「まぁ、お坊ちゃん。こんなに酔って。マスターありがとうございます」
 「構いませんよ。珍しくここ何日か、ずっとうちに来てたんですけど、今日は、飲み過ぎたみたいで・・。早く寝かせてやって下さい。じゃぁな」
 「ありがとな」

 「もうこの子は・・ぎりぎり間に合ったわね。この人がこの前話した・・」
 「先日は・・、母が大変・・お世話になったそうで・・ありがとう・・ございました」

 『あー!』
 「あんた・・」
 「あんたって言うな」
 「あなたたち、知ってるの?」
 「知ってるも何も。この前話した“最低男”」
 「えー!?」
 「お前、ここで何してるんだよ」
 「裕。失礼よ。この前話した、親切にしていただいた人」
 「この最低女が?」
 「じゃぁ、あんたが、いい歳して、毎晩遊び歩いてる問題児の息子?」
 「なんだと」

 「二人とも、止めなさい!いったいどうなってるの?」

 「今日は、お招き頂き、ありがとうございました。さようなら」
 「えっちゃん、さっきの話し考えてね」

 「さっきの話って?」
 「私の秘書を頼んだの」
 「冗談じゃない!会社で毎日、こいつと顔を会わせるなんて御免だ」
 「こっちこそ。きっぱりお断りさせていただきます」

 「そんな事言わないで、考えてあげて下さい」
 「Hさん、美味しいお料理ごちそうさま。二度と食べられないのは残念ですけど」

 「さっさと帰れ」

 「言われなくても帰ります。その前に、忘れ物!」

 ビシッ!思い切りひっぱたいてやった。

 「今度会ったら殴ってやる、って言ったでしょ。いつまでもお母さんに心配かけるんじゃないのよ!」
 「失礼します」
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