DNAメチル化・・・DNA誕生や、DNAとタンパク質のコラボの立役者?
DNAメチル化は、DNA中の、CpG アイランド等で、炭素原子にメチル基が付加する反応です。
DNAメチル化により、
宿主のゲノムに取り込まれたウイルスや、有害遺伝子の発現を抑制します。
更に、高等生物では、正常な発生と、細胞の分化に重要です・・・
「発生過程とは、DNAのメチル化が進行する過程である」、という考えもあります。
図解入門 よくわかる分子生物学の基本としくみP307(旧版。尚、改訂版が出版されたようです。)
DNAメチル化は、
細菌では、
原始的免疫システムとして作用し、バクテリオファージ(ウイルス)による感染から防御しています。
大腸菌のDNA アデニンメチルトランスフェラーゼ ( Dam )は、アデニンをメチル化の対象としており、
DNA複製のタイミング、
遺伝子発現、等に重要です。
DNA複製直後は、新生鎖はメチル化されていないため、
DNA二重鎖は、両方メチル化された状態から、半分メチル化(ヘミメチル化)された状態になります。
修復装置は、メチル化またはメチル化の欠如によって、鋳型と新生鎖を区別することができます。
複製起点は、ヘミメチル化状態を保持している、DNA領域です。
ヘミメチル化複製起点は、不活性であるため、
この機構は、DNA複製を細胞周期につき1回に制限しています。
遺伝子オペロンのプロモーター領域のメチル化によって、遺伝子発現を制御するものもあります。
尚、メチル化DNA単独だけでなく、
メチル化CpG結合ドメインタンパク質 ( MBD ) と結合することでも、遺伝子転写を調節します。
真菌では、
メチル化の半分は、トランスポゾンの残骸や、DNA動原体を含む、反復DNAで起こります。
植物では、
RNA指令型DNAメチル化 ( RdDM )、というものがあり、RNAウイルスや、トランスポゾンに対する防御に重要です。
ほ乳類では、
DNAメチル化は、正常な発生に必須であり、
遺伝子刷り込み、
X染色体の不活性化、
反復因子の抑制、等にも関係しています。
エピジェネティクスは、DNAメチル化の他に、
ヒストンの化学的修飾(メチル化・アセチル化・リン酸化等)、
ncRNAによる制御(RNA干渉、ヘテロクロマチン形成、RNA指令型DNAメチル化等)、があります。
シトシンの炭素の他、アデニンの窒素にも、メチル基を付加することもあります。
と、DNAメチル化は、様々な所で活躍していますが・・・でも、なぜ、「メチル化」、なのでしょう?
メチル化シトシン残基は、自発的にアミノ基が取り去られ、チミンとなりますが・・・
チミンと、何か関係するのでしょうか・・・
ちなみに、チミンは、5-メチルウラシル、とも呼ばれ、ウラシルの5位の炭素をメチル化した構造を持ちます。
DNA中にだけみられ、RNAでは、ウラシルになっています・・・
そういえば、チミンは、RNAにはありませんね。
シトシンが分解されると、ウラシルが生成してしまうため、
DNAでは、ウラシルの代わりに、チミンが用いられるようになった、という説がありますが・・・
チミンの元となる、チミジル酸 ( dTMP )は、UMPからdUMPとなり、
dUMPが、メチル化されることで生成します・・・
メチル化ですね。
チミジル酸シンターゼ ( FAD )により、触媒され、
5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸( 5,10 - メチレンTHF )が、補酵素です・・・
これは、テトラヒドロ葉酸( THF )から生成します。
メチレンというと、クレメンゼン還元という、カルボニル基を、亜鉛アマルガムを用いて、
塩酸等の強酸性の溶媒中で還元して、メチレン基( CH2 )にする反応がありますが・・・
DNAポリメラーゼに、亜鉛が含まれるのと、何か関係あるのでしょうか???
尚、シチジン三リン酸 ( CTP )は、UMPからUTPを経由して、これがアミノ化されることで生成します・・・
代謝経路から考えると、シトシンとチミンの大元は、ウラシルですね・・・
ウラシルは、RNAにしかありませんね・・・
DNAは、RNAのメチル化により誕生したのでしょうか???(詳細不明)
さて、DNAメチル化は、メチルトランスフェラーゼにより行われます。
メチル基の供与体として、S-アデノシルメチオニン(SAM)の硫黄原子に結合した、活性メチル基を用います。
核酸とアミノ酸のコラボですね。
アデノシンとメチオニンは、メチルスルホニウム結合で結合していますが、この結合は高エネルギー結合です・・・
リン酸結合以外にも、高エネルギー結合があります。
メチル基を失ったSAMは、S-アデノシル-L-ホモシステイン(SAH)となり、ホモシステインとアデノシンに加水分解されます。
ホモシステインは、5-メチルテトラヒドロ葉酸( 5-メチルTHF )からメチル基の転移を受けて、メチオニンなります。
5-メチルTHFは、THF になります・・・
また、THFですね・・・
THFは、アミノ酸と核酸の代謝等、に関わる補酵素ですが・・・
尚、タンパク質のメチル化は、N末端上またはタンパク質の側鎖上の窒素原子で起こります。
これは、アミノ酸(タンパク質)の多様性に寄与します・・・
そういえば、メチル化DNAは、メチル化CpG結合ドメインタンパク質 ( MBD ) と結合して遺伝子発現を調節しています・・・
DNAとタンパク質の、メチル化を介した、コラボですね・・・
DNA(とタンパク質)のメチル化は、DNA誕生や、DNAとタンパク質のコラボに、関わっているのでしょうか???(詳細不明)
DNA中の、CpG アイランドという配列等で、炭素原子にメチル基を付加する反応です。
DNAメチル化は、
シトシンのピリミジン環の5位炭素原子や、
アデニンのプリン環の6位窒素原子への、メチル基の付加反応です。
DNAメチル化は、
宿主のゲノムに取り込まれたウイルスや、その他の有害な遺伝子の発現を抑制します。
更に、高等生物においては、正常な発生と、細胞の分化に極めて重要で、
遺伝子発現パターンを変化させて、細胞の分化度を記憶します。
エピジェネティクスに深く関わり、複雑な生物の体を正確に形づくるために必須の仕組みと考えられています。
DNAメチル化は、細胞分裂を経ても受け継がれます。
通常DNAメチル化は、接合体形成の間に除去され、発生の間に続く細胞分裂を介して再建されます。
しかし、接合子では、メチル基の完全な除去よりも、メチル基のヒドロキシル化が起こっていることが示されています。
DNAメチル化は、クロマチン構造の基礎を形成します。
DNAメチル化は、
体細胞組織では、通常CpGジヌクレオチド部位(シトシン - ホスホジエステル結合 - グアニン)で起こります。
胚性幹細胞では、非CpGメチル化が多いです。
DNAメチル化は、正常な発生に必須であり、
遺伝子刷り込み、
X染色体の不活性化、
反復因子の抑制等、多くの鍵段階と関係しています。
ほ乳類では、CpG部位の60 - 90%がメチル化されています。
メチル化シトシン残基は、自発的にアミノ基が取り去られ、チミンとなります。
CpGジヌクレオチドが、TpGへと変異するため、CpGジヌクレオチドの出現頻度が低いです。
一方、非メチル化シトシンの自発的な脱アミノ化では、ウラシルが生じますが、この変異は細胞にすばやく認識、修復されます。
非メチル化CpGは、
多くの遺伝子の5' 調節領域に存在する、CpG アイランドというクラスターに集積しています。
遺伝子プロモーターである、CpG アイランドが、過剰メチル化を受けると、
細胞分裂による娘細胞に受け継がれる遺伝子サイレンシングが起こります。
過剰メチル化が、プロモーターと関連していて、遺伝子(がん抑制遺伝子)サイレンシングを起こすのに対して、
低メチル化は、一般的に初期に起こる染色体の不安定性や、刷り込みの喪失と関連しています。
DNAメチル化は、2つの方法で遺伝子転写に影響を与えます。
1つ目は、DNAのメチル化自身が、物理的に転写タンパク質の遺伝子への結合を妨げるもので、
2つ目は、より重要で、メチル化DNAが、メチル化CpG結合ドメインタンパク質 ( MBD ) と結合することです。
MBDタンパク質は、
遺伝子座にヒストンを修飾する、ヒストン脱アセチル化酵素や、
その他の、クロマチン再構築タンパク質等をリクルートし、
不活性化されたクロマチン(サイレントクロマチン)を形成させます。
DNAメチルトランスフェラーゼ
ほ乳類の細胞では、DNAメチル化は、主にCpGジヌクレオチドのC5位で、
維持メチル化と
de novo(新生)メチル化によって行われます。
維持メチル化活性は、
細胞のDNA複製サイクルの後も、DNAメチル化が保存されるために必要です。
DNAメチルトランスフェラーゼ ( DNMT ) がないと、
複製装置はメチル化されていない娘鎖を生み、受動的に脱メチル化を引き起こします。
DNMT1は、
DNA複製時、娘鎖にDNAメチル化様式を複製するために必要な、維持メチルトランスフェラーゼと推定されています。
DNMT3aとDNMT3bは、
発生初期にDNAメチル化様式を形成する、DNAメチル化 de novo メチルトランスフェラーゼと考えられています。
DNMT3Lは、
その他のDNMT3タンパク質と相同性がありますが、触媒活性を持ちません。
代わりに、DNMT3Lは、de novo メチルトランスフェラーゼのDNAへの結合能を高め、活性を刺激することで、これらの酵素を補助します。
tRNA ( シトシン-5- ) - メチルトランスフェラーゼ( DNMT2 ( TRDMT1 ) )は、
全てのDNAメチルトランスフェラーゼに共通の、10個の配列モチーフを全て含んでいます。
しかし、DNMT2は、DNAをメチル化せず、
代わりにアスパラギン酸tRNAのアンチコドンループに存在する、シトシン-38をメチル化します。
植物におけるDNAメチル化は、ほ乳類(主にCpG部位のシトシン)のメチル化とは異なります。
植物では、シトシンが、CpG、CpHpG、CpHpH部位でメチル化されます(Hは、グアニン以外のヌクレオチド)。
DNAにメチル基を転移させ共有結合させる、主なDNAメチルトランスフェラーゼは、
DRM2、
MET1、
CMT3です。
DRM2と、MET1は、
ほ乳類のメチルトランスフェラーゼDNMT3とDNMT1に、それぞれ高い相同性を有していますが、
CMT3は、植物界に固有のタンパク質です。
DNAメチルトランスフェラーゼには、現在2種あります。
DNAに新たなメチル標識を作成する de novo 酵素と、
DNAの親鎖のメチル化位置を認識し、DNA複製の後の娘鎖に、新たなメチル化を伝達する維持酵素です。
DRM2のみが、de novo DNAメチルトランスフェラーゼとされています。
DRM2はまた、MET1及びCMT3と共に、DNA複製後のメチル化標識の維持に関与しています。
de novo DNAメチル化の位置決定には、
RNA指令型DNAメチル化 ( RNA-directed DNA methylation: RdDM ) が、関わっている可能性があります。エピジェネティクス トップ
RdDMでは、
特定のRNA転写産物がゲノムDNA鋳型から産生され、このRNAが二重鎖RNAという二次構造を形成します。
二重鎖RNAは、
siRNA またはmiRNA 経路によって、
このRNAを産生したオリジナルのゲノム位置の de novo DNAメチル化を指令します。
この機構は、RNAウイルスと、トランスポゾンに対する細胞性防御において重要と考えられています。
両者は共に、宿主ゲノムに対して変異源性がある二重鎖RNAを形成します。
これらが潜伏しているゲノム位置がメチル化されることによって、未知の機構により、
これらのRNA転写を停止、細胞内で不活性とし、ゲノムを変異効果から防御します。
DNAメチル化は、発生段階依存的な遺伝子発現制御に関与しています。
真菌のシトシンメチル化レベルは低いですが( 0.1-0.5% )、
5%程度メチル化されている真菌もあります。
ビール酵母と、分裂酵母のDNAメチル化レベルは、非常に低いです。
アオパンカビのゲノムには、反復DNA は非常に少ないですが、
メチル化の半分は、トランスポゾンの残骸や、DNA動原体を含む、反復DNAで起こります。
アデニンまたはシトシンのメチル化は、真正細菌の制限・修飾システムの一つです。
メチラーゼは、
特定のDNA配列を認識し、配列中の塩基の1つをメチル化する酵素です。
メチル化を受けていない外部DNAが細胞に導入されると、
配列特異的な制限酵素によって分解、切断されます。
バクテリアゲノムDNAは、制限酵素によって認識されません。
DNAのメチル化は、
原始的免疫システムとして作用し、バクテリア自身をバクテリオファージによる感染から防御しています。
大腸菌DNA アデニンメチルトランスフェラーゼ ( Dam ) は、
制限・修飾システムに属さない、〜32 kDaの酵素です。
大腸菌Damの標的認識配列は、GATCであり、
メチル化はこの配列のアデニンのN6位で起こります ( G meA TC )。
この配列の両側に隣接する3塩基対も、DNA-Dam結合に影響しています。
Damは、
DNA複製のタイミング、
遺伝子発現、等で重要な役割を果たしています。
DNA複製によって、大腸菌ゲノムのGATC部位は、
完全にメチル化された状態から、半分がメチル化(ヘミメチル化)された状態になります。
これは、新たなDNA鎖に導入されるアデニンが、メチル化されていないためです。
再メチル化は、
新規DNA鎖の複製エラーが修復される間の2-4秒以内に起こります。
メチル化またはメチル化の欠如によって、細胞の修復装置は、鋳型と新生鎖を区別することができます。
ヘミメチル化状態を長い間保持しているDNAの一領域は、
GATC部位が豊富に存在する、複製起点です。
これは、バクテリアにおけるDNA複製機構の中心に位置しています。
SeqAは、
複製起点に結合し、隔離することによって、メチル化を妨げています。
ヘミメチル化複製起点は、不活性であるため、
この機構は、DNA複製を細胞周期につき1回に制限しています。
特定の遺伝子、例えば大腸菌の性繊毛をコードしている遺伝子の発現は、
遺伝子オペロンのプロモーター領域に存在するGATC部位のメチル化によって制御されています。
DNA複製直後の細胞の環境状況は、
Damによるプロモーター領域付近のメチル化が妨げられるかどうかを決定します。
メチル化の様式が一度作成されると、転写はDNAが再び複製されるまで、オンあるいはオフの状態に固定されます。
一方、DNAシトシンメチル化酵素は、
CCAGGとCCTGGを標的とし、シトシンのC5位をメチル化します( C meC (A / T) GG )。
その他のメチル化酵素EcoKIは、
AAC(N6A)GTGCと、GCAC(N6A)GTT配列のアデニンをメチル化します。
DNA塩基配列の変化を伴わない、
細胞分裂後も継承される遺伝子発現や、
細胞表現型の変化に関するもの、です。
ヒストンの化学的修飾(メチル化・アセチル化・リン酸化等)
ncRNAによる制御(RNA干渉、ヘテロクロマチン形成、植物におけるRNA指令型DNAメチル化( RdDM ) 等)
があります。
真正細菌
エピジェネティックな制御にDNAメチル化を利用していますが、
シトシンより、アデニンをメチル化の対象としています。
アデニンのメチル化は、
アルファプロテオバクテリアでは、細胞周期の制御、DNA転写と複製に関係します。
ガンマプロテオバクテリアでは、
DNA複製・遺伝担体分離・DNAミスマッチ修復・
バクテリオファージのパッケージング・転移に関する酵素活性・遺伝子発現制御、に関係します。
真菌
アカパンカビ(糸状菌)は、
シトシンメチル化の制御と機能の理解に重要です。
DNAメチル化は、RIP(反復配列誘発性点突然変異)という、ゲノム防御システムと関連しており、
転写伸長を阻害することにより、遺伝子発現を抑制しています。
出芽酵母は、
ユークロマチンにおける遺伝子発現や、ヘテロクロマチン構造をとるテロメアのエピジェネティクスに重要です。
分裂酵母は、
セントロメアのヘテロクロマチン構造や、ヒストン修飾・遺伝子サイレンシング等に関係します。
線虫
細胞可塑性(分化能)とリプログラミング、
遺伝子量補償、
トランスポゾンに対する遺伝子サイレンシング、があります。
また線虫は、他の動物に存在するDNAメチル化酵素dmnt-2を進化の過程で失っていますが、
より祖先型に近い遺伝子を利用した、RNA干渉によって遺伝子サイレンシングを行っていることが示唆されています。
キイロショウジョウバエ
位置効果による斑入り( PEV )という、
ヘテロクロマチン構造の影響による、遺伝子発現抑制(サイレンシング)があります。
PEVは、ヘテロクロマチン領域との位置関係だけではなく、
温度・過剰な染色体の存在・被抑制遺伝子の塩基配列等に影響を受ける確率的なものであり、
ヘテロクロマチン化に働く因子や、ヒストン修飾と関連があるようです。
被子植物
DNAメチル化
ヒストンの化学的修飾
ncRNAによる制御が知られています。
特にRNA指令型DNAメチル化が重要です。
被子植物におけるゲノムインプリンティングは、哺乳類の場合と同じくDNAメチル化標識を利用しています。