部屋に戻り、翌日はゆっくりと昼食を摂り、午後から買い物に出かけた。

 真珠達の真似をした訳ではないが、やっぱりあやかりたくて、僕は愛の誕生石のサファイアを、愛には僕の誕生石のダイヤのリングを注文した。
 大安吉日に二人で役所に行き入籍した。
 愛は何故か、右手の薬指にリングをはめてくれと言った。

 今年の1月、2月は長かった。
 平日、愛は家に帰り、仕事をしたり、送別会を開いてもらったりして、週末戻って来て、最終で帰るという日が続いた。
 平日のなんと長いことか、週末のなんと短いことか・・・。

 真珠とは恋愛観が違うと言ったが、今なら彼の気持ちが良く解かる。
 彼がそうだったように、僕も愛が側にいてくれないと駄目だと思い知った。
 愛もまた、「帰りたくない」と言い出す日が増え、この週末からはずっと側にいられる様になった。
 仕事以外の時間はいつも一緒にいられる。
 部屋に灯りがつき、待っていてくれる人がいる。
 ご飯を食べるのも、テレビを見るのも、眠るのも一人じゃない。
 それがこんなにも幸せな事なんだと、初めて知った。


 桜の便りが聞こえてくる季節となり、仕事で、しばらく出張する事になった。 
 「私は、あっちに帰ってるから心配しないで」
 「愛も一緒に行くんだよ。監督や先生も行くし」
 「一緒に行っていいの?」
 「当たり前じゃない。仕事が終ったら、しばらくゆっくりしよう。新婚旅行も行ってないし。色々用意しなくちゃね」
 春風の中、二人で旅立った。
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