その歳も押し迫った頃、「こっちでカウントダウンやらないか?」と連絡が入った。
「温泉にでも入って今年の疲れを落としたら?」
「けど今頃からチケットもホテルも取れないでしょ?」
「チケットも取れたし、ホテルも取れたから」
「今年の自分へのご褒美!それくらい贅沢してもいいか・・子供達も帰るのは遅くなるって言ってたし。温泉でお正月なんて初めてやわ。社長、ありがとう」
海に面したホテルの、メゾネットタイプのスウィートを予約しておいた。
「すごい部屋・・シングルで良かったのに」
「贅沢言うなよ、苦労したんだから。愛は上、僕は下、それで我慢しろよ」
「えっ!この部屋だけ?」
「だから、愛は上、僕は下、贅沢言うなよ」
海の幸をたっぷりと満喫し、部屋でテレビを見て過ごした。
愛は、ケラケラ笑いながら特番を見て、CMになるとチャンネルを変えた。
「いつもそんな風に見てるの?」
「気忙しい?年末はいつもこんな感じ。それでそのうち、どの番組でカウントダウンするか、子供達と決めて、ハッピィニューイヤーってなるのよ。今年はどれにしようかな?どれでカウントダウンしたい?」
「どれでもいいよ」
「もうすぐだし・・じゃぁこれにするね。毎年一瞬で終るけど、何かドキドキしない?ドキドキしてきた・・」
『5・4・3・2・1・0・ハッピィニューイヤー!今年もよろしくお願いします』
久しぶりに笑った気がした。
「明日、もう今日ね。今日は何をして過ごす?楽しみにしてるわ。じゃぁ、おやすみ」