細胞壁がない原核生物・・・細胞大型化や有性生殖の起源?

 

 

古細菌

テルモプラズマ綱 : テルモプラズマ目(テルモプラズマ属・フェロプラズマ属・ピクロフィルス属)

テルモコックス属

イグニコックス属

 

真正細菌

モリクテス綱 :マイコプラズマファイトプラズマ

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 細胞壁がない古細菌があります。

この特徴は、ユリアーキオータテルモプラズマ綱や、テルモコックス属

クレンアーキオータイグニコックス属、でみられます。

 

テルモプラズマMarine Group IIは、古細菌なのに、エーテル型ではなく、エステル型脂質の合成酵素を持ちます。

 

更に、テルモプラズマ綱テルモコックス属には、細胞融合するものもあります・・・

テルモプラズマが、真核生物のホスト細胞になった、という説もあります・・・

2個の細胞が融合すると、大きさが2倍になります・・・

これを繰り返すと、更に大きくなりそうですが・・・細胞の大型化に関係するのでしょうか?

そういえば、生殖細胞も融合しますが・・・有性生殖との関係はどうでしょうか?

 

ただし、真核生物は、クレンアーキオータに近いとされていますが。

 

尚、クレンアーキオータイグニコックス属は、真核生物と似ている所があるようですが、

細胞融合や、有性生殖の有無は不明です。

 

後、マイコプラズマが属す、モリクテス綱真正細菌でも、細胞壁がないものがありますが、

こちらは、寄生生活を送るためか、非常に小さいです。(最小は、ARMANです。)

細胞壁の欠損は、真核生物内での生活に特化しているためとされますが、自由生活性の種も存在します・・・

謎は深まるばかりです。

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テルモプラズマ綱

  テルモプラズマ目

テルモプラズマ属

フェロプラズマ属

ピクロフィルス属

 

古細菌ユリアーキオータ門に属す綱の一つです。

好気好酸性のテルモプラズマ等が知られますが、

メタン菌等、様々な生物を含むと考えられており、

ユリアーキオータ門としては、非常に多様な栄養形態を示す綱です。

 

細胞壁を欠損する種が多いです。

この特徴は、テルモプラズマ綱特有の性質であり、

古細菌の中では他に、ユリアーキオータに属すテルモコックス属

クレンアーキオータに属すイグニコックス属の、一部の種にしかみられません。

 

更に、容易に形態を変化させて、細胞融合します。

 

大規模な遺伝子水平伝播の形跡があり、

古細菌型ヒストンアクチンを持たず、代わりに真正細菌型のHUMreBを持ちます。

 

メタン生成経路や光合成経路も、他の生物から取得したと考えられています。

 

メタノマッシリイコックスは、メタン菌です。

 

テルモプラズマ等では細胞膜が丈夫になっていて、

Methanomassiliicoccus luminyensisは、二重の細胞膜を持ちます。

 

未培養系統のMarine Group IIは、海洋の有光層に存在し、光合成型ロドプシンを持っています。

更に、古細菌でありながら、エステル型脂質の合成酵素を持ちます。

テルモプラズマ綱

 

テルモプラズマ目

テルモプラズマ属

フェロプラズマ属

ピクロフィルス属

 

テルモプラズマ綱に属す、古細菌です。

好気性、好酸性で、多くは細胞壁を持ちません。

非常に低いpH環境に生息し、全生物中最も好酸性が強いことから、超好酸菌ともいいます。

 

強酸性の噴気孔等によく分布します。

非常に強い好酸性を示し、その至適生育pH0.73です。

生育範囲は、pH 04の範囲にあるものが多いです。

好熱性は比較的低く、メタン菌、高度好塩菌を除く既知の古細菌としては、最も低い温度に成育することができます。

 

生育環境以外の特徴としては、

DNA結合タンパクとしてヒストンを持たず、真正細菌型のHUタンパクを所持していること、

ピクロフィルス科を除いて細胞壁を持たず、細胞融合性を持つこと等があります。

 

偏性好気性の従属栄養生物が多いですが、

最終電子受容体として硫黄を利用できるもの(テルモプラズマ属)、

第一鉄を酸化して独立栄養的に増殖できるもの(フェロプラズマ属)もいます。

 

細胞壁を欠くため、形態と大きさは非常に多様性に富んでいます。

 

鞭毛は、テルモプラズマ属は持ちますが、持たないものもいます。

 

この他にも未培養系統が知られています。

テルモプラズマ綱

 

テルモプラズマ属

テルモプラズマに属す、好熱、好酸、通性嫌気性の古細菌です。

細胞壁を欠く、等の特徴で知られています。

 

55 - 60°Cの高温、

pH 2という強い酸性下でよく生育し、

自然環境では、温泉や噴気孔等に分布します。

 

硫黄を好み、特に嫌気条件下では硫黄がないと生育できません。

好気条件下では、酸素も利用します。

通性嫌気性の偏性従属栄養生物です。

 

形態は非常に多様で、球菌、桿菌、糸状、板状、不定形等様々な形態をとります。

顕著な細胞融合性を示し、複数の細胞が集合した巨大細胞を形成します

 

コア脂質は、アーキオールとカルドアーキオールからなり、

またマンナンを有す糖タンパクや、リポマンナン等が多量に存在します。

 

細胞壁がないため、細胞膜は通常の生物よりも強固です。

 

この他、ユリアーキオータとしては例外的に、真核生物相同ヒストンを持っておらず、

真正細菌型のDNA結合タンパクである、HU相同タンパク ( HTa ) を持つ点でも、他の古細菌と区別されます。

 

また、テルモプラズマが融合細胞を形成することを土台に、真核生物のホスト細胞になった、という説があります。

ただし真核生物の祖先については、

分子生物学的な見地からユリアーキオータではなく、

原始古細菌か、クレンアーキオータである可能性が高いとされており、

テルモプラズマ属に近縁なピクロフィルス属が、細胞壁を持つこと、

テルモプラズマ属は、古細菌の中でも比較的派生的なこと等から、

テルモプラズマ属そのものが真核生物に進化したモデルは、否定的な意見が強いです。

ただし、真核生物の祖先が、テルモプラズマ様の生物だった可能性はあるようです。 トップ

 

尚、融合細胞は、内部に複雑な膜系を持つことや、細胞骨格の存在が示唆されています。

 

ただし、アクチン様タンパク質についてはMreBに近く、細胞骨格は真正細菌に近いもののようです。

テルモプラズマ目

 

フェロプラズマ属

テルモプラズマ目の、フェロプラズマ科に属す古細菌の属です。

 

非常に強い好酸性と金属耐性、細胞壁を欠くことを特徴とします。

 

強い酸性の黄鉄鉱鉱山廃水等に生息します。

 

主に好気条件で2価の等を酸化して、独立又は従属栄養的に増殖しています。

 

細胞壁を持ちません。

鞭毛はありません。

増殖最適条件は、30-50℃、pH1.5程度で、pH0での増殖も報告されています。

 

金属類に対する耐性が極めて強く、

高濃度の、カドミウム、ヒ素、亜鉛等の重金属含有培地で増殖が可能です。

テルモプラズマ目

 

ピクロフィルス属

テルモプラズマ、ピクロフィルス科に属す古細菌の一属です。

1995年に北海道の噴気孔で発見されました。

 

既知のものとしては最も好酸性の強い生物です。

生育pHは、pH -0.06 3.5で、最高マイナス0.06に達します。

生育至適pH0.7です。

PH 4以上では細胞膜を維持できないほど、強酸下の環境に適応しています。

 

尚、最も高いpH強アルカリ性)で生育できる生物は、Alkaliphillus transvaalensisという真正細菌です。

 

形状は1 - 1.5μの球菌で、

細胞表面にはS細胞壁)が存在し、

細胞壁を持たない、他のテルモプラズマ綱とは異なっています。

鞭毛は持ちません。

栄養的には完全な偏性好気性偏性従属栄養生物であり、

好気条件下で、アミノ酸等を酸化して増殖します。

 

ゲノムサイズ( P. torridus )は、155万塩基対、ORF1535ヶ所です。

 

生育温度は、4565℃(至適生育温度は、60℃付近)です。

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テルモコックス属

ユリアーキオータに属す、超好熱性古細菌です。

幅広い温度、pHで生息が可能です。

古細菌最多の27種が属します。

 

進化的にはユリアーキオータの基部付近で分岐していると考えられており、古細菌の原始的な性格を残しているようです。

 

深海や浅瀬の熱水域によく生育しています。

生育可能温度は40 - 103℃と幅広く、pH3.5 - 10.5と広いです。

 

Thermococcus barophilusの増殖温度は、48-100℃とかなり広く、最も生育可能温度に幅がある生物のようです。

 

T. alcaliphilus は、好アルカリ菌で、至適pH9(生育pH6.5 - 10.5)、超好熱性(生育温度56 - 90℃)です。

好アルカリ菌は、生育するために高pH条件とともに、ナトリウムイオンを要求します。

pHが高いと水素イオンが少なく、プロトン駆動力を形成することが困難であるため、

好アルカリ菌は、代わりにナトリウムイオンを利用した、独自のATP合成システムを持つ可能性があります。

 

T. gammatolerans等、強いガンマ線に耐える種もあります。

 

偏性嫌気性の偏性従属栄養生物で、多糖類(マルトース他)やアミノ酸を発酵しています。

この際生成する水素が増殖を阻害するため、硫黄等を利用して硫化水素として除去しています。

硫黄がなければ強い増殖阻害が起こり、種によっては増殖が停止します。

窒素酸化物や鉄化合物を還元剤として利用する種もいます。

 

直径1 - 2μmの球菌で、細胞壁はSで構成されます。

 

テルモプラズマ属の様に、細胞壁を欠き、多数の細胞が集合した融合体を形成するものも知られています。

 

多数の鞭毛を持つ場合が多いです。

 

ゲノムサイズは、2Mbp前後、ORF2000ヶ所前後です。

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イグニコックス属

クレンアーキオータ門に属す、偏性嫌気性グラム陰性不定形球菌の超好熱古細菌です。

I. islandicusI. hospitalisI. pacificusがあります。

 

ATP合成酵素を持つ外細胞膜(以前は、単なる外膜と思われていました)や、

ペリプラズム空間に、エネルギー代謝系と小嚢(内膜から派生します)を持つことが分かり、

真核生物との類似性が注目されているようです。小胞体

 

内膜を細胞核とみなして、I. hospitalisの祖先とN. equitansの祖先の共生系が、

α-プロテオバクテリアを取り込み、真核生物になったという仮説が出たこともあります。

 

主に深海の熱水系に成育し、硫黄水素に依存する化学合成独立栄養で増殖します。

偏性嫌気性で、生育温度は70 - 98°C。至適生育温度は90°C付近、

至適pH5 - 6付近です。

至適条件付近では、1時間程度で2倍に増殖します。

 

形態は1 - 3μmの球状に近い不定形で、

細胞表面には最大9本の鞭毛があります。

 

一般的な古細菌の細胞表面構造である、S層やシュードムレイン、多糖類のような硬い殻は持っておらず、

菌体最外部には、この古細菌最大の特徴である外細胞膜があります。

 

内膜と外細胞膜の間は細胞質の数倍にも達する、ペリプラズム空間が存在します。

 

ペリプラズムには、多数の小嚢が存在しています。

小嚢は内膜から派生し、最終的に内膜に再び取り込まれます。

 

外細胞膜表面には、

ATP合成酵素や、アセチルCoAシンテターゼ、水素-硫黄オキシドレダクターゼ複合体等が局在している一方、

DNAやタンパク質合成系等は、内膜の内側に存在しており、

情報処理系と、エネルギー生産系が別の場所に分けられています。

 

この構造は、細胞膜核膜を持つ、真核生物に通じる部分があります。

 

I. hospitalis KIN4のゲノムサイズは、1297538 bpと小さいです。

 

I. hospitalisは、細胞表面にN. equitansを共生させています。

 

N. equitansは、ATP合成系を不完全にしか備えておらず、何らかの方法でATPを宿主から得ているようです。

ATPの獲得には、イグニコックス属特有の外細胞膜が関与していると考えられていますが、

他のイグニコックス属菌の存在下では増殖しないようです。

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モリクテス綱

テネリクテス門に属す、真正細菌の綱で、細胞壁がありません

動植物の寄生体として特殊化しており、一般に細胞やゲノムのサイズが非常に小さいです。

グラム陰性ですが、フィルミクテス門グラム陽性GC含量細菌)に含まれる場合もあります。

 

真正細菌に属していますが、

細胞壁がなく、その構成成分であるペプチドグリカンを合成することもできません。

ただし、細胞膜の強度は他の細菌に比べ強固です。

多くの種は、細胞膜にステロールを含んでいます。

 

大きさは0.2 - 0.6μmと非常に小さく、生物として最小の部類に入ります。

 

滑走運動はしますが、鞭毛はありません。

 

細胞壁の欠損は、浸透圧変化の少ない真核生物組織内での生活に特化しているためとされますが、

少数ながら自由生活性の種も存在します。

 

細胞膜の主要構成成分である長鎖脂肪酸も、自力では合成できない種がほとんどです。

これも細胞壁の欠損と同様、栄養豊富な真核生物組織内での生活に特化しているためで、

脂肪酸アミノ酸コレステロール等を宿主に依存しています。

 

ゲノムサイズも極めて小さいです( 60160万塩基対程度 )。

フィルミクテス門と同様、ATリッチです( GC含率25 - 40% )。

 

マイコプラズマ目 :主に脊椎動物に感染します。

 

エントモプラズマ目 :脊椎動物と植物、昆虫に感染します。

 

アコレプラズマ目 :ファイトプラズマ等。脊椎動物と植物、昆虫に感染します。ステロールを要求しません。

 

アナエロプラズマ目 :ウシ科やヒツジ科の反芻胃から発見されました。偏性嫌気性です。

 

ハロプラズマ目 :無酸素の深海中から発見された自由生活する系統です。モリクテス綱に含めないこともあります。

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マイコプラズマ

モリクテス綱マイコプラズマ目に属す真正細菌です。

真核生物を宿主とする、寄生生物です。

 

細胞壁はありません

 

ゲノムサイズが小さく( 55-140万塩基対 )、

細胞サイズも最小の部類( 200 - 300nm )に入ります。

 

TCA回路、脂質合成系、アミノ酸合成経路を欠損しています。

鞭毛は持ちませんが、適当な足場があれば滑走を起こします。

 

自然条件では、特定の真核生物(主に脊椎動物)細胞に付着して寄生します。

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ファイトプラズマ

モリクテス綱アコレプラズマ目に属す真正細菌です。

偏性細胞内寄生性で、植物の師管と、ヨコバイやウンカ等の昆虫に寄生します。

師管液を吸う昆虫によって媒介され、媒介昆虫の体内でも増殖します。

 

細胞壁はありません

直径は0.1μm

細胞膜には、内部から分泌されるタンパク質が膜タンパク質として存在します。

 

ゲノムは、50万〜100bpと非常に小さく、

遺伝子数も、数百個しかありません。

またGC含量が、全生物のゲノムで最も低いです( 最低で23% )。

 

TCA回路電子伝達系FATP合成酵素、ペントースリン酸経路、アミノ酸・脂肪酸合成経路のほとんどの遺伝子を持っていません。

特にATP合成酵素の欠損は、生物としてかなり特異です。

 

クラミジアやミトコンドリアにみられるATP / ADPトランスロカーゼも発見されておらず、

ATPの供給は、解糖系に依存している可能性があります。

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