Eugenio Bennato

　Musicanova解散後の1983年の初ソロ・アルバム。

Eughenes

　1986年発表。

Le città di mare

　1989年発表。

Novecento Auf wiedersehn

　1990年発表。1stからこのアルバムまでの数枚はトラディショナルな要素は少なく、ごく一般的な普通のカンタゥトーレ作品と捉えるたほうが良い。

Mille e una notte fà

　1997年に発表。6枚目くらいのソロ・アルバムになるのだろうか。N.C.C.P.やMusicanovaというトラッド系のバンドをやっていた人らしい伝統的なアイデンティティとカンタウトーレの持つ現代的な感覚が程よくブレンドされており、"古い伝統音楽がかえって新しい"みたいな不思議とハイセンスな作品である。例えば、同じ様にイタリア伝統音楽を取り入れているファブリッィオ・デ・アンドレやアンジェロ・ブランデュアルディらと対比してみても、明らかにベンナートの方が伝統音楽への取り組みが直接的だが、その料理の仕方がお洒落で現代風に洗練されていると思う。
　ゆっくりとした時間の流れに鄙びた感じが漂っているゆったりとした曲でもバックに流れる小刻みなリズムが心地よく、所々にあらわれるシンセなどエレクトリック楽器の使い方が控え目ながらツボを突かれる。

Taranta Power

　90年代末にベンナートはタランタ・パワーなる企画のもと、コンサート活動やコンピレーション・アルバムなどの製作を始めた。タランテッラ(tarantella)は南イタリアに古くから伝わるテンポの速いリズムに乗せて踊られる伝統舞踊であるが、イタリアに限らず北部アフリカまで含めた地中海周辺地域の同じ様な舞踊曲/リズムを世に広めようというものらしい。そのタランタ・パワーでのベンナート自身のアルバムがこの作品で、2002年にはnew editionまで出されている。現在ではoriginal editionのCDの流通は見られないが、これらの2枚は収録曲数や曲順が違っているだけでなく、全曲アレンジ違いでnew editionが再録音されている。
　地中海メロディーとタランテッラにアフリカ系の土着的リズムやコーラスが違和感なく溶け込んでおり、ソフィスティケイトされた中にも力強さを感じるもので、その小気味良いリズムの現代版タランテッラに魅了されること間違い無し。民俗音楽のエッセンスが非常に濃いにもかかわらず、クラブ・サウンドやラウンジ・ミュージックとしても十分通用するようなグルーヴィでお洒落な音楽に仕上っている。

Che il mediterraneo sia

　続く2003年の当作品もタランタ・パワー印が付いている。Taranta Powerの旧盤・新盤とこのアルバムを混ぜこぜに聞いてみると、どの曲がどのアルバムに入っているのか判らなくなってくる。やってる事は同じという見方もできるが、曲のクオリティは全くもって落ちていない証拠でもあり、Taranta Powerが好きな人には間違いなくオススメの1枚。
　この人のボーカルは小さな声でモゴモゴ囁くようなスタイルで、めちゃくちゃ上手いとか良い声をしてるという訳ではないのに、何故か妙に惹かれるものがある。聞いていて心地よい安心感があるからだろうか。タランタ・パワー全開のリズミックな各曲に混じって挿入されている「Ninna nanna 2002」という曲も面白い。イタリアの子守唄？のような曲らしいがボーカル違いで２曲収録されており、ひとつはベンナートの落ち着いた歌声と女性コーラスで本当に眠ってしまいそうなくらい気持ちのよい感じになっている。もうひとつはピエトラ・モンテコルビーノという女性ボーカリストによる超ハスキーボイスで歌われており、眠ってしまったら喰われてしまいそうなほど怖い子守唄だ。
　この後、本作と前作の何曲かをリミックスしたアルバム「Da lontano」を2004年に発表している。