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  「天候不順」と「人間不順」

 近年は地球温暖化の影響か、ことのほか天候不順で、今年の二月の山梨県を中心とした局地的大雪などは、今まで経験のない異常気象でありました。教区内で申しますと、豪雨、雷雨、突風、竜巻などの局地的被害が増えてまいりました。まさに、天候不順、異常気象であり、例年とは違う様相であります。

 「不順」とは、順調でない、順序がくるう、道理に背く、という意味でありますが、本来の在り方ではないということでありますから、当然、生き苦しい、生きるのがつらい、しんどいということとなります。先日お会いしました長野の方は、「いやぁ、夜と朝はこたつで、昼間は暑くてクーラーですわ、体調がおかしくなって・・・」と言われておりました。
 しかしながら、「天候不順」で苦しんでいる私たち人間の有様をよくよく見てみますと、これもまさに「人間不順」となっているのではないでしょうか。その証拠に「生き苦しい、生きるのがつらい、しんどい」と言っては愚痴をこぼしながら生きているのではないでしょうか。

 では、人間の何が不順となっているのでしょう、今シーズン絶好調のプロ野球オリックスの西投手の言葉に学ばせていただきます。西投手は語っています。「昨年までは、ランナーを出すと崩れていました。そこで、今シーズンに入る前に先輩の金子投手に教えを請いました。金子投手は、ファーボールを出さないこと。ボールが続いても、真ん中に投げて打たせろ、打たせたら野手がいる。自分一人でなんとかするのでなく、野手を信じろ。とにかく苦しい時は、野手を信じろ。プロ野球選手だから一人でやろうとする、でもそれでは勝てない」というものでした。
 プロ野球選手といえば、みんな四番でピッチャー、その中でも特に優秀な選手たちです。野球のことなら他人には負けない自信と自負を持っているでしょう。しかしながら、その中でも極めるステキな選手は、「苦しい時は自分以外の選手を信じろ」と言っているのです。   

 俺が俺が、私が私がと、一人で生きていけると勘違いして生きようとすると、よけいに苦しくなるということでしょう。つまり、相互依存を忘れた自立は孤立ということなのです。なのに、私たちの生きざまは、まさになんでも自動的に「私が先」であります。本来は「他者が先(みんなによって私が成りったている)」なのにであります。
 「人間不順」はいったい何を生み出しているか。福井県の反原発リーダー小木曽美和子さんは、「人間が傷つく放射能を、自然じゃなくて同じ人間が生み出すことの問題ですよ」とおっしゃっています。

 さて、人間とは平気で自分の首を絞めるそら怖ろしい生き物でありましょうか、それとも、愛すべき尊い存在なのでしょうか。人間というものを知りつくされ、生ききられた仏様の、そして親鸞聖人の御教えに寄り添い、共に歩んでまいらなくては、もはやどうにもなりません。共に聞法の歩みをすすめてまいりたいと念じております。

合 掌(禿)



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