DPANN ・・・細胞とゲノムサイズがとても小さい古細菌
DPANN系統( Diapherotrites Parvarchaeota Aenigmarchaeota Nanohaloarchaeota ) 古細菌
ディアフェロトリテス
アエニグム古細菌
参考 : スルフォロブス目(スルフォロブス属)、タウムアーキオータ門、Nasuia deltocephalinicola
その他 : Ca.・ORF
DPANN系統は、細胞とゲノムサイズが非常に小さい特徴があります。
パルウ古細菌や、ナノ古細菌などから構成される可能性がありますが、
ユリアーキオータに含まれる可能性もあり、詳細不明です。
ARMANは、大きさ200×60 nmしかなく、最小の生物です。( 1μm = 1000 nm )
ARMAN は原始生命体の生き残り、とする説もあります。
(寄生性の生物は、サイズが小さくなる方向に進化することがあるため、注意が必要ですが。)
ウイルスは、大きさが数十から数百nmですから、ウイルス並みの大きさですね・・・
2013年に発見された、パンドラウイルス(長さ1000 nm、幅500 nm)よりも小さいです。
尚、ゲノムサイズが最小の生物は、
βプロテオバクテリア(真正細菌)のNasuia deltocephalinicolaで、112,091ヌクレオチドです。
また、ARMAN は、クエン酸回路を持っており、好気細菌であるようですが・・・
好気呼吸というより、還元的クエン酸回路のような気もしますが。
あと、ナノ古細菌の、N. equitansは、Ignicoccusと共生していますが、これは、細胞壁をもちません。
しかし、Nst1が関連する、Acd1が、細胞壁の遺伝子を持つため、
細胞壁の有無が共生に関係するかは不明です。
ARMAN及び近縁系統に対して、2013年に提唱された古細菌の門です。
ユーリ古細菌門に含まれる見解では、パルウ古細菌綱とする場合があります。
ナノ古細菌や、コル古細菌門と共に記載種を含んでおらず、暫定的な門です。
ゲノムサイズは約80万〜100万bpで、
古細菌としてはN. equitansに次いで小型です。
古細菌COGs ( Clusters of Orthologous Groups )との一致は66%以下と、非常に割合が小さいことも特徴です。
アーキアル・リッチモンド・マイン・アシドフィリック・ナノオーガニズム ARMAN パルウ古細菌 ナノ古細菌
Archaeal Richmond Mine Acidophilic Nanoorganisms
既知の古細菌と類似する所が少なく、未知の部分も多いです。
大きさは200×60 nmしかなく、体積も0.009μm3から0.04μm3で、最も小さな生物です。 N. equitans
これ以上小さいと、単細胞生物として生存する事ができなくなるとも考えられています。
ヒ素、銅、亜鉛、鉄を含む、pH1.5以下という強酸性液体の環境に適応して生息する極限環境微生物です。
アイアンマウンテン鉱山では、Leptospirillum 属の真正細菌が多くを占めるバイオフィルム内に、
テルモプラズマ目の古細菌と生息しており、生態系全体の5%から25%を占めています。
その他、日本の湯野浜温泉、フィンランドの沼、スペインのリオ・ティント川で発見されています。
湯野浜温泉はpH8.1の弱塩基性の環境であり、ARMAN が多様な環境に生息している可能性を示しています
テルモプラズマ目の古細菌( Ferroplasma? 細胞壁がありません)の身体に付着しているものがあります。
ARMAN は単独では生存できず、他の生物に寄生または共生することで生存している可能性がありますが、詳細は不明です。
メタゲノム解析によって、ARMAN -1 〜 -5 の、
5種類の異なる遺伝子を持つものが確認されています。
これらの多様性は、ARMAN のゲノムが短く、突然変異によって短い期間の間に多様性が出現したと考えられています。
ARMAN-2 は、ゲノムサイズが99万9043塩基対、オープンリーディングフレーム ( ORF ) が1033です。
ARMAN-4 は、ゲノムサイズが80万0887塩基対、ORF が916であり、
ARMAN-5 は、ゲノムサイズが92万1220塩基対、ORF が1046であり、ARMAN-2 とあまり変わりません。
ただし、ゲノムの断片数は ARMAN-2 は3つですが、ARMAN-4 は44、ARMAN-5 は73に分かれています。
ARMAN のゲノムは特殊な点が多数あります。
ARMAN の全ゲノムに占める古細菌由来のゲノムは、約66%以下と異常に割合が少ないです。
これはケナルカエウム・シュンビオスム (海綿に共生するタウムアーキオータ門の古細菌) の58%に次いで小さな値です。
また、翻訳や転写に関わるいくつかの遺伝子を欠いています。
更に、ARMAN-2 の25%、ARMAN-4 の35%、ARMAN-5 の38%の遺伝子は、未知の配列であり、役割が不明です。
一方、極めて小さな遺伝子であるにも関わらず、
ARMAN-2 にはβ酸化、
ARMAN-2, 4, 5 には脂肪酸の分解、に関わる遺伝子を持っています。
加えて、(ほぼ)完全なクエン酸回路を持っており、ARMAN が好気細菌のようですが・・・還元的クエン酸回路のような気もしますが。
ARMAN-2 には、未知のイントロン配列が見つかっており、
新種のtRNA切断酵素を持っている可能性があります。
このように非常に特殊な性質を多数持つため、ARMAN は原始生命体の生き残り、とする説もあります。
N. equitansの16S rRNAの遺伝子配列が、
ユーリ古細菌、クレン古細菌、コル古細菌、いずれとも大きく異なっていたことを受け、提唱されました。
N. equitansは、Ignicoccusと共生しています。
Ignicoccusは、細胞壁をもたず、巨大なペリプラズマやその内部の小嚢など、特殊な構造を持つことから、
共生が成り立つと考えられています。
一方で、2013年に報告されたNanobsidianus stetteri ( Nst1 )は、Acd1と関連します。
Acd1は、ゲノムがやや小型なことを除けば、ほぼ典型的なスルフォロブス目の古細菌です。
細胞壁の遺伝子も保有しています。
ナノ古細菌は、パルウ古細菌(ARMAN)と系統的に近いとされ、共にDPANN上門に属すとも、
テルモプラズマ目(ユリアーキオータ門)に近縁ともされます。
Nanoarchaeum equitans ナノ古細菌 パルウ古細菌
海洋性古細菌( marine Archaea )の一種です。
80度で生育する、好熱菌です。
生育に最適な環境は、PH 6、塩濃度 2%です。
生存には、宿主が必要で、古細菌 Ignicoccus hospitalis と共生しているようです。
脂質は産生できず、宿主から得ています。
大きさは、400 nmと、2番目に小さいです。 ARMAN
ゲノムは、490,885ヌクレオチドで、Nasuia deltocephalinicolaの次に小さいです。
ゲノムは、一本鎖環状クロモソームで、GC平均含量は、31.6%です。
アミノ酸、核酸、補酵素、脂質合成のほぼすべての遺伝子が欠如しています。
しかし、修復や複製に必要な遺伝子はすべてコードしています。
DNAにコードされているものの95%は、RNAを安定化するタンパク質です。
このため、他の寄生生物でみられるような、非常に長い非コードDNAはありません。
環状構造から出る、小さな付属物を持っています。
細胞表面は、薄く格子状のS層で覆われています。
ATP産生能力も疑問です。
ゲノムは、高温と寄生(共生)に適応しています。
高濃度の塩環境に分布する古細菌です。
独立の門とする説と、ユーリ古細菌門の1綱とする説の二つがあります。
高度好塩菌と共に、世界中の塩湖、塩田などに分布します。
生息環境は高度好塩菌に似ていますが、この系統には入らず、独立した系統を形成します。
ゲノムサイズは1.2Mbp、細胞サイズも0.6μm程で、非常に小さいです。
クレンアーキオータ門、テルモプロテウス綱に属す古細菌の目です。
温泉や熱水泉などの陸上熱水系から分離される好熱好酸菌です。
強酸・高熱の環境に特に適応しており、
生育に適するのはpH 1 - 5、50 – 90 ℃の、極限環境です。
pH 0.35 ( A. sulfidivorans )や、
96 ℃( A. infernos )で増殖できるものもいます。
分布が広く、大抵の陸上酸性熱水泉に存在していますが、
海洋から分離されることはほとんどありません。
ほとんどの種が、偏性/通性好気性菌です。
硫黄を何らかの形で利用します。
スルフォロブス属は、硫黄がなくても従属栄養的に増殖できますが、
自然界では無機硫黄を酸化してCO2を固定する硫黄酸化菌としてふるまっているようです。
Acidianusも同様の代謝を行いますが、これは水素と硫黄の存在下嫌気性菌としても生育することができます。
形態は1 - 3μm程度の不定型の球菌で、頻繁に丸い突出部を形成します。
グラム陰性で、S層(糖タンパク質)という細胞壁を持ち、
細胞膜は、テトラエーテル脂質(テトラアーキオール)、という脂質一重膜からなります。
鞭毛を有し、運動性を持つ場合が多いです。
系統的には、デスルフロコックス目とアキディロブス目を合わせたクレードの姉妹群と考えられています。
陸上の火山や温泉などに広く生息する、好気・好酸・好熱性の古細菌です。
球形に近い不定形、大きさは2μmです。
ペプチドグリカンはありません。
鞭毛を持つ場合が多いです。
生育温度は、50 – 97℃、
生育pHは、1 - 6程度です。
至適増殖温度は、約70 – 85 ℃、
至適pHは、2 - 3の範囲にあるものが多いです。
既知のクレンアーキオータの中では最も好熱性が低いですが、何種かは超好熱菌に属しています。
基質としては、硫黄や硫化水素、またはアミノ酸や糖類を利用します。
これらを酸化して、独立または従属栄養的に増殖することができます。
単独の環状のゲノムを持ち、ゲノムサイズは2 - 3 Mbpです。
クレンアーキオータとしては比較的大きなサイズです。
S. solfataricusは、単一の環状DNAを持ちますが、
複製開始地点が1ヶ所ではなく、3ヶ所あることが知られています。
タウムアーキオータ門(タウム古細菌)
海綿に共生するケナルカエウム・シュンビオスム 等があります。
分布は海洋や土壌、温泉が中心、特に深海では全原核生物の数十%を占めると考えられています。
他の古細菌グループと比べ、かなり温和な環境に分布することが特徴です。
多くは亜硝酸菌であり、アンモニアの酸化で中心的な働きを担うことが示唆されています。
亜硝酸菌以外の報告は少なく、
硫黄酸化γプロテオバクテリアと共生する、Ca. Giganthauma karukerenseなどに限られます。
この種は発見された古細菌の中では桁違いに大きく、短直径で10μmを越え、
更にそれらが集合したフィラメントは30mmもあり、
この表面をγプロテオバクテリアが覆っています。
他の古細菌との比較
クレン古細菌寄りの特徴を持ちます。
16S rRNA系統解析でもクレン古細菌に近接する傾向があります。
クレンアーキオールを持ちます。
5つのr-タンパク(ユウリ古細菌や真正細菌は持たず、クレン古細菌及び真核生物に特有)や
Cdvタンパク質の遺伝子(クレン古細菌と真核生物に特有。前者は細胞分裂に使用)を所持しています。
クレン古細菌と異なる点としては、
ヒストンホモログ(エウリ古細菌及び真核生物が所持。クレン古細菌は持たない種の方が多い)、
DファミリーDNA複製酵素(エウリ古細菌はBとDを使用。クレン古細菌及び真核生物は主にBを使用)、
タイプIBトポイソメラーゼ(真核生物及び真正細菌が所持。古細菌2門は欠損)、
FtsZ(ユウリ古細菌及び真正細菌が細胞分裂に使用。クレン古細菌は欠損)などがあります。
至適生育温度も、クレン古細菌が70〜110℃であるのに対し、タウム古細菌は10〜50℃程度とかなり低いです。
真核生物がこの系統から派生したという仮説があり、
タウム古細菌や、近縁なCaldiarchaeum subterraneumなどからは、
ユビキチンや、チューブリンなどの報告があります。
Nasuia deltocephalinicola N. equitans
βプロテオバクテリア(真正細菌)の一種です。
ゲノムサイズが112,091ヌクレオチドと、最小です。
尚、二番目は、Tremblaya princepsの、139,000ヌクレオチドです。
137個のタンパク質をコードする遺伝子を持ちます。
ヨコバイ( leafhoppers )など、師管や木質部を食料とする虫と、内共生するバクテリアです。
植物の師管や木質部は、スクロースからなる炭水化物に富みますが、脂質とタンパク質は欠如します。
脂質は、炭水化物から合成可能ですが、窒素を含むタンパク質は合成できません。
他の内共生するバクテリアとともに、宿主が合成できない10種の必須アミノ酸を合成して、宿主を補助しています。
deltocephalinicolaは、2種類の必須アミノ酸を合成します。
他の生物では停止コドンとして使用されるUGAに、トリプトファンをコードして使用しています。
ヨコバイは、バクテリアのために、bacteriomeという小器官を持っています。
このため、deltocephalinicolaは、ATP合成に必要な遺伝子は使用していません。
Ca. :Candidatus。暫定的な地位を示します。タウムアーキオータ門
ORF: オープンリーディングフレーム。終止コドンを含まない、読み取り枠がオープンな状態にある塩基配列です。ARMAN