Pierre Moerlen's Gong
長い歴史と複雑に枝別れした人脈の中でも、私が特に好きなジャズロック/フュージョン色の明確なピエール・モエルラン主導のGongに絞って紹介します。「んじゃ、お前さんは本家GONGは駄目なのかい?」と問われれば、さにあらず。Camembert Electrique と You は別格扱いです。
- Shamal
- Break Through The Commune (Boot)
- Gazeuse!
- Expresso II
- Downwind
- Time is the Key
- Live
- Leave It Open
- Breakthrough
- Second Wind
- Full Circle Live 1988
- Pentanine
Gong / Shamal
-
1.Wingful Of Eyes
2.Chandra
3.Bambooji
4.Cat In Clark's Shoes
5.Mandrake
6.Shamal
Dedier Malherbe:sax, flutes, gongs
Mike Howlett:bass, vo
Pierre Moerlen:drums, vibraphone, tubular bells
Mireille Bauer:marimba, glockenspiel, xylophone, percussion
Patrice Lemoine:keyboards
(guest)
Steve Hillage:guitar (1,3)
Miquette Giraudy:vocal (3)
Sandy Colley:vocal (6)
Jorge Pinchevsky:violin (2,3,4,6)
本アルバム~「Gazeuse!」および「ExpressoⅡ」迄は、名義上はGongのままである。前作「You」でRadio Gnome Invisible三部作を完成し、デヴィド・アレン夫妻は本家Gongを去ってしまったわけであるが、残ったメンバー達は75年に本作を発表しGongを継続した。「You」で顕著に表れていた高度なジャズロック色が受け継がれているが、ディディエ・マラーブやスティーブ・ヒレッジといった旧主要メンバーが残っているせいか、Gongのユーモアというかほんわかしたムードも随所に残っている。Radio Gnome Invisible三部作が終わってしまい、バンド自体の方向性も曖昧な状態にあったことが、サウンドにも影響しているように感じる。この時点では未だピエール・モエルラン主導とは言えないが、5曲目「Mandrake」という後のPierre Moerlen's Gongのサウンドをよく表わしている曲も収められている点はキーポイントだと思う。
Gong / Break Through The Commune (Boot)
-
[Disc 1]
1.Chandra / Love is how you mabe it
2.Wingful of Eyes
3.Cat in Clark's Shoes
4.Bambooji
5.The Isle of Everywhere Part-1
[Disc 2]
1.The Isle of Everywhere Part-2
2.Get it Inner
3.Mandrake
4.Shamal
5.Ioa Chant & Master Builder
6.Jam Session
Didier Malherbe:sax, flute
Mike Howlette:bass, vocal
Pierre Moerlen:drums, vibraphone
Mirelle Bauer:percussion, marimba
Patrice Lemoine:keyboards
Jorge Pincheusky:violin
Live at Piper 2000 Club, Viareggio, Italy 1976.04.21
Shamal期のライブ盤(ブート)。音質的にはそこそこ並み。スティーブ・ヒレッジは既に脱退している。「Shamal」と「You」以前の曲を演奏している。演奏自体は申し分ないが、ギターが居ないせいか物足りなさも残る。全盛時のスペイシーな感覚も弱く、さりとて後々のクリアかつ軽快なサウンドでもない。その割には演奏も気合いが入っていて、聴衆の熱狂度も高い。この音源ではGongのレパートリーだけだが、スティーブ・ヒレッジ在籍時はGongの看板を背負いながらも、彼のソロアルバム「Fish Rising」の曲を演奏しているライブも多い。
Gong / Gazeuse!
-
1.Expresso
2.Night Illusion
3.Percolations (pert1)
4.Percolations (pert2)
5.Shadows Of (pert1)
6.Shadows Of (pert2)
7.Esnuria
8.Mireille
Pierre Moerlen:drums, percussion
Allan Holdsworth:guitar
Benoit Moerlen:percussion
Didier Malherbe:sax, flute
Francis Moze:bass
Mino Cinelou:percussion
Mireille Bauer:percussion
76年発表。前作でゲスト扱いだったスティーブ・ヒレッジも居なくなり、代わりにアラン・ホールズワース(g)を迎え、更にフュージョン色を増したカラフルで痛快なサウンドである。打楽器奏者が4人も居るという、Pierre Moerlen's Gongというバンドの布陣はこの頃に出来上がっている。私はアラン・ホールズワースに特別な興味を引かれた事はないが、このアルバムで聞ける彼独特の音色・フレージングは格好良く、旧Gongを吹っ切った本作に非常にマッチした人選だったと思う。只この後の一連のアルバムと聞き比べると、ギターの音色的に少し違和感があるかもしれない。
Gong / Expresso II
-
1.Heavy Tune
2.Golden Dilemma
3.Sleepy
4.Soli
5.Boring
6.Three Blind Mice
Pierre Moerlen:drums, percussion
Benoit Moerlen:percussion
Francois Causse:congas, drums, percussion
Hansford Rowe:bass
Mireille Bauer:percussion
(guest)
Allan Holdsworth:guitar
Mick Taylor:guitar
Bon Lozaga:guitar
Darryl Way:violin
78年、Gong名義では最後の作品。後々まで活動を共にするハンスフォード・ロウ(b)やフランシス・コーズ(per)も加入し、レギュラー・メンバーがリズム・セクションのみという、ヘンテコなバンド編成になってしまった。「上モノ楽器はテキトーな奴を引っ張ってきて弾かせて、俺らがチャカポコチャカポコ叩いて曲の芯を抑えてたらバッチリやで~」と言わんばかりの布陣である。実際のところ、微かにミニマルな反復性のあるメロディーやリズムを随所に取り入れた曲作りと、ヴィブラホンを筆頭に旋律を奏でる打楽器を多用している事が、通常のメイン楽器を誰が弾こうがPierre Moerlen's Gongとしての楽曲になってしまうという点が面白いところである。
Pierre Moerlen's Gong / Downwind
-
1.Aeroplane
2.Cross Currents
3.Downwind
4.Tin-Go-Lo-Ba
5.What You Know
6.Emotions
7.Xtasea
Pierre Moerlen:drums, per, keyboards, vibraphone, vo
Benoit Moerlen:vibraphone
Hansford Rowe:bass
Ross Record:guitar, vo
Francois Causse:xylo-marimba, congas
(Guest)
Didier Lockwood:violin (2,6,7)
Mike Oldfield:guitar, bass, irish drum (3)
Steve Winwood:synth (3)
Didier Malherbe:saxes (3)
Terry Oldfield:flute (3)
Mick Taylor:guitar (5)
79年発表、正式にGongの分家としてピエール・モエルランの名前を冠したバンド名となった作品。ゲストにマイク・オールドフィールドを迎えたタイトル曲「Downwind」が収録されている事で話題になる場合が多い。確かにこの曲は正調マイク節ともいえるサウンドであるが、何か間延びした感じがしてPierre Moerlen's Gongとしての爽快さが感じられないのが残念である。その代わりと言ってはなんだが、2曲目「Cross Currents」が素晴らしい。前半部分を占めるディディエ・ロックウッドの深みのある艶やかなバイオリンがスペイシーな曲調と相いまって絶品である。この曲とジャケット(銅鑼をバックにした格好いいモエルラン)の為だけにLPを買ったといっても過言ではない。
Pierre Moerlen's Gong / Time is the Key
-
1.Ard Na Greine
2.Earthrise
3.Supermarket
4.Faerie Steps
5.American in England
6.Organ Grinder
7.Sugar Street
8.Bender
9.Arabesque Intro & Arabesque
10.Esnuria Two
11.Time Is the Key
Pierre Moerlen:drums,vibraphon
Pete Lemer:keyboards
Bon Lozaga:guitar
Hansword Rowe:bass
(Guest)
Darryl Way:violin
Allan Holdsworth:guitar
Nico Ramsden:guitar
Joe Kirby:bass
前作に引き続き79年発表。意外と話題に上がらないアルバムだが、個人的には傑作だと思っている。一部を除いて、曲間無しのメドレー形式で繋がっているトータル・アルバム的な構成の作品である。最初に聞いた時はモエルラン叩きまくりな割には、あまり印象に残らないメロディー、メリハリのない展開、よく似た曲調といった感じで、「これは堕盤だ。薄味で素っ気もないフュージョンだ!」と思った。知人から借りたこのレコードをそのまま返すのは勿体無いから、とりあえずカセットに録音して車で聞く事にした。しかし、運転中に何度か聞くうちにこの作品の虜になってしまっていた。何故かというと、まず第一に運転という行為に全くもって邪魔にならない心地よいサウンドである点。家で集中して聞いた時は薄味で面白くもないと感じていたサウンドが、何かをしながら聞くとめちゃくちゃ美味しく感じられたという訳である。第二に印象に残らないメロディーやメリハリのない展開と感じていたものが、ミニマルな作風の裏返しである事に気がついたのである。マイク・オールドフィールドとの仕事を通じて吸収したものを、モエルランが自分なりに昇華し良い結果としてこの作品に反映されているように思う。実際のところミニマルとは言っても、覚醒感・爽快感を伴う気持ちの良いもので、個人的にはスーパー・イージーリスニング・ミニマル・フュージョンと呼んでいる。このアルバムはカーステ用に常備していることもあり、車の運転をし始めてからの30年間に運転中に一番よく聞いた作品である。
Pierre Moerlen's Gong / Live
-
1.Downwind
2.Mandrake
3.Goldern Dilemma
4.Soli
5.Drumsolo
6.Esnuria
7.Crosscurrent
Pierre Moerlen:drums, percussion
Benoit Moerlen:percussion
Bon Lozaga:guitar
Didier Malherbe:saxophones, flute
Francois Causse:congas, drums, percussion
Hansford Rowe:bass
Mike Oldfield:guitar
80年のライブ盤。Downwindまでのアルバムから代表的な曲を選んで演奏されている。カッチリとまとまったアンサンブルで締まりのある演奏である。「Downwind」もここでは間延びしてません。キラキラ光るようなクリアなサウンドが格好イイ。
Pierre Moerlen's Gong / Leave It Open
-
1.Leave It Open
2.How Much Better It Has Become
3.I Woke Up This Morning Felt Like Playing Guitar
4.It's About Time
5.Stok Stok Stok Sto-gak
6.Adrien
Pierre Moerlen:drums, percussion, keyboards
Bon Lozaga:guitar
Francois Causse:congas, drums, percussion
Hansford Rowe:bass
(Guest)
Charlie Mariano:sax
Brian Holloway:rhythm guitar
Demelza:congas
前作のライブ盤以降、Pierre Moerlen's GONGの情報に疎くなってしまい、長いこと本作と次作の存在すら知らなかった期間があった。実際にレコード店でこの2作品を見かけたことも無かったし、流通量も非常に少なかったのではないだろうか?
内容的には「Time is the Key」の流れを汲む、躍動感溢れるスーパー・イージーリスニング・ミニマル・フュージョンに仕上っている。特に大曲であるタイトル曲が素晴らしく、「Time is The Key」と本作がPierre Moerlen's Gongの頂点だったのかな?と思ったりする。1981年発表。
Pierre Moerlen's Gong / Breakthrough
-
1.Breakthrough
2.Spaceship Disco
3.Rock In Seven
4.Six 8
5.Poitou
6.Children's Dreams
7.Portrait
8.The Road Out
9.Romantic Punk
10.Far East
Pierre Moerlen:drums, percussion, vocals, synthesiser, vibraphone
Lena Andersson:vocal
Nina Andersson:sax, vocal
Christer Rhedin:synthesiser
Hansford Rowe:bass
Dag Westling:guitar
Ake Zieden:guitar
Michael Zykla:stick
86年の本アルバムも入手困難で、正規品ではないっぽい?CD-Rに手を出してしまった。(といっても、たまたま中古CD店で見つけたものだから、速攻買いとなった次第) で、中味は・・・非常に微妙な作品だ。「ああ、いつものPierre Moerlen's Gong だなあ」と思う反面、なんか薄味という感じが拭い切れない。途中2曲ほどボーカル曲が入っていて、それがまた情けない。80年代にブレイクしたフィル・コリンズのソロ作品を何回も劣化コピーさせたかのようなもので、おまけにフランス語と来ては腰が砕けてしまいそうになる。まあ、この2曲を除けばそれなりの及第点をあげることができるかもしれないが。
Pierre Moerlen's Gong / Second Wind
-
1.Second Wind
2.Time And Space
3.Say No More
4.Deep End
5.Crystal Funk
6.Exotic
7.Beton
8.Alan Key
9.Crash & Co., The First
10.Crash & Co., The Second
11.Crash & Co., The Third
Pierre Moerlen:drums
Hansford Rowe:bass
Ake Zieden:guitar
Benoit Moerlen:percussion
Stefan Traub:keyboards
Frank Fischer:keyboards
最後の一踏ん張りというわけでもないだろうが、前作よりは持ち直した感のある88年の作品である。タイトルからして「Downwind」を思い起こさせるようなネーミングだし、何か意図(意志表示)があるのだろうか? アルバム後半に収められている長いドラムソロは冗長すぎるが、他は粒の揃った曲が収められていると思う。
Pierre Moerlen's Gong / Full Circle Live 1988
-
1.Second Wind
2.Deep End
3.Exotic
4.Leave it Open
5.Drum Alone
6.Soli
7.Breakthrough
8.Xtasea
Pierre Moerlen:drums, per
Benoit Moerlen:vibraphon
Hansford Rowe:bass
Ake Zieden:gitar
Stefan Traub:vibraphon
88年、「Second Wind」発表後のブレーメンでのライブ盤。「どのアルバム(曲)聞いても全部同じやん」というツッコミは置いといて(笑)、ますます磨きの掛かったGongサウンドは圧巻。前々作から参加しているスウェーデンのTributeのメンバーであるアーケ・ジーデン(g)に加えて、同じくステファン・トラウブ(vib)も加わり、ベノワ・モエルランとのダブルのビブラフォン体制は凄まじい。
この後Pierre Moerlen's Gongとしていつまで活動していたかは判らないが、90年代半ばにピエール・モエルラン抜きの残党メンバーがGongzillaを結成し現在に至る。まぁ、GongzillaもライブでPierre Moerlen's Gong時代のナンバーを演奏してたり、たまにピエールもライブに加わっていたりして、本質的にはあまり変わっていない様に思える。
Pierre Moerlen / Pentanine
-
1.Flying High
2.Airway to Seven
3.Pentanine Part 1
4.Au Chalet
5.Trip a la Mode
6.Reminiscence
7.Interlude
8.Classique
9.Lacheur
10.Blue Nuit
11.Pentanine Part 2
12.Montagnes Russes
13.Troyka
Pierre Moerlen:drums, vibraphone, xylophone, programming
Arkady Kuznetsov:guitar
Alexai Pleschunov:bass
Meehail Ogorodov:keyboards, hand drum & percussions, recorder, voice
(Guest)
Alexander Lutsky:trumpet
2005年発表。2002年には既に録音されていたが、2005年5月にPierre Moerlenが亡くなった事に合わせるように発表された。モエルラン以外の残党メンバーは当時既にGongzillaとして活動していたためか、本アルバムはロシアにて現地ミュージシャンの協力を得て作成されている。
アンビエント風なシンセがかぶさっていたりして全体的に薄味な感じはするが、曲自体は紛れもないピエールの作った曲だと言えるので、ファンとしては安心して聞ける。個人的には「ドラマーとしてだけでなく、コンポーザーとしてのピエール・モエルランが大好きだった」と改めて感じた次第で、これが遺作となってしまったのは残念至極である。