(説教か・・愛の為を思って言ってるつもりだったのに・・今夜だってS社長に膝枕してもらったりして・・・)
僕は、急いでシャワーを浴びに行った。
シャワーを浴びながら、「そんなはずはない」と否定した。
S社長や監督たちと、楽しそうにしていた事を、思い出し、嫉妬しているのではない。
そんなはずはない。
何故、嫉妬しなくちゃいけない?
そんなはずはない。
あり得ない。
年上で、子持ちで、チビで、おしゃべりで、失礼女だし、絶対あり得ない。
そんなはずはない。
そんなはずは・・僕は否定し続けた。
が、その日から爽やかな風が吹く事はなく、一週間あまりメールも電話もしなかった。
出来なかったと言う方が正しいのかもしれない。
僕は、松浦晋。
『初めての恋』を読んだ時、僕がモデル?と驚いた位、真珠と僕は似ていた。
生い立ちも、仕事も何となく似ていたし、想像だが、体格や性格も似ているように感じていた。
ただ、女性観というか、恋愛観は全然違っていた。
女性に不自由はしないという点では似ているが、初恋で傷つき、愛や恋を信じなくなった真珠とは違い、僕はいつも、真剣にその人を愛してきたつもりだ。
この歳で独身なのは、何も独身主義を貫いている訳でも、プレイボーイを気取っている訳でもない。
結婚を考えた人も何人かいたが、その人にとって僕が、人生を共に歩める男ではなかったと言うだけの事だ。
それに僕は、真珠のように、えりかのことで一喜一憂するというタイプではないし、ましてや、女性にずっと側にいて守ってほしい等と考えた事もない。