「裕、いったいどうなってるの?」
 「お坊ちゃん大丈夫ですか?」
 「・・・」

 「でも、奥様。昔を思い出しましたね。お坊ちゃんがまだ小学生の頃・・」
 「ああ、そう言えば・・。よく、女の子とお母さんがいらして“うちの子をいじめないで”って」
 「そうでしたよね。お坊ちゃん、他の子には優しいのに、好きな女の子だけはいじめて・・」
 「そうそう。それで玄関でその子に“大嫌い!”って、ひっぱたかれて・・失恋。裕、小学生の頃から成長してないのね」

 「どういう意味だよ」
 「この前も、えっちゃんをいじめたでしょ?泣きながら電話してきたわよ。その“最低男”が裕だったとは・・」
 「あいつが憎らしい事ばかり言うから・・」
 「女の扱いには慣れてるんじゃなかったの?何で、えっちゃんだけいじめる訳?」
 「別に理由なんて無いよ。いじめてるつもりもないし・・」

 「だったら秘書にしてもいいわね」
 「それだけは勘弁してくれよ。別に会長がいるほど大きな会社でもないんだし、俺がいるんだから、仕事しなきゃならないわけでもないだろ?もう引退すればいいじゃないか」
 「私は、いつまでも現役でいたいの」
 「だったら、秘書じゃなく、付き人を募集して、買い物するなり、パーティに行くなりすればいいんじゃないか?そうしたら、お袋のわがままに付き合って、長く勤めてくれる人が見つかるよ」

 「私は、あきらめませんからね。えっちゃんを秘書にして、裕には、語学の先生をしてもらいますからね」
 「そんなのいつもみたいに、語学教室へ行けばいいじゃないか。何故俺が教える事になる訳?」

 「早い方がいいわね。明日、えっちゃんに会社を案内する事にするわ。裕、いいわね。朝、彼女を迎えに行くから、よろしく」
 「何で俺が行かなきゃならないんだよ」
 「会長命令よ」
 「はいはい。解かりました。もう寝るよ。頭、痛くなってきた」
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