「そう。南極とか北極で何日も吹き荒れる嵐よ。やっぱり不思議よね。そんな名前の人なんていないのに、ブリザードさんって話してる。そんな感じのする人だったな。ブリザードが過ぎるのをじっと待っているって感じで、好きな人に告白も出来ずに悩んでた。メールって相手の事が解からないから、嘘もつけるけど、つい本音を言っちゃうって事あるでしょ?」
「ああ・・」
「ブリザードさんの好きな人ってね、どうやら彼に負い目があるみたいなのね。彼は、そんな事は関係ないって言うんだけど・・。それに今は、彼女の事をすごく愛してるけど、彼もね、女性遍歴が凄いらしくてね。告白しても、彼女は受け入れてくれないって。そしたら、友達も好きな人も一度に失うから、どうしても勇気が出ないって。そんなの言ってみないと解からないじゃない?友達が恋人になるかもしれないし・・そう思わない?だから、言ってあげたの。“彼女が負い目を忘れるくらい温かい心で包んで、彼女があなたの愛を信じられるように、彼女だけを、心から愛してあげたらいいだけなんじゃないの?”って」
「そうだな・・」
「そうよ、簡単な事よ。ブリザ−ドさんも解かってくれて、告白するって。断られても、あきらめないって。だから、もう相談しなくても大丈夫だから、さようならって」
「そいつの事、好きだったのか?」
「ううん。好きな人の事、話してた」
「そんな奴、いるのか?」
「片思いのね」
「片思い?」
「そう、片思い・・。ブリザードさんの彼女が、どんな負い目を感じているのか知らないけど、私もその人に負い目を感じてるから、彼女の気持ちが解かるような気がする」
「お前に負い目なんか無いじゃないか」
「あるわよ。負い目も秘密にしてる事も。だから、片思いでいい、それ以上好きにはならないってずっと思ってきた。でもね、ほらよく言うでしょ。落ち込んでる人を励ましてて、逆に自分が励まされる事があるって。私も、ブリザードさんから逆に励まされて、彼と約束したのね。告白は出来ないけど、もう忘れるなんて言わない。好きだという気持ちに嘘をつくのは止めるって」
「告白したら?そいつに伝わるかもしれないぞ、お前の気持ち」
「それはないわ」
「なぜ?」
「ブリザードさんは彼女を心から愛してるけど・・」
「そいつは、お前を愛してないのか?」
「だから、片思いだって。友達くらいに思っていてくれると、嬉しいんだけど・・・」
「そっか・・そろそろ部屋に戻るか?」
「そうだね。海はいいけど、潮風でベタベタ。それに砂まみれ。早くシャワーしないと気持ち悪い」