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  「今、大切なこと」

 東京、練馬にあります東本願寺真宗会館の機関紙『サンガ』の取材で、大正大学教授の村瀬加代子さんにおめにかかったとき、痛烈な一撃をいただきました。というよりも、本当に大切なことを気付かせていただきました。
 インタビューの最後に「これから21世紀に向かって、われわれ宗教者になにかアドバイスというか、言葉をいただけませんか」とお尋ねしました。すると即座に「お話しされていることとなされていることが違わないようにしてください」と一言。

 仏様の教えだとか親鸞聖人の教えだとか、偉そうに評論家のように言ってはいるが、教えにあらざることを陰に隠れもせずに平気でやってすごしている私たちの有り様を見抜かれた言葉でありました。つまり、仏道を歩んでいながら、その歩みが人生となっていないということでありましょうか。

 何年か前に日本アカデミー賞の最優秀主演男優賞を「鉄道員(ぽっぽや)」で受賞した高倉健さんは、その表彰式で「生きるために俳優になりました。そしてたくさんの人に出会い・・・」ということばで受賞の喜びを語りはじめ、何十年という俳優人生からかもし出されるなんともしぶくて深くて味のある喜びの言葉でありました。
 働いて稼がなくては食うこともできず生きてはいけない、そのために俳優になったという意味であったと思いますが、私には「俳優という仕事で数多くの人物を演じ、そして多くの出会いに恵まれた、しかしそのことは同時に私自身がどう生きるのかということの確かめの歩みでもあり、尋ねていく歩みでもありました」と聞こえてきたのです。まさしく俳優道(俳優=人となる道)であります。

 今、生きている実感をいただくためにも、「生きることへの誠実さ」こそ必要ではないかと痛感いたしております。

         (かむろ)




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