娘が、“お守りに”と付けてくれたソンジェのリングが、胸元で揺れていた。
何故こんなことに。
何故私を一人置いて。
あの日「側にいて」とわがままを言えば良かった。
ありとあらゆる後悔で、食事も摂れなくなり、昼も夜も、ぼんやりとしてやがて入院した。
けれど、“ソンジェの側に行きたい”と生きる気力さえ無くなった私は、日に日にやつれていった。
「お母さん、早く元気にならんと。今日は、ソンジェさんの四十九日やよ。お母さんが、そんな風やったら、ソンジェさん天国に行けないよ」
娘の励ましも、耳に入らなかった。
うつらうつらしていると、ソンジェの夢を見た。
『由、遅くなってごめん。こんなにやつれてしまって。ちょっと慣れるのに時間がかかっちゃったけど、もう大丈夫だ。もうすぐ由の所に戻るよ。だから、ちゃんとご飯食べて、よく寝て、早く元気になって。元気になってくれないと、僕が戻っても愛し合えないだろう?もうすぐ戻るからね』
「ソンジェ。待って」
「お母さん、声が出るように?」
「ソンジェが、戻って来るって言うてた。帰らんと」
「そんな身体では無理や。とにかく元気にならんと」
それからは、“早く元気にならないと”と、必死でご飯を食べ、眠るようになり、元気を取り戻した。
みんなは“ショックから立ち直れないでいるのだから、好きにさせよう”と、来週ソウルへ行くと言う社長に、同行させてもらえる事になった。