ソンジェは即死だったそうで、私は、彼に守られ、軽症で済んだ。
私は泣かなかった。
彼のお葬式を済ませ、納骨堂に、二枚の写真を飾った。
(ソンジェ、私は大丈夫よ。お父さんやお母さんに、いっぱい甘えてね。私はもう泣かないから。あなたとの思い出があれば生きていける。だから、私の事は心配しないで)
彼と約束してお別れをした。
けれど、二度も彼を失ったこの街にも、あの部屋にも、住めなかったから、社長に会社を任せ、部屋は、売りに出してくれるよう頼み、荷物も処分してほしいと言って、日本に帰った。
サファイアとエメラルドのリングが胸元で揺れていた。
けれど、泣いてばかりで、朝も夜も、ぼんやりと過ごしていた以前と違い、ご飯も食べるし、みんなが驚く位、明るく過ごした。
彼が心配しないように、彼が心を残さないようにと。
そして、一つずつ思い出しながら、彼との思い出を書き始めていた。
ある夜、日本に帰ってから、一度も見なかった彼の夢を見た。
『由、ただいま。起きて、僕だよ』
そう言って優しくkissをし、私を抱きしめた。
朝、彼がいた頃のように、とても安らかな気持ちで目覚めた。
その日から、何度も彼の夢を見るようになり、「ちょっとソウルに行って来る」と、娘が止めるのも聞かずに飛び立ち、以前、ソンジェの事で相談に行った先生を訪ねた。