Stomu Yamashta



Floating Music

    1.Poker Dice
    2.Keep In Lane
    3.Xingu
    4.One Way

    Stomu Yamashta:keyboards, percusion, multi instruments
    Morris Pert:drums, percussion
    A. Powel:bass
    Thompson:organ, piano, sax
    P. Plant:bass
    Peter Robinson:piano
    D. White:sax
    I. Goffe:trombone
    R. Harris:trumpet

 1972年発表、Stomu Yamashta & Come To The Edge名義でのフリーフォームなジャズロック作品。

 

 

Red Buddha Theatre / The Soundtrack from "The Man from the East

    1.Sunrise
    2.My Little Friend
    3.What a Way to Live in Modern Times
    4.Mountain Pass
    5.Mandala
    6.Memory of Hiroshima
    7.Untitled
    8.Red Buddha (bonus track)
    9.As Expanding As (bonus track)

    Stomu Yamash'ta:percussion, marimba, shamisen, drums
    Morris Pert:drums, percussion
    Peter Robinson:electric piano
    Alyn Ross:bass
    Phil Plant:bass
    Joji Hirota:claves, vocal
    Shiro Murata:flute
    Maggie Newlands:organ
    Mikako Takeshita:performer
    Yoshio Taeira:piano
    Hideo Funamoto:triangle, cowbell, percussion
    Hisako Yamash'ta:violin, shamisen
    Goro Kunii:vocal
    Gary Boyle:guitar
    Robin Thompson:sax

 舞踏音楽集団「Stomu Yamash'ta's Red Buddha Theatre」による1973年のアルバム。舞踏のサウンドトラックという位置づけになる作品らしいが、内容は笑っちゃうほど日本的サウンドだ。2つ折のライナーには鬼(ナマハゲ?)・ひょっとこ・おかめ・ふんどし男と老婆といった舞台風景の写真が載っているが、能や歌舞伎といった格式のある伝統芸能ではなく、古来からある庶民的な民俗風習(民話)にまつわるものを舞踏で表そうという試みなのだろうか? 更にサウンドは阿波踊り・河内音頭・古謡・童謡・祭り囃子・雅楽など、我々日本人が身近で懐かしく感じられる日本の音階や拍子がテンコ盛り。この様な舞台ビジュアルとサウンド要素は、日本人にはあからさま過ぎて評価の分かれるところだと思うが、欧米人にはとんでもなく奇異でミステリアスに映るのではないかと想像する。また、最後に「Memory Of Hiroshima」という曲があることからも、反戦/平和というテーマがあることも容易に推測できるが、日本人の伝統/アイデンティティーと反戦/平和というものの繋がりはよく分からない。
 コンセプトはともあれ、日本の伝統音楽をこれほどまで端的にロック・ミュージックで表している作品も珍しいのではないだろうか。いわゆる日本的な音階に代表されるイメージのサウンドを持つバンドはいくつか存在するが、能楽や雅楽といった安直な日本的イメージだけではない土着の音楽を具体的に取り入れている作品にはなかなかお目に掛かれない。しかも、これが発表されたのが1973年。山下勉、恐るべし。
 尚、8・9曲目にはボーナストラックとして、71年に発表されたツトム・ヤマシタのソロアルバム「Red Buddha」が収録されている。こちらはパーカッションによる瞑想的かつアバンギャルドな作品で、個人的には安易に素晴しいと絶賛できる曲ではないが、体調・気分が合えばとんでもなく引き込まれる時もある。

 

 

GO

    1.Solitude
    2.Nature
    3.Air Over
    4.Crossing The Line
    5.Man Of Leo
    6.Stellar
    7.Space The Me
    8.Space Requiem
    9.Space Song
    10.Carnival
    11.Ghost Machine
    12.Surfspin
    13.Time Is Here
    14.Winner / Loer

    Stomu Yamashta:percussion, synthesizer
    Steve Winwood:vocal, keyboards, guitar
    Michael Shrieve:drums, percussion
    Klaus Schulze:synthesizer
    Al DiMeola:guitar
    Rosko Gee:bass
    Hisako Yamashta:violin
    Chris West:guitar
    Pat Thrall:guitar
    Julian Marvin:guitar
    Bernie Holland:guitar
    Lennox Langton:conga
    Brother James:conga
    Paul Buckmaster:string & horn-arr

    Produce:Stomu Yamashta, Dennis McKay, Paul Buckmaster

 日本が誇る音楽家、ツトム・ヤマシタが立ち上げたプロジェクト:GOによる1976年の1stアルバム。  京都に生まれた彼は10代のうちに渡米し、ジュリアード音楽院やバークレー音楽院といった名門でアカデミックな教育を受けた後、世界的なオーケストラと共演し「打楽器のイメージを変えた人」として米タイム誌で紹介された逸材である。その後も72年に演劇と音楽を融合した舞台作品を創造するプロジェクト:The Red Buddha Theatreを組織したり、映画音楽やバレエ音楽を担当したりと、クラシック・現代音楽にとらわれない多方面の分野で活躍した。
 その活動のひとつとしてGOというロック・バンドがあるわけだが、とにかくメンツが凄すぎる。スティーブ・ウィンウッドは居るは、クラウス・シュルツェは居るは、アル・ディメオラは居るは、マイケル・シュリーブも居るはで、よくもこんなメンツを揃えられたものだ。メンバーの陣容からさぞ強烈な個性のぶつかり合いを想像してしまうが、内容はというと意外にも難解さを感じさせない普通のロック。普通のロックといってもつまらないわけではないし、並のロック・ミュージシャンが作る音空間ではないと感じさせる部分も多々ある。あるストーリーに基づいて構成されており、メドレー形式で繰り広げられる各曲は耳触りが良く、スペイシーかつシンフォニックでトータル感のある作品に仕上っている。そのスペイシーな感覚というのはサイケ系や電子音楽系にありがちなトリップ感を伴うものではないし、シンフォニックな感触もベタベタなプログレバンドにありがちなものでもなく、どちらもよりスマートな感じである。各メンバーが我が侭な自己主張をせず、GOというプロジェクトの一員として機能することに徹したであろうという事が想像できる。また、そういう風にコントロールしたツトム・ヤマシタの手腕が、このアルバムの完成度につながっていると思う。素直な感想としては、SFチックなものを連想する作品だ。
 聞く前はもっとアバンギャルドな作風を想像していたが、非常にストレートでポピュラー・ミュージック的な格好いい曲が多い。特にバラード調・ソウル調のボーカル曲は「はは~ん、スティーブ・ウィンウッドがかなり噛んでるな?」と思いきや、ウィンウッドは最後の曲を作曲しているだけで、他はツトム・ヤマシタが全てを作曲している。

 

 

GO Live From Paris

  

    1.Space Song
    2.Carnival
    3.Wind Spin
    4.Ghost Machine
    5.Surf Spin
    6.Time Is Here
    7.Winner / Loser
    8.Solitude
    9.Nature
    10.Air Voice
    11.Crossing The Line
    12.Man of Leo
    13.Stellar
    14.Space Requim

    Stomu Yamashta:percussion, synthesizer
    Steve Winwood:vocal, keyboards
    Michael Shrieve:drums
    Klaus Schulze:space-machine
    Al DiMeola:guitar
    Jerome Rimson:bass
    Brother James:conga
    Pat Thrall:guitar
    Karen Freidman:chorus

    recorded Paris, June 12, 1976

 76年6月12日のライブ盤であるが、発表は2ndの後の78年。内容としては1stアルバムそのままであるが、スタジオ盤のA面B面を逆にしたように曲順が入れ替わっており、尚且つ1曲が差替えられている。しかも1stはLP1枚であったの対して、このライブ盤は2枚組であり、1時間超と少し長い。スタジオ盤にあったストリングス・オーケストラは入っていないが、全体的な印象としては特に変わるとこころはなく、スペイシーで壮大な作風をライブ演奏でも忠実に再現しているという具合である。ちなみに、実際のステージではレーザー光線による視覚効果がサウンドと相いまって、素晴しい音宇宙を演出していたらしい。
 ところで、ステージでの演奏曲の順番がスタジオ盤の各面を逆にしている事については、1枚目→2枚目を聞いた後また1枚目から聞きなおすと、2枚目→1枚目のサイクルではスタジオ盤と同じになるという、ストーリーの主題である輪廻転生を表現するアイデアであるという事がライナー・ノーツに書かれている。

 

 

Stomu Yamashta's GO (Boot)

    1.Gost Machine
    2.Surf Spin
    3.Time is Here
    4.Winner / Loser
    5.Crossing the Line
    6.Make up your mind and go

    Stomu Yamashta:piano, percussion, synthesizer
    Steve Winwood:vocal, keyboards
    Michael Shrieve:drum
    Al DiMeola:guitar
    Klaus Schulze:syntheziser
    Jerome Rimson:bass
    Pat Thrall:guitar
    Brother James:congas
    Karen Freidman:chorus

    Live in Europe 1976

 「Stomu Yamashta's GO」と題されただけのブート盤。76年のヨーロッパ公演という事だが、詳細な日時・場所はクレジットされておらず、前述の公式パリ公演とは明らかに違う。収録内容は6曲、50分強ということで、曲数で言えばスタジオ盤を端折った感じだが、各曲ともクレジットされていない曲も含んだ長尺であり、先のライブ盤にはなかったインスト・パートも聞こえる。そして何よりも驚かされるのが音質の良さで、「Live from Paris」に勝るとも劣らない録音である。

 

 

GO Too

  

    1.Prelude
    2.Seen You Before
    3.Madness
    4.Mysteries Of Love
    5.Wheels Of Fortune
    6.Beauty
    7.You And Me
    8.Ecliptic

    Stomu Yamashta:percussion, synthesizer, Piano
    Jess Roden:vocal
    Linda Lewis:vocal
    Al Di Meola:guitars
    Doni Harvey:guitar, vocal
    Klaus Schulze:synthesizer
    Michael Shrieve:drums
    Paul Jackson:bass
    Brother James:percussion
    Peter Robinson:keyboards

 77年の2作目。前作はトータル・アルバム的であったが、こちらは単曲を収録した普通の作り。しかしこのアルバムにも、ストーリーがあるらしい。プログレ的見方からすれば物足りないかもしれないが、曲そのもののクオリティは落ちていない。広く一般にも受け入れられ易い曲作りがされており、それを歌うジェス・ローデンとリンダ・ルイスというボーカルの人選がシブイ。このアルバムでも最後の曲をシュルツェが作曲している以外、他はツトム・ヤマシタが全てを作曲している。
 ロックの分野への関わりはこの作品で終わってしまい、その後日本に戻ったヤマシタは仏教音楽に携わったり、サヌカイトという音の出る石を叩いて作った音響系の作品を発表したりしている。