帰りの車の中で、愛を膝に寝かせながら
 「優しそうな人だな」少し嫉妬しながら言った。


 「優しい人だったと思う。子煩悩で仕事も真面目にするし。でもね、あの人の前で、辛くても泣いたり、迎えに来てってわがまま言ったり、そんな事出来なかった。自分の事は自分でしなきゃって、いつも思ってた。さっきだって、私のせいで迷惑を掛けたくなかったから“早く行って”って言ったのよ。だから、今日はショックだったんじゃない?辛い意味のショックじゃなくて、驚きのショック。だって、あの人の膝を借りてたけど、シンの事しか考えてなかった。横になって“シン早く来て”って電話してたのよ。シンの顔見たら泣き出すし・・・。こんな私を見たことはなかったと思う。シンには悪いと思ってるのよ。やきもち焼きで、わがままで、困らせてばかりいるものね。でも、シンといるとつい甘えてしまって・・シンなら許してくれそうで・・ごめんね」

 「愛、謝る事なんてない。僕に悪いなんて思うな。僕も愛にはいっぱいわがまま言ってるし、いっぱい甘えてる。僕達はそれでいいんだよ」


 そのまま病院へ連れて行くことにした。

 そしてそこで、真珠のように、泣きながら先生の話を聞くこととなった。

 「無理をせずに骨休めのつもりで」と勧められたので、予定通り、週末に海辺のホテルに行った。


 二人で、海を見ながら、心地よい風に包まれて、本当にゆったりと時が流れていくのを感じていた。
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