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08.12.7
武士道シックスティーン 誉田哲也
文芸春秋

 中学生で剣道に打ち込む磯山香織。その打ち込みようは半端ではない。中学生で全国2位になっているが、勝ち負けに異常にこだわり、町内の大会で同じ中学生に負けると、そいつを追って同じ高校に入学する。学校の休み時間は、宮本武蔵の五輪書を片手に鉄アレイで鍛錬するというつわもの。そのライバルが西荻早苗。日本舞踊から剣道に転じた変わり者。この西荻こそが、かつて磯山を負かした相手なのだ。正反対の性格、剛の磯山に対し、柔の西荻。ピリピリした一途なプチ剣豪の磯山がかわいい。その磯山が勝つことだけの剣道に悩んで、勝ち負けだけでない西荻の剣道に近づいていくのだが、高校生にしちゃ早熟。丸くなるのがちと早いぞ。2人の友情もいいが、磯山の剣豪ぶったキャラがよかったのに、と思った。



08.11.22
門 夏目漱石
新潮文庫

 『三四郎』、『それから』、『門』と三部作の最後なんであるが、なんかまったりとしたもんになっている。物語に過激なところはなく、主人公の宗助は過去に友人から奪った女を妻とし生きてきた。その友人が久々に宗助の前に現れそうになると妙にそわそわとする。そして禅寺に行くのだが、悟りを開くまでには行かない。悟りを開かないのが現実っぽいとも言えるが、なんか良くわからん話であった。



08.10.5
マノン・レスコー アベ・プレヴォー
新潮文庫

 これはまた凄い恋愛小説だ。どこが凄いかって、主人公マノンの天然なおおらかさ。そして騎士グリュウの決してあきらめないしつこさだ。多くの男どもを惹きつける魅力がマノンにはあった。おかげで悪評が立ち、父親や友人がグリュウとマノンを引き離そうとする。しかし、マノンの前には無力だ。マノンに恋心を寄せるオヤジを騙したとして、2人とも牢獄に入れられるが、友人の助けをかりて脱出。ついにマノンはアメリカに送られるはめになるが、グリュウはついて行く。そこでマノンと正式に結婚しようとするが、マノンに魅せられたやつが阻止しようとする。最後は壮絶なマノンの死。グリュウも死をいとわなかった。徹底的に恋を貫いたグリュウ。後悔はなかったろう。



08.9.27
ゴルフ巧くなる人ならない人 江連忠
講談社+α新書

 今女子ゴルフが人気だ。その筆頭が宮里藍、上田桃子、横峰さくらだ。その上田桃子他、諸見里しのぶらを育てたのが江連忠である。男子の片山晋吾のコーチでもある。今最も注目されているコーチだ。彼が見てアマチュアの悪いところは、腕や手の力を使いたがり、<力でクラブフェースをコントロールしようとしている>、のだそうだ。<@クラブを強くにぎる、A打ったあとに右手でクラブを持っている、B特にパットで頭が左に動く>のがアマチュアの3大悪癖という。その他、目的が明確でなく目標とごっちゃになっている等、なるほどと思えるところが多い。そして彼自身プロゴルファーの一面は絶対に捨てる気はないという。現代の日本のゴルフ界を支えている男だ。



08.9.20
桑田真澄 ピッチャーズ バイブル 石田雄太
集英社文庫

 そいうや桑田真澄って巨人に入団してからは長年に渡って活躍したイメージがなかったけど、やはり一番油の乗る10年目で怪我をして寸断されていた。手術からリハビリ、そして再びマウンドに立つ。そこが桑田真澄の真骨頂だ。何度も挫折するもできることをやり続ける。努力して成果が出る経験をした桑田は「努力が楽しい」と言った。常に悲観的だと言う桑田だが、やると決めたらとことんやる。ある意味マイペースなので誤解をまねきやすい。表の努力だけでなく、掃除等の裏の努力もする。そのお蔭で打たれたホームラン性のボールが外野フライになるのだと言う。思い続けていたメジャーでの登板も果たし、現役は引退したが、これからの彼の活躍も見逃せない。



08.9.6
ジーン・ワルツ 海堂尊
新潮社

 今回の主人公は、桜宮市の東城大学病院を卒業し、東京の帝華大学医学部産婦人科学教室に在籍しているの曾根崎理恵。「マリアクリニック」病院の非常勤の医者でもあり、不妊治療(セックスなしで妊娠させる医療行為)のスペシャリストである。この「マリアクリニック」に5人の妊婦が通っている。それぞれが訳ありだ。堕胎希望、帝王切開、人工授精、代理母等。問題はそれだけではない。生まれてすぐに死ぬ脳のない子、手足のない子等、DNAの受け渡しが少し間違うこともあるのだ。この本を読むと、通常出産で、五体満足に生まれてくる事がいかに奇跡的な事であるのかがよくわかる。だからこそ無事生まれてきた事に感謝の気持ちがわくんだろう。妊娠2ヶ月までの胎児の生殺与奪権は母親にある事も本書で知った。



08.8.25
それから 夏目漱石
新潮文庫

 その後の三四郎でないが、人間の成長過程における続き物と言えるかもしれない。主人公・代助は、過去の無意識の偽善を清算しようとする。かつては友人・平岡と美千代の結婚の斡旋をしたのだが、その妻を奪うのだ。その代償は大きい。親、兄弟から見放され、自分一人で生きていく道を選んだのだ。いいのか悪いのかを超えて、進む覚悟を決めたのだ。人間やはりどうしょうもない時がある。わがままかもしれない。でもそれが完全燃焼できることであったのであろう。代助はそれに賭けた。ある意味、代助の出発点であるとも言える。その後どうなったのか?と気になる。次は『門』だ。



08.8.4
パーフェクト・プラン 柳原慧
宝島社文庫

 第2回『このミス』大賞受賞作だそうだ。なかなか面白かった。痛快で、ラスト向かってどんどん盛り上がって爆発!プラスαの不気味な締めもいい。驚いたのが、著者が女性だということ。読み進めて行く途中で、あとがきをチラと見るまでは、男だと思っていた。パソコンに詳しい人間や、歌舞伎町のちょっとやくざな男たちを描いくのが意外であった。主人公の一人が代理母というのは納得であるが。クリスティーとはまた違った、豪快なエンタメミステリーだ。



08.7.30
三四郎 夏目漱石
新潮文庫

 熊本から東京の大学に入学した小川三四郎。いろんな人との出会いがある。先ず車中で知り合った女との名古屋での一泊。もちろん手を出す三四郎ではない。東京に着いてからは、理科大学で研究に没頭する野々宮宋八と妹のよし子。級友でお調子者の佐々木与次郎、独身で達観的な広田先生、画家の原口、そして知性派の里見美禰子。自ら積極的に動く三四郎ではなかったが、美禰子に対しては彼なりのアプローチをしていく。美禰子も気があるのかないのか、わけのわからん事を口走り、三四郎を煙に巻く。ストーリー自体はなんてことない。その後の三四郎がどうなっていくのかが読みたいと思う。次は『それから』だ。



08.7.21
きみはなぜ働くか。 渡邉美樹
日本経済新聞出版社

 飲食店を中心に多角経営している「ワタミ」の創業者である。創業者ともなるとやはり考えがしっかりしている。先ずはサービス精神を社員に叩き込む。自分の飲食店に使う野菜は、自分でつくる。肉は牧場を持って牛を飼育する。そして、ボランティアにも進出。何やらやり手、って感じだが、タイトルにもあるように何の為に働くのか(たくさんの「ありがとう」をもらう)を素直に実践しているのだと思う。大きく成功するのは、損得を離れたところにあると思う。考えもシンプルで力強い。頭が下がります。



08.7.14
こころ 夏目漱石
新潮文庫

 アガサ・クリスティーも言っているように、殺人の動機はやはりというか、残念ながらというか金の問題が多い。『こころ』の先生も同じように言う。普通は善人でいる人も、金の問題となると突如悪人になる、と私に諭すのだ。だから父親の死ぬ前に財産のことはきちっと片付けておけ、と。父親か危篤で郷里に帰っていた私は先生から自身が抱えていた暗い過去を書き綴った手紙を受け取る。同じ下宿に住む同級生のKが、下宿屋のお嬢さんを好きになったと先生に告白した。Kが来る前からお嬢さんを好きだった先生は、Kの告白時には何も答えられず、その代わりKのいない時に下宿屋の奥さんに「娘さんを下さい」と頼むのだ。快く応じる奥さん。自殺するK。娘はKの思いは知らずに先生と結婚する。そして先生も…。というお話。面白かった。漱石は<人間の心の研究をする者はこの小説を読め>と広告文に書いたそうだ。



08.7.6
悩む力 姜尚中
集英社新書

 漱石のやれなかった事をやる、という文章をちらと見たので、何をやるのかと思いきや、「横着ものになる」ということであった。しかし、それは真面目に悩んだ末に横着になるということで、初めから横着者である訳ではない。夏目漱石の作品に触れながら、自分自身と現在の人間に共通する悩みを浮き上がらせる。何の為に働くのか、生きる力とは、というストレートな問いに真面目に答えている。著者の考える働く意味とは、「他人からの※アテンション」と「他人へのアテンション」であるという。(※アテンション:ねぎらいのまなざしを向けること)。また生きる力とは、他人との「相互承認」にある、と言っている。真面目な著者が非常にいい。



08.7.6
オタクはすでに死んでいる 岡田斗司夫
新潮新書

 「オタクはすでに死んでいる」とは、オタクというものが特別な何物かではなくなって、埋もれてしまった、と言うこと。その昔、オタクは特別な、怪しい集団であったのだ。オタクには、第一世代の貴族主義、第二世代のエリート主義、そして現在の、第三世代「自分の気持ち至上主義」となった。大人は幼稚で、お互いの「子供な部分」を相互ケア。オタクだけではない、今の日本人が大人な部分が欠如している。著者の提案は、「これからのオタクの生きる道」及び「ストレス最小で幸福最大の妥協点」。簡単に言ったら、もう少し大人になれよって事か。



08.7.6
バカの壁 養老猛司
新潮新書

 話してもわからないことがある。という解説。少しわかる、よくわかるとは違い、全くわからないことがあるのだ。それを「バカの壁」と著者は呼んでいる。人を動かすのも相手がどれくらいバカかというのをわかってなけりゃならない。脳が大きくなったおかげで、入力されたことに対して出力するだけでなく、自分で入出力をし、余計なことを考えるようになった。そして、身体を忘れていった。仕事が専門的になって入出力が限定される。十分寝て、無意識の時間をしっかり取りなさい。人の事を考えて自分の壁を壊しなさい等々。常に「人間であればこうだろう?」というのが著者の言う普遍的な原理。これは納得。



08.6.21
マギンティ夫人は死んだ アガサ・クリスティー
クリスティー文庫

 エルキュール・ポアロは愛のキューピットでもある。今回もあるカップルの結婚を願うというか予想する。本書以外でも何度か、うまくいきそうな2人ならばキューピット役となる。ポアロは犯人を見つける時も、その人間の性質(たち)を良く観る。そのようにしてベストカップルを浮かび上がらせるのだ。人間観察のなせる技だ。なつかしい友ヘイスティングズの名前が出てきたので、ご本人登場かと期待したがさにあらず。しかしもう一人、なつかしい推理小説作家・アリアドニ・オリヴァが登場する。今回の話はちとややこしいので、再読するかな。



08.6.21
エースの品格 野村克也
小学館

 野村の考える、真のエースとは。古くは杉浦、稲尾、江夏、最近ではヤクルトの伊藤智仁を上げている。現役では、ダルビッシュ有、川上憲伸。エースの品格がないのは、誰とは言わんが、力はあってもチームワークを乱す独りよがりのピッチングをしたり、一言多かったり、損得を重視したりする奴ということになる。野村自身は、「カベ」と呼ばれる使い捨てのキャッチャーとして南海ホークスへ入団。しかし<心技体、そして頭脳のすべてを捧げてきた>という。何の為に野球をしているのかを考えられるかどうか。結果ではなく、プロセス重視。これが品格を生むのだ。是非とも全日本の監督になって欲しい。



08.6.8
いつまでもデブと思うなよ 岡田斗司夫
新潮新書

 これは面白い。あのオタキングと呼ばれた体重117kgの岡田斗司夫が67kgになった。完全に別人だ。それもびっくりしたが、この本の面白さはその減量方法である。食ったものをこまめに記録していく「レコーディング法」というやり方だ。先ずは食べるのを我慢しないで、間食などこちゃこちゃしたものまで、全部記録してくのだ。これがけっこう効いたらしい。腹が減ってなくとも食べている自分がそこにいた。というころだ。満腹感は食べた後タイムラグがあるので、少し待つ。これがコツ。その他はカロリー計算を楽しむ。成人男子1日1500kカロリーだ。



08.6.1
誰も知らない世界と日本のまちがい 松岡正剛
春秋社

 『17歳のための世界と日本の見方』の続編。『17歳…』が文明の始まりから近代までで。本書は近代・現代の世界と日本。エリザベス女王は織田信長の1歳上。近代では多くの点でイギリスが台頭してくる。国家と何か?列強に加わろうとした日本の運命は?ダーウィンの進化論は社会にも当てはまるのか?リスクが金儲けとなる現代、日本が進むべき道を示唆している。それは世界基準に安易に合わせるのことではない。日本流のやり方、その代表ととして「苗代」を上げている。いったん蒔いた種を「苗」にして、それをふたたび田植えで移し替える、というもの。ちょっと育ててから本格的に田んぼに移し替える。一気にいってしまわない。多様性を失わないよう、様子を見ながら大事に育てるのだ。



08.5.24
少女には向かない職業 桜庭一樹
創元推理文庫

 この間トップランナーに出演していた桜庭一樹。女だった。もちろん格闘技もやらない(と思う)。着物姿もよかった。で本屋で見つけたので読んでみた。なかなか面白い。読める本はストーリーが面白いというのもあるが、文章を読んでいて面白いというのもある。これ重要。この本は後者だ。文章を読んでいて面白いのは、読み手が次の言葉を容易に想像できる、というのではなくでちょっと捻ってあるというところ。そうそう、そう言って欲しい、と思えるところ。これ重要。宮乃下静香からばりばりの殺人者に認められた大西葵。おめでとう。



08.5.19
007/ロシアから愛をこめて イアン・フレミング
創元推理文庫

 大好きな007映画の中でもこの『ロシアより愛をこめて』は一番の名作であると思う。ビデオ・DVD等で何度も見たので、原作と映画はどんなに違うのかが興味のあるところであった。細かいこと言うが、映画の題名は「〜から」ではなく「〜より」だ。映画のシリーズでの二大美女ダニエラ・ビアンキ扮するタチアナ・ロマノアは、原作の方がぐずぐずだ。ちなみに、もう1人の美女は『死ぬのは奴らだ』のジェーン・セイモアだ。余談だが、年取ってからは美女度はジェーン・セイモアがリードしている。『北北西に進路を取れ』ばりのヘリコプターに追いかけられるシーンは原作にない。映画のラストではボンドとロマノアが仲良くゴンドラに乗って終わるが、原作の方は、ありゃりゃりゃりゃー、だ。ある意味刺激的であった。



08.5.11
あぁ、阪神タイガース 野村克也
角川書店

 試合後のインタビューなんかではわかりにくい野村監督の本音がじっくりと聞ける。阪神の監督をしていた時代は思い出すのもいやな三年間であったと言っているが、実はいろいろ言いたいことはあったのだ。なんせその後の星野監督になってから急に元気づいたのだから。伝統の重みを感じる巨人と、その重みを感じられない阪神との差はどこにあるか、星野監督のどこが良かったのか、また岡田監督に替わった今の阪神はどうかなど、野村監督の評価は面白い。自分と星野監督の違いに言及している箇所では、星野にあって自分にないものの中に「政治力」を挙げている。<「きみの話はもっともだが、抽象論が多いのだよ。星野の話はつねに具体的なんだ」>とオーナーに言われたそうだ。ちょっと意外な一面であった。でもやはり、プロ野球の解説を一番聞いてみたいのが、野村監督だ。今楽天はAクラスで頑張っている。楽天を応援するというよりも野村監督を応援する。



08.4.29
満潮に乗って アガサ・クリスティー
クリスティー文庫

 <およそ人の行いには潮時というものがある、うまく満潮に乗りさえずれば運はひらけるが、いっぽうそれに乗りそこなったら、人の世の船旅は災厄つづき、浅瀬に乗り上げて身動きがとれぬ。いま、われわれはあたかも、満潮の海に浮かんでいる、せっかくの潮時に、流れに乗らねば、賭荷も何も失うばかりだ。シェイクスピア『ジュリアス・シーザー』(四幕三場)>。という訳だ。ところで賭荷は「とに」か?今回のポアロ、ラストで若者3人を集め、諭すように事件の全豹を語るところは父親のようだ。エピローグでのリン・マーチモントの男の乗替えっぷりにはちょっと引くが。まあご愛嬌ってことで。



08.3.24
ブラックペアン1988 海堂尊
講談社

 『チームバチスタの栄光』に始まるこのシリーズ、今回もなかなかいいぞ。1988年まで遡り、『チームバチスタ…』での病院長・高階は、新兵器を持ち込んだ講師として登場。まるで『ゴッドファーザーPARTU』てな趣だ。あの田口公平や、『ジェネラル・ルージュの凱旋』の速水なんてのも学生としてチョイ役でしかない。藤原さんはバリバリの看護婦長やし、昼寝の猫田や初々しい花房も登場する。まぁうまいこと話をころがして、絡ませていきよるなあ。でもこの物語、単独でも面白い。主人公は駆け出しの外科医・世良雅志。そして外科のトップ・佐伯教授。腕の立つ気障な野郎・渡海征司郎。一番アカデミックで前衛的な高階権太が活躍する。何故ブラックなペアンなのか。迫力のあるラストだ。老獪な佐伯教授、実はなかなかいい奴であったのだ。



08.3.16
草原の椅子(上)(下) 宮本輝
幻冬舎文庫

 番組名は忘れたが、宮本輝が最近TVに出ていた。もっとナヨットした感じかなと思っていたが、意外に泥臭い感じがよかった。彼の小説には突飛な人間は出てこないが、味のある人間がそこにいる。『草原の椅子』の主人公はカメラメーカーに勤め、開発から営業へと仕事をしてきた男、遠間憲太郎。年齢は50歳。妻とは離婚し、娘と生活をともにする。仕事で出会った叩き上げのカメラ屋・富樫との友情を深めつつ、焼き物屋の女主人にはプラトニックラブだ。娘の男関係を心配し、母親から虐待を受けた他人の子供を引き取る。そしてフンザへの旅。人生50年過ぎた後もやるこたぁいっぱいある。この本は人間愛に溢れている。



08.3.9
真実のゴルフ 坂田信弘
幻冬舎文庫

 坂田信弘のゴルフ上達の書。単に技術解説にとどまらないのが、坂田信弘の真骨頂。なるほど、と思わせるやり方がうまい。経験に裏打ちされた具体的な数字を示していること。言い回しに独特のリズムがあること。そして何よりも、坂田信弘の世界がそこにある。面白いものは小説だけではない。やはり物書きのプロだな。ゴルフ界の金八先生。



08.2.5
殺人は容易だ アガサ・クリスティー
クリスティー文庫

 これはやられたな。素人探偵が最後につきとめた、と思った意外な真犯人。まったくのせられた。ここに書くのも今回の犯人は、『愛国殺人』の犯人に似ているが、違っているのはこういうとこでムニャムニャ〜。なんて考えたりしたが、そのわりに未だ多くのページが残っているなー、なんて。最後まで読んで、あぁ、そーですか。



08.1.13
ハル、ハル、ハル 古川日出男
河出書房新社

 表題作『ハル、ハル、ハル』は、冒頭何やら期待させられる。全ての物語の続編であるってとこ。どんな続編からと思いきや。『スローモーション』、この日記には笑わせられる。一日は動詞でできている。命令形で行動する日。否定形で行動する日。『8ドッグズ』は、南総里見八犬伝。



08.1.5
五匹の子豚 アガサ・クリスティー
クリスティー文庫

 ポアロが16年前に起こった殺人事件の真相究明を依頼された。殺されたのは著名な画家。殺したのはその妻。依頼主は娘である。ポアロはその時の関係者に事件の供述を聞いたり、書いてもらったりする。それぞれが思い込みによる間違い、または嘘があるものだ。ほんの些細な、事件に直接関係ないけど何か腑に落ちない事、そこから解決の糸口をつかむ。解釈を変えることで、全ての言動がすっきりと収まるようになる。ポアロの得意技が光る。