われるべきではない>としながらも、<小説に読みふけり、まやかしの感情に支配されると、健全な心はゆがみ、精神の麻痺する危険が大きくなる。…だからフィクションにばかり感動していると、現実に対してしだいに無感覚になってしまう。精神という鋼は徐々に摩耗し、弾力性というかけがえのない特性もいつのまにか失われていく>という。地に足着いたしっかりした生き方をしたい人に最適。時々読みたい本だ。 |
〓 | 『悪夢のエレベーター』の続編。前作はちょっと洒落た感じがあったが、この続編はぶっ飛びだ。エレベーターを出て爆発した。三郎、カオル、マッキーそれぞれが動く、動く。周りの人間関係も膨らむ、膨らむ。前作の味とは全然違う。続編の域を超えている。ちょっとズルイなと思ったのが、突然登場してくるジェニファーだ。実はマッキーは、もう一人現場に連れてきていた、なんてアリか?この強引さはビックリした。その後、けっこう活躍しているんで、重要人物だ。ご紹介遅れまして、なんて初めてだ。マッキーに語らせる<酔っている人間ほど嘘をつく>は、名言集に入れておこう。 |
〓 | おもろい。設定がエレベーター限定にしているのも新しい。ありそうでなかった。中で繰り返されるアホな会話。だけど単なるアホ話ではなかった。一応筋が通ったというか、裏があるということが途中からわかる。何やら『スパイ大作戦』のようだ。と言ってもトム・クルーズの映画ではなく、昔テレビでやってたアレだ。このまま終わるかな、と思わせといてのラストの捻りがまたいい。自殺を救おうとする説得で、<きっと、今夜よりも辛いことが、君を待っている>とは、なかなかのもんや。 |
〓 | 著者は「中国人」と「日本人」を、「チャーハン」と「おにぎり」に譬えている。つまり中国人はバラバラで個人主義。日本人は団結して行動する。個人主義のいいところ、自分を優先させ、自分に関係のないことには関りをもたないこと。関係ないことは「没有(メイヨウ:「ない」という意味)」ですます。ドライだ。中国人気質のキーワードは、「個人主義」「義理人情」「面子」ということだそうだ。肩書きよりも個人としてのつきあい重視だ。著者の今後の生き方としては、この中国人の個人主義的なところ学びたいようである。社会の為にあくせく働きてきた中年以降の人には、いいかも。 |
〓 | 1949年に中華人民共和国は成立した。しかし、建国の父と言われる毛沢東は、<国民に休息を与えず、キャンペーンを張り、毎日のように国民を政治運動に駆り立てた>そうである。そこに現れたのが、ケ小平である。<まず食べていけることが先決だ>ということで、政治を実践した。著者の発言からも、どれだけこの政治家が中国国民に支持されていたかがわかる。また、日本人なら周恩来を忘れてはいけない。中国人は面子を大事にする。他人を簡単に信じるな。そこには騎馬民族(中国人)と農耕民族(日本人)の違いがいろんなところで出てくる。そこで付き合いするなら、長くじっくりが基本となる。あわてちゃいかん、ということだ。肝に銘じておこう。しかし、著者が孔子の75代直系子孫というのは、ほんまかいな。 |
〓 | 史上最多の69連勝を達成した横綱と言えば双葉山だ。千代の富士は53連勝(史上5位)で、朝青龍が35連勝(史上16位)だ。双葉山は、のちに時津風と名乗った。時津風部屋には、青の里という力士がいた。兄貴がファンであった。<イマダ モッケイタリエズ>の名言を残した双葉山は素朴で、求道精神に溢れる男であった。力士の立場に立った発言も多く、年2場所が4場所となって、養生する時間が少なくなった嘆いている。今や6場所だ。怪我を治すのは尚のこと大変だろう。自身の相撲ぶりについては「後手のさき」、相手が立った後で立つが、その瞬間には機先制している、いわゆる「後の先」だ。基本の型を重視し、型崩れがないので怪我が少ないという。女性の好みついて語っているのもいい。彼の求道精神を引き継げるのは、2代目貴乃花ぐらいか。『〜の品格』という書名がはやっているので名付けたんであろうが、双葉山にとっては改訂前のタイトル『相撲求道録』の方が似合うな。 |
〓 | 第5章に柳川先生が紹介されている。あやつり人形のように歩き、体当たりのような突きを放つ。正に柳川流だ。この本の編集者が和道会に取材の依頼をし、その電話をとったのが、なんと事務局長をしていた柳川先生であった。そして<その技ならば、私も得意としているので、取材に応じることができる>と答えたという。いいですねえ。その他、柳川先生も注目していた肥田春充の強健術。肥田春充の基本姿勢である、腹を突き出し立っている写真は、今だにちょっと違和感がある。ポイントは、”腰腹同量の力”だ。『スーパーボディを読む』の著者、伊藤昇の胴体力。ヒクソン・グレイシーとヨガ。太極拳と櫨(本当は木へんが無い)山初男が紹介されている。末端の手足の力ではなく、胴体力ということで言えば、あのヒョードルの強さは胴体力そのものだと思う。 |
〓 | ショートショートと思い、ずっとカバンに入れ、ちょこちょこ読んでいたら、何やら同じ名前の奴らが出てきたので、おかしいなと思っていたら長編だった。ちょこちょこでは話を忘れてしまうので読み進まない。仕事の帰りに飯屋に入って読む習慣もなくなったので1年半以上もカバンに入れっぱなし。本もボロボロになってきた。ある日飯屋で待つ間に、ふと取り出して最初から読み直した。ここで勢いに乗り、一気に読んだ。脱出だ。新聞小説の連載だったそうで、唯一の長編かもしれん。長編でも”味”は、ショートショートと同じだ。登場人物が多く、話も少々複雑になる。本業がびっくり箱製作というアイデアマンで才気走った黒田一郎、化粧品のセールスレディの副島須美子、神主の牧野邦高、金持ちのお嬢様といっても40過ぎの松平佐枝子。佐枝子の仏像を黒田と副島が盗み、仏像の身代金を要求するのだが、本物と思ったら偽物で、得をするかなと思ったら損をする。思惑と違うことが次々と起こり、全員が振り回される。とことん行くと結果けっこういい方にいくので、人生も捨てたもんではないな、って感じだ。 |
〓 | 新世界秩序をつくろうとするミヤジ。そしてジウ。その中に伊崎基子が入った。警察の中でも心あるものは、伊崎を救おうとする。東弘樹&門倉美咲も同様だ。ジウとの一騎打ちに敗れた伊崎は、ミヤジの仲間になったと思われたが、なかなかどうしてそんな奴で終わる伊崎ではなかった。新世界秩序なんてのも関係なし、己の思うがままを貫いた。痛快だ。おトボケ爆発の門倉美咲も体をはって伊崎を守った。さてジウは?彼も実は可哀想な奴であった。伊崎とジウの第2の格闘は、これまた素晴らしい。相手の出方を読みきってのものだ。相手を過大評価しない、冷静な分析があった。こういうところも誉田哲也、やるなぁと思った。ラストで門倉が、かつてジウに誘拐された子供に会い、ジウのことを語る場面も泣かせる。著者自身も言う、極上の娯楽作品だ。いいねえ。 |
〓 | 『ジウU』でようやくジウが登場。そしてジウのパトロンの「ミヤジ」と名乗る男。覚醒剤でのし上り、社会を牛耳ろうとしていた。その彼の強烈な半生とジウとの出会い。薬でも、金でも、暴力でも征服できないジウに興味を持ちパトロンとなった。<「…お前は、自由だな」>ってことで、「ジウ」は「ジウ」となった。何と言っても一番の見所は、伊崎基子とジウの直接対決だ。伊崎が初めて「負ける」と思った瞬間がおとずれる。(自由な?)新しい世界秩序をつくろうとするジウ。それを面白がり後押しする「ミヤジ」。彼らは人を殺すことを厭わない伊崎基子を仲間に引き込もうとする。そして無感覚・無感動の不気味な奴らに立ち向かう門倉美咲と東弘樹であった。 |
〓 | 初めての勝間本だ。サブタイトルが「運を戦略的につかむ勝間式4つの技術」。先ずは、体を鍛えるのと同じように、メンタルの筋力をつけることが大事であるという。そのトレーニング法として本書があるという。<メンタル筋力>とはなかなかいい言葉だ。鍛えれば強くなる、ことがイメージ出来る。こういう言葉の置換えが大事だ。タイトルの<起きていることはすべて正しい>というのも使える。読んでみて、勝間さん自身が読んだ本を、自分のものとして咀嚼しているのがわかる。そして楽しいと思えることは<自分たちの能力が遺憾なく発揮され、その能力に対して周囲の人が感謝し、褒め称えてくれること>であると言っている。地位なんか追い求めるとろくな事にはならんと思う。結果を求め過ぎず、いいと思うことを少しずつでも丁寧に行う事が、その目標につながるんだと思う。その為の継続可能な技術論として読むといい本だ。 |
〓 | 主人公の2人は、『武士道…』シリーズと同じような設定。男勝りの伊崎基子とほんわか系の門倉美咲だ。このパターンが成功したんで、武士道シリーズにも使ったんかな、と思わせる。警視庁特殊犯捜査係に属する2人。伊崎は正に女ランボーだ。体を鍛えるのとバイクが趣味で、突撃で犯人をやっつけるのを得意とする。門倉は心やさしく、犯人の心を開かせ、説得するのを得意とする。で、物語の内容はけっこうハードだ。説得得意の門倉も現場では、体に張って活躍する。主犯のジウと呼ばれる人物は、表立っては登場しない。親に捨てられ、1人で生きてきたことが共犯者によって語られるのみである。ジウの心を開かせるのか、あるいは組み伏せるのかが、今後のポイント。文章はあいかわらず面白く、ハード内容とともにユーモアにも溢れている。門倉が上司とともに捜査途中で入るファミレスでもメニューを迷ったりするのは、あるあるだし、伊崎のシャワー室での格闘は、読み所だ。 |
〓 | わが師・柳川昌弘が、武道家にインタビューし、自らの武道感と照らし合わせたもの。合気道の開祖・植芝盛平の高弟・斉藤守弘と実子・植芝吉祥丸の比較は興味深い。前者は「攻撃が基本」と言い、後者は個々の技術ではなく、心の持ち方に重点を置く。柳川先生は、「小の兵法」と「大の兵法」の違いであると解説している。また、柳川先生の師、和道流の開祖・大塚博紀との関係、合気道の藤平光一氏との出会いによる武道家への触発なども初めて知った。面白いのは、武道の達人・名人と呼ばれる人にアンケートをとった回答だ。高尚なものから、ただの自慢話、武道に対する意識の違いが良く出ている。こうして比較することにより、柳川先生の武道感が良く分かる。「心・技・体」については、<無謀・臆病>ではなく<大胆・細心>であること。「理」については、先ずはフィーリングを掴むことが重要であるとしている。 |
〓 | この人はいい小説を書くなあ、と思った。哀しく、切ない、壮絶な学園小説だ。『武士道…』シリーズ、『ストロベリーナイト』、『疾風ガール』等、女性が主人公の話が多く、それぞれのキャラクターがいい。真面目な人物が多いが、ただ頑張るだけでなく、悩んだり、息を抜いたり、そしてユーモアも忘れない。その辺りが共感を呼ぶのではないか。今回の主役は高校生の姉と妹。その姉が死ぬ。事件は姉と音楽教師、そしてチンピラ男子学生が絡む。妹はその事件の真相を知る為に、同じ高校に入学する。そして真実を知れば知るほど、苦い思いをしていく。知らずにいた方がよかったのか。知ることにより、心の傷は深くなっていく。個々の描写もいい。姉・涼子の壊れていく様子、その後死の直前、張り詰めていたものが途切れた様子、ゾクゾクした。 |
〓 | 人間の記憶と言うものは、すぐに忘れるようになっている。しかし、脳内で再構成され、イメージ記憶として残るらしい。イメージ記憶なので、真実ではなく、勘違いのまま記憶されることもあるようだ。結果を出す(試合に勝つ)には、このイメージ記憶を発動させ、そしてそれを表現する能力が必要となる。そしてもう1つ独創性や創造力を生み出す能力が必要だという。うまくいった事を、イメージとして覚え、独創性をもって表現する、ということになる。そして肝心な事は、意外にも「勝つ」ことを意識してはいけないってことだ。勝負において「勝つ」ことは目的ではあるが、勝つ為ににやること(目標)に集中せよという。ゴルフのパターで言えば、カップインではなく、ボールの転がりに集中するということだ。「勝つんだ、勝つんだ」ではなく、「これをすれば勝てる」という実感をもてるようにすることだな。またハードルが高そうな場合でも、自分の都合のいいように考える、脳を疲労させない、ことが有効なようだ。 |
〓 | 読み応えアリ。帯の文句が<史上最強のゴルフ小説>ってことで、ワクワクしながら読んだ。主人公はプロゴルファーの徳永哲男かなと思ったら、なんだか違う男たちの人生を語りだし、誰が主人公かわからんようになった。それくらい周囲の様々な人物の生い立ちが描かれる。後半では彼らの人生が絡み合ってきて、この物語の主人公らしき人物が浮かび上がってくる。徳永ではなかった。最初にヨレヨレっと出てきて、すっと去っていったのが主人公だった。徳永のコーチでもある、鳴海カントリー所属のプロゴルファー山内一也だ。颯爽と登場した主人公ではない。訳アリ主人公だ。その分いい味がでている。身体は大きくないが、柔らかく飛ばす。師匠が武道家に教わったという直伝の技が冴える。見えないスイングだ。ドひゃ〜っ。 |
〓 | エキサイティングであった。現代の古典とも言うべき本。古典ってけっこうエキサイティングなのだ。そして誰もがエグゼクティブなのだ。だから知識労働者だと思う人は、本書を読むといい。成果を上げる為には、どうしたらいいか。例をいろいろ挙げながら、解説する。重要なことを決定するのは組織の長だけではない。それぞれの役割を持ったものは、エグゼクティブたるべきなのだ。人の強みを生かせ。1つのことに集中せよ。やりたい事ではなく、やるべき事をせよ。新しいことを強力に進める唯一の方法は、古いものの計画的な廃棄である。まあ、こう書いてみると当然のことばかりだが、読んでいて面白いのが古典たる所以だ。 |
〓 | 『バンカーなんか怖くない』の前編である。読む順番が逆になった。ユウ・ナカガワは漢字で書けば、奈加川友であった。祖父の経営するドライビングレンジで球拾いを手伝う。拾う代わりにサンドウェッジで打ち返してたのでうまくなった。賞金稼ぎで試合に出場。初めての試合で、タイガー・ウッズの写真を見ながらアプローチをするところは微笑ましい。弟のケンとの意気もぴったりだ。その他、ユウの周りの人間たちも明るく、いい人たちばかりだ。ソーセージのような「スパム」のサンドイッチも食べみたい。読み応えはそんなにないが、明るい、ライトな小説ってことで、まあいいっか。。(追記)あ、そうそう、最後の決め技、パットが転がり過ぎないようにバックスピンをかけたのはイカスぜ。サンドウェッジパットのなせる技。 |
〓 | 再読。以前にあの中部銀次郎との対談集『ゴルフの大事』を読んだ。三好徹の職業は作家であり、これらゴルフ関係の本や、エンタメ系、はたまたノンフィクションでは『チェ・ゲバラ伝』なんてのもある。作家としても結構巾広くやっている。本書の面白いのは、海外のゴルフスクールでインストラクターに食い下がって説明を求めるところだ。しっかり理屈を覚えようとする意気込みが感じられた。左手首の返しのインパクトまでを「プロネイション」とインパクト以降を「スピネイション」と呼ぶのを本書で知った。またパターを垂直に垂らしてグリーンの傾斜を読む方法を「プランク・ボッビング」と言うのも知った。但し傾斜に対して直角に立つか、あるいは両目を傾斜に平行にしなければならないので、けっこう難しそうだ。時々グリーンから目を離して水平っぽいところを見ることにしとこ。これも効果ありますぜ。 |
〓 | アイアン3本で勝負する16歳のゴルファー、ユウ・ナカガワのお話。3本のアイアンは、5番、7番、サンドウェッジだ。ティーショットはいつも5番で200ヤード飛ばす。2打目は7番で、アプローチがサンドウェッジだ。そしてパットもサンドウェッジの刃で行う。ある試合でサンドウェッジの刃がかけてしまった。その切れるようなサンドを求めて製作者を探す。舞台がハワイであることで、釣りやらサーフィンやらの話が挟まれる。話の設定は面白く、スイスイ読めるが、話がお決まりで軽すぎる。アメリカ映画の『ベストキッド』てな感じだ。ハワイが舞台なんでまあいいか。著者がファンクラブを作って、イベント好きそうなのも、まあいいっか。 |
〓 | 『白い巨塔』、財前教授の最後の言葉(遺書)を思い出す。「才能のある者の責務」という言い方。本書に出てくるのは、才能に溢れるロッカー、柏木夏美だ。彼女のパフォーマンスに誰もが舌を巻くが、同じ土俵で戦おうとしたものは、破れ、傷ついていく。その後彼らは、協力をしてくれたり、姿を消したりする。また足を引っ張る奴もいるだろう(この物語には出てこないが)。しかし、才能あるものは、傷ついた者たちに引っ張られていてはいけない。どんどん乗り越えて、天辺を目指していかなければならない。それは才能のある者の責務であると言える。その葛藤をうまく描いていると思う。いける奴はガンガンいけよ。 |
〓 | なんと言っても読書の巾を広げてくれたのが、この松岡正剛だ。学生時代に出会った工作舎の前衛雑誌『遊』は強烈であった。この工作舎を作ったのが松岡正剛だ。『遊』のテーマが「読む」の時に「松岡正剛の365冊」が掲載され、それに従って本を読んでいった。本書では半生も語られるので、工作舎立ち上げ時の話などとても興味深く読めた。本の読み方にはいろいろあって、カジュアルに、フォーマルにと服を着るのと同じである。松岡正剛から薦められた本が、実は彼自身も他の人からのお薦めであったりすると、遠い存在であった著者が身近に感じられる。彼がやったように、自分なりの世界地図、年表を作るのは面白そうだ。読書とは、世界認識の旅だな。 |
〓 | 「きこ書房」って初めて聞いたが、なんかかわいらしい名前。『キャノンの仕事術』で酒巻さんが、ビジネス書を読むのなら翻訳物がいいってことで、本屋のその辺りを見て、古典的なコレを読んでみようと思った。普段はタイトルだけを見てスッと通り過ぎる本なんであるが。読んでみるとなかなかいい。使えるな、と思った。積極的な心の持ち方について、いろんな例を挙げてしつこく語る。特に「熱意」と「代償」はキーワードだ。本書でいう成功の定義とは<成功とは、他人の権利を尊重し、社会主義に反することなく、自ら価値ありと認めた目標【願望】を、黄金律に従って一つひとつ実現していく過程である>ということだ。それによって、「富と心の平安」を得ることが出来るという訳だ。 |
〓 | キャノン電子・社長の酒巻氏の自伝的仕事術。『キャノンの…』というよりも、『酒巻さんの…』と言うべきものだと思う。会社の中での起こる数々の問題に対する対処の仕方、心の持ち方について、著者の性格が色濃く出ており、生き生きとしたものになっている。キャノン電子として国内の雇用にこだわったり、社員が本当に喜んで働ける職場づくりを考えたり、会社第一優先ではない、人を大事にする生き様が見えるいい本だ。会社員には特にお薦め。 |
〓 | TVドラマで「銭ゲバ」をやっていた。おおっ、銭ゲバか、なつかしいなぁ。って読んだことはなかったけど。TVは連続して見れなかったので、なら原作を、ってことで高石の天牛書店にいくも売り切れ。前見た時にさっさと買っとけばよかった。結局豊橋に遊びに行った時に買った。いや強烈でしたね。金がなかったから母親が死んだ。だから蒲郡風太郎は「金あったなら」という思いで生きた。最後は自殺するのだが、それは「自分の心を守る為」と遺書に書く。そのまま生き続けたなら、また人を殺めていったであろう。それがツラかったんだろう。死に物狂いで生きたが、人間の幸福について考えた時、張りつめていたものがプツンと切れたに違いない。欲を言えば、風太郎の内面をえぐっていった作家・秋遊之助との対決をもっと長引かせてほしかった。 |
〓 | いきなり葬式で始まる今回のお話。死んだのは当主のリチャード。それに続いて妹のコーラが殺される。弁護士はポアロに助けを求めた。ポアロは例によって、残った人間を観察する。殺された変わり者の妹・コーラと彼女の家政婦・ギルクリスト、しっかり者の姪・スーザン、規律正しい義理の妹・ヘレン、女優で美人だがあまりにも単純でストレートな姪・ロザムント等、女性陣が面白い。特にロザムントが”あること”について”決心を固める”ところがなんともかわいらしい。男どもは今回も情けない役回りだった。 |
〓 | 野村克也はいつも選手に<仕事と人生を切り離して考えることはできない>と言っている。仕事も遊びも人生だが、仕事に多くの時間を割いている以上、そこに人生を賭けねばならぬと思う。人間の評価についてはこうだ。<その人間の価値を決めるのは自分ではない。他人によってなされるのであり、他人が下した評価こそが正しい>。これは肝に銘じておきたい。今回のテーマの監督評については、新旧の監督をズバズバ切りまくりで面白い。一番押すのは、巨人のV9を達成させた川上哲治だ。監督としての必要条件を満たし、何よりも人間教育をしたからだという。監督の仕事の最も大切なことは「人つくり」だと言う。あとがきでは、野村が育てた人物を挙げているが、古田については<人間教育には失敗してしまったようだが…>なんて言ってる。<「人間は、無視・賞賛・非難の段階で試される」という>、と本書にも出てくるが、試しているのか。。弟子は離れて完成する。 |
〓 | ゴルフの素人による、「システムゴルフ」。多くのレッスン書は主観で書いているものが多いと言う。できるだけ主観を排除する!ってことで手本にしたのが、『理科系の作文技術』であったそうな。素人の書いた本でも正しくて、効果的であるなら国際的となると考えたり、外国人が発音してもい違和感のないペンネームにしたり、自分で出版社に売り込みに行くなど意気込みは凄い。まあこんな本を出した日にゃ、周囲の見る目が変わり、どんなスコアで回るのかと注目されるのは間違いない。この本の著者も大変なプレッシャーだったという。週刊誌に連載され、読者アンケートでも、<有益な記事>ランキングで1位になった。○○打法なんて言わないようにしたんであろうが、一応名前はあって、パターの時の「P動作」と、スウィングの時の「S動作」だ。さてどうだろうか。 |
〓 | 1998年に出版されて本。積読だったが、ようやく読んだ。面白かった。宮崎哲也は見かけによらず骨っぽい男だ。中学時代はほとんど学校へも行かず、読書と社会勉強に明け暮れ、家庭内でもエネルギーを爆発させていたという。自分勝手なことをしてきた反動からか、個人主義には批判的だ。保守派と言われるほど、社会的・規律的であることを重視している。個人を尊重するあまり、個人の主義、感情、好き嫌いを最優先しているのは確かにおかしい。周囲の感情や、関係性をもっと重視せよ。そういう共同体での働きが様々な場面で不足している、というスタンスだ。そして人権問題、宮崎勤や酒鬼薔薇らの殺人事件、死刑、安楽死、中絶、クローン人間などについて論じる。自ら「育ちのいい世代」と宮崎哲也は言う。ほぼ同世代なので頑張って欲しい。社会問題をハードに語ることのできる貴重な存在なのだ。 |
〓 | ゼクシオというのはゴルフ用品のブランド名で、「XXIO」と書く。このゴルフ用品は、SRI(住友・ラバー・インダストリーの略)スポーツというところから出ており、元々のブランドであった「ダンロップ」と海外ブランド「キャロウェイ」の日本での販売をやっていた。その後「キャロウェイ」が自社で日本の販売をすることになり、その売り上げをカバーする為立ち上げたブランドであるということだ。他社との違いを明確にしたのが、打球音だ。現在5代目のクラブを開発して人気を維持し、ゼクシオブランドは確立した。SRIスポーツは「SRIXON」という別ブランドでもゴルフ用品を出しており、両ブランドともクラブだけでなく、ボール、ウェア、バックまで出している。得意のボールはさらに3つのブランドがあって種類が多すぎ。クラブ作りは真面目にやっていそうだが、その他はブランド頼りのおまけ感が強く、ダサ!と思う。 |
〓 | 『武士道シックスティーン』を見て、『ストロベリーナイト』の作者や、と言った人がいた。『武士道…』で面白いと思った誉田哲也が、その前にブレイクしたのが『ストロベリーナイト』か。ってことで読んでみた。非常に面白かった。主人公の警部補・姫川玲子は過去に傷を持ち、それを振り払うように生きている。ガンテツこと勝俣健作は、同じ警部補で、凄く嫌な奴として登場する。そして個性豊かな姫川の上司に部下。犯人だけではない。それぞれが何かを背負って生きている。上を見て生きてきた者、下を見て生きてきた者。また左右ばかりを気にして生きている者。いずれもどうしょうもないことに心が乱れる。警部補という地位でツッパリ、ラストで身も心も疲れ果てた姫川にガンテツは言う。<上だの下だの右だの左だの、余計なとこばっかり見てっから、肝心なものが見えなくなっちまうんだよ。…いいか。人間なんてのはな、真っ直ぐ前だけ向いて生きてきゃいいんだよ>と。この単純な答え。単純ではあるが、心に響いた。周囲のプレッシャーを感じたらこのことを思い出そう。 |
〓 | 『武士道シックスティーン』の続編。益々面白くなってきた。武士道魂の磯山香織と正反対の性格であるが互いに引き付けあうライバルく甲本(西荻)早苗。甲本早苗は訳あって福岡南高校に編入。そこで出会うのが黒岩玲奈。この黒岩こそが全中決勝で磯山を負かしたやつだった。試合に勝つことを第一とし、徹底したスポーツ剣道を行う黒田玲奈と福岡南高校。東松高校で磯山とともに行ってきた剣道との違いに悩む甲本早苗。スポーツと武士道の対決だ。より強烈なライバル出現。なよなよ剣道の甲本も黙っちゃいない。<だから…勝つの。私が>、ググっとくるぜ。前作からさらに盛り上がる。<武士の仕事は、戦いを収めることばい>。真剣な中にユーモアあり。このシリーズおもろいぞ。第3弾『武士道エイティーン』乞うご期待。ンメェェァァァーッ! |
〓 | いや、愉快、愉快。想像した以上に面白かった。主人公・坊ちゃんは、真っ直ぐと言うか、気が短いと言うか、思慮が足らんというか。わかりやすく、愛すべき人間だ。それに比べて教頭の赤シャツは、ごちゃごちゃ考えるし、隠すし、嘘をつくしで、嫌な人間まるだしだ。こっちもわかりやすく、嫌な人間だ。青春ドラマの典型。時々読んで心を洗っておくのにいい。 |
〓 | 表題作『幻談』は2つの話。山男たちの仲間の死、浮かび上がる十字架の話。釣り師が溺死人から得た見事な釣り竿の話。同じく表題作『観画談』は、苦労して勉学に励み、やっと周りからの尊敬を得られた大器晩成先生。無理をして身体をこわし療養の旅に出る。そこで無数の人々が生活をしている画と出会い、出世欲が消えたのか平凡人として消える。『骨董』、生活が満たされれば趣味に生きる。自分の満足の為に金を払う。骨董の世界が特にそうだ。満足の形はいろいろ。『魔法修行者』、魔法修行者であった九条植通(たねみち)、信長、秀吉に負けない天狗であった。『蘆声』、釣りに来た少年の哀しくも素直な心に打たれる。どの話も知識の多さに驚くが、さらりとまとめる語り口が心地よい。 |