“土地勘がないのでホテルのレストランでいいですか?”という事で、行って見るともう一人の人がいた。
「初めまして。美崎由です」
聞くと、その人は、ソンジェさんの通訳として同行している事務所のスタッフの人で、私が通訳の人と思っていたのは、日本で企画会社をやっている社長さんだそうで、彼らは友達同士だそう。
ソンジェさんはプロデューサーとして働いていたけど、上司と衝突して会社を辞め、独立。
社長と仕事でこの街に来たらしい。
「由さん、お歳は?」
「女性に歳を聞くのは失礼ですよ。韓国の人は、年上とか目上の人に礼をつくすって聞いたけど、どう見ても私が一番上みたいだし」
「嘘でしょ?」
「あっ今、丁寧語にしなきゃとか思ったでしょ。やめてくださいね」
「解かりました」
「由さん、ご結婚は?子供さんはいるの?」
「バツイチ、娘が二人います」
「あーそうなんだ。僕は結婚してるけど、ソンジェは独身だよ」
「ソンジェさんもバツイチなの?子供さんは?」
「ソンジェはバツイチじゃないよ」
「ふーん。独身主義者かプレイボーイか、それともオカマちゃんだったりして?」
「冗談言わないで。ソンジェは、お父さんを早くに亡くし、苦労して育ててくれたお母さんが、病気で倒れて、ずっとその看病をしている間に、婚期を逃しただけだ。そのお母さんも亡くなって・・・」
「ごめんなさい。冗談とは言え、失礼な事を言ったわ」
「イイデス。キニシナイデ」
「でも、早く幸せにならないとネ。天国でお母さんも心配してらっしゃるわよ」
「ハイ」
「失礼だけど、なぜバツイチに?」
「それは。今日初めて会った人に話す事じゃないでしょ?」
「キキタイデス」
「通訳の人を通して話す事じゃないし、韓国語を話せるようになって、また会う機会があったらその時にね」
よくある社交辞令のつもりだった。