「もしもし、えっちゃん?おはよう」
「おはようございます。夕べはすみませんでした」
「今、下にいるんだけど」
「えっ、私も今出かけるところだったんです。朝からどうしたんですか?」
「どこかへ出かけるの?」
「ハローワークに」
「よかった、間に合って。一緒に会社に来てくれない?どんな会社か見てくれるだけでいいの」
「それは、困ります。お断りします」
「いいから、いいから。とにかく乗って」
「おはようございます」
「ああ」
「なんであんたがいるの!?」
「知るか。会長に聞いてくれ」
「私には無理だって言ったでしょう?学歴も資格もないし・・」
「俺の特訓に耐えられる自信も無いんだ」
「あんたのいじめなんか跳ね除ける自信はあるわ。だけど会長に迷惑が掛かるだろうから・・」
「付き人くらいの気持ちで、一緒に行動してくれたらいいのよ」
「はぁ・・」
「ここが社長室。こっちが会長室。とにかく入って。ここがあなたのデスク。こっちが私の部屋」
「そんな、勝手に・・いったい何をすればいいんですか?」
「私はする事があるから、呼ぶまで座ってて」
「・・・」
(ふー。何もする事がない。電話もかからないし、誰も訪ねて来ない)
仕方なく、その辺りの片づけをしたり、拭いたり、キッチンを磨いてみたり・・・
そんな事しかする事が無かった。
「これを社長室に持って行って」
「(えっ。社長室?)はい・・・」
「社長に、返事をもらって来る様に」
「はい・・。行って参ります」