「今日、パパの誕生会をするから、お洒落してホテルに来てね。私達はママとお母さんと先に行ってるから」
「パパこっちよ。ママと私達からのプレゼント。開けて」
扉を開けるとウエディング姿のお前がいた。
「恥かしいからいいって言ったんだけど・・」
「裕、どうしたの?何か言いなさいよ」
「ああ・・(とっても綺麗だ)」
「入籍だけだったから、写真くらいあってもいいでしょ?お母さんのウエディング姿見たいかな?と思って・・」
「・・・(もちろん見たかったよ)」
「と言っても、全部ママが出してくれたんだけどね。私達は企画だけ」
「パパ聞いてる?」
「・・・ああ。最高のプレゼントだ。ありがとう」
たかが写真を撮るだけなのに、胸が高鳴り、緊張し・・ウエディングドレスというのは不思議な力を持ったドレスだ。
言われるがまま撮り終え、レストランに行くと見知らぬ男が待っていた。
「お父さん!Kさんと結婚させて下さい。お母さんの様にきっと幸せにします」
「ちょっと待って。いったいどういう事だ?」
「裕、そういう事。もう一つのプレゼントよ」
「みんな知ってたのか?」
「そういうものよ。周りから固めていって、最後に父親に許しをもらう・・」
「Kが幸せになるのなら、パパは何も文句はない。だけど、泣かせるような事をしたら絶対に許さない」
「パパ、それは大丈夫。パパみたいな人と結婚しようと思っていたから、一番にパパを育てたママに会ってもらって、パパを一番よく知っているお母さんからも、OKをもらった」
「お母さんなんか“パパよりかっこいいかも”なんて言ってたよ」
「そんな事言ったのか?」
「でも愛してるのはパパだけ」
「もう〜やめてよ。人前で」
「でも淋しくなるなぁ」
「まだ私がいるからいいでしょ?でもどうせパパは、お母さんがいてくれたらそれだけでいいんでしょ?」
「父や祖父母にも花嫁姿を見せてやりたいから呼んでいい?」と言うので招待状を送り、喜んで出席させて頂くとの返事をもらった。
初めて“夕”でお前に会った日、お前もこんな気持ちだったのだろうか?
“父親は父親”と解かってはいても、なぜか淋しい気持ちになった。
「でも、バージンロードはパパと歩きたいから、練習しておいてね」と言ってくれた。
彼には悪いが、今日俺は、娘の手を取り、“花嫁の父”の気持ちを存分にかみしめた。
本人たちの希望で、媒酌人をしてくださった、婿殿の会社の森村社長の挨拶と、祝辞は娘の会社の松浦社長のみで、後はパーティを楽しんでもらいたいからという事になった。