鯰絵解説

大施餓鬼法会図


 安政二年(1855)の大地震の火災焼死者を供養する法会を描いたものです。弁慶と鯰が等価だということを「弥生の興亡、帰化人の真実、ファイル3」で説明しましたから、鯰絵の一種だと理解していただけると思います。この絵にはもう少し面白いことがありますので説明します。

 弁慶や金太郎、釣鐘は呉系楚の要素と分類したものですが、弁慶は金太郎と同じ赤色に塗られています。火もこの部族の要素でした。鉄砲を持つのは狐拳の猟師と同じ。これも呉系楚(秦系)の要素です。
 釣鐘の中に隠れて尻だけ見せているのは武士ですから、「もののふ」=物部でこれは越系(文・漢系。基盤はヤオ族=現在のショー族=福建省、犬トーテム)になります。
 「釣鐘の中に隠れる」ということで連想するのは道成寺の安珍、清姫伝説の安珍(アンチン)ですが、この名は漢氏の祖、阿知使主に通じます。奥州、白河の僧とされていて、白河総鎮守は漢氏の坂上田村麻呂が勧請したという鹿島神社(延喜式内、白河神社)であるなど、矛盾なくつながります。ヤオ族の祖、狗の槃瓠は、釣鐘の中に入って七日七夜で人に変身するはずだったのに、心配した妻が途中で開けたため狗頭人身の姿になってしまったとされていますから、「釣鐘の中に入る」という行為のもっとも根底にこの槃瓠神話があるのでしょう。
 一方、清姫は真砂(まさご)庄司、清次の娘とされ、まさに呉であるし、姫姓なので「キ」ヨであり、姫でもあるし、清はシンとも読めますから、秦とも通じています。蛇となって安珍の隠れた釣鐘を七廻りし、火を吐いて安珍を焼き殺しました。釣鐘は安珍を守ってくれなかったのです。
 こんなふうに、伝承の中で、それぞれの民族の要素がきれいに分離されていて、混同されることがありません。江戸時代末期まで何が伝わっていたのかという大きな謎が残ります。





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