人間だれしも年をとっていきます。年齢を重ねるというのは人生経験を積むということですが、世阿弥はこれを「功」といい、人はこの功を積んで老いていくといい、あわせて、その功に安住すると人はまったく進展がなくなり、それを「住功」といって嫌っています。苦しみ悲しみながらひとつひとつ乗り越えてきたこの人生の経験に固執することを強く戒めています。 進展の「展」とは展開するということで、開かれていくということです。これはごつごつした人生という道を、あっちにぶつかりこっちにぶつかり転がりながら生きていき、その人生の痛み苦しみ悲しみのひとつひとつが、実は人の心の眼(まなこ)を開いていくということを意味しています。 |
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