「とにかく座って」
 「由さんにまだ渡してなかったね」と社長は名刺をくれた。
 「ソンジェ、仕事の事、もう由さんに話したのか?」
 「いや、まだ」

 「由さん、○○に住んでいるなら、川下愛さんって知ってる?」
 「川下愛さん?」
 「さっき話してたでしょう?ネットで『初めての恋』っていう恋物語を書いてる“愛夢”って人なんだけど。その人が、川下愛さんなんだ」

 「その人がどうかしたの?何故社長が?」

 「彼女と契約したくて探しているんだけど。ソンジェに話したら“どうしてもドラマにしたい”と言って。色々調べて、この街じゃないかと探しに来たんだ」
 「ソンジェさんが・・・。じゃあこの前も?」
 「そう。でも見つからなかった」
 「小さな街だから、見つかると思ったんだがなぁ」

 「探さないと駄目なの?」

 「ソンジェは、見つかったらすぐに準備にかかれるようにと、いろいろな人を押さえているんだ。今回見つからなかったら、違約金だけでもすごい金額だ。馬鹿だろう?」

 「構わないさ。またイチからやり直すよ。由は、何も心配しなくていい。由は、僕に何も無くなっても側にいてくれる?」
 「ソンジェさんがいてくれればそれでいい」

 「おいおい、こんな時に・・・。由さん、本当に知らない?」


 「・・・・・この街の○○で、川下愛を探しても、見つからないわ」
 「どうしてそんなことが解かるの?引っ越した?」

 「この街に、川下愛なんていないもの」

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