「愛さん、明日帰れば?僕達もまだ愛さんと話したいし・・」
 「明日仕事だし、朝は弱いから勢いで帰りまーす」
 「じゃぁ、僕達のホテルは、駅までの通り道だから車で話しましょう。いいですよね、社長?」
 「駅で迷子になっちゃいけないから、社長に送ってもらえばいいよ」

 「それは私が」と言う Y さんをタクシーに乗せ、僕達もタクシーに乗り込んだ。
 (何故僕が愛を送らなきゃならないんだ?)
 後ろの席でワイワイ話しているのを聞きながら、ため息をついた。
 二人をホテルで降ろし、愛を新幹線に乗せた。

 「寝るなよ。乗り越すぞ」
 「大丈夫。目覚ましセットするから」
 「着いたら連絡しろよ」
 「はーい。じゃぁね」

 台風“愛”は去った。
 また、ため息が出た。
 台風一過、爽やかな風が吹く・・・はずだった。

 もうそろそろ着く頃だな。
 (着きました。お世話になりました)とメールが入った。
 電話をかけた。

 「まだ起きてたの?」
 「早く寝ろよ。じゃぁな」
 「それだけ?またお説教されるかと思った」
 「明日仕事だろ?早く寝ろよ」
 「社長もね、おやすみ」

 (ラッキー。お説教されずに済んだ。でも社長どうしたんやろ?)
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