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個別労働紛争解決基準としての労働判例シリーズ


                                          労働者派遣法

1.ポイント



(1)労働者派遣とは、

派遣元企業(派遣会社)が雇用する労働者を、

派遣先企業の指揮命令の下で働かせることである。

派遣労働者の労働契約上の使用者派遣元企業であり、

派遣先企業との契約関係は発生しない


(2)労働者派遣は、労働者派遣法の規制に従って行われる必要がある。


(3)派遣先企業が、派遣労働者に責任を負わせるべきではないような

理由で労働者派遣契約を解約する場合、派遣先企業と派遣元企業は、

派遣労働者の新たな就業機会を紹介するなどの

措置を講じなければならない。



(4)派遣先企業は、一定の場合に、派遣労働者を直接雇用すべき責任を負う。




2.モデル裁判例



  エキスパート・スタッフ事件 東京地判平9.11.11 労判729‐49



(1)事件のあらまし

 原告側労働者X及び被告側会社Yは、平成8 年6 月3 日から同年11月末日までの間、

X を訴外A会社に派遣し、校閲業務に従事させるという内容の労働契約(「本件労働契約」)

を締結した。Xはこの労働契約に基づきAにおいて職務を遂行していたが、派遣開始後

1 ヵ月もたたないうちに、AからY に対し、X の勤務態度について苦情の申し入れが

行われる等、Xの派遣を中止して欲しい旨の要求がなされた。これを受けてYはXを解雇

することとし、Xとの交渉を経て、本件労働契約の解約と共に、YがXに対して1ヵ月間の

賃金支払うことと、Xの生活を保障する趣旨で、9 月1日から11月30日までの間、新たな

就職先を紹介することを合意した。Xは、新たな就職先の紹介がなされなかったとして、Yに

対し債務不履行による損害賠償を求めて訴えを提起した。

(2)判決の内容


労働者側敗訴


 Y は、X との合意に基づく義務として、少なくとも9 月1 日から11月30日までの間Xが

働くことができ、本件労働契約と同程度ないしそれ以上の賃金その他の労働条件を

内容とする労働契約を締結できる相当な見込みのある、新たな就職先を紹介する必

要がある。


 Y は、X に対して、株式会社Bを紹介し、責任者による採用面接を受けることができる

よう段取りをしている。そして、Bの採用面接において、Bの責任者は、本件労働契約に

比べて高額の賃金と、他の点でも特に問題のない労働条件を提示した上でXをすぐに

でも採用したいと告げている。以上の事実からは、Yは、Xとの合意に基づく義務を果た

したといえる。


3.解 説


(1)労働者派遣と労働者派遣法


 労働者派遣は、派遣元企業(派遣会社)が雇用する労働者を、派遣先企業の

指揮命令の下で働かせることである。

労働者派遣は、企業が社外の労働者を受け入れて利用する形態の一つである

が、派遣労働者の労働契約上の使用者は派遣元企業であり、派遣先企業は指揮命令を

行うが労働者との契約関係は発生しないという点で、業務処理請負や出向と区別される。


 労働者派遣は、職安法で禁止されている労働者供給事業の一形態であり、労働者

派遣法の規制に従って行われる必要がある。労働者派遣法は1985年に制定され、当初は


派遣の対象を26の専門業種に限り、派遣期間も短期に限定していた。

しかし、1999年と2003年の法改正により大幅な規制緩和が行われ、法で禁止された

業種(建設、警備、医療関係など)以外については労働者派遣を行いうることになった。

派遣期間についても、26業種については期間の限定がなくなり(従来は同一場所・

同一業種への派遣が3年を超えないよう行政指導が行われてきたが、2003年改正に

より廃止された)、それ以外の業種についても派遣先使用者が過半数代表の意見を聴いて

3年間を上限とする派遣可能期間を定めることが可能となった。


 また、派遣期間終了後に職業紹介が予定された紹介予定派遣(ジョブ・サーチ型派遣)

も解禁された。

(2)労働者派遣契約の解約と派遣労働者の就業機会の確保


 労働者派遣については、派遣元企業に比べ、サービスの利用者である派遣先企業が


有利な立場にある。そのため、派遣先による労働者派遣契約の期間途中における解約


が行われ、派遣労働者が就業機会を失うという問題点が指摘されている。


 モデル裁判例は、労働者派遣契約の解約を受けて、派遣元企業が派遣労働者との

労働契約を解除する際に合意した義務が果たされたか否かが争われたもので、やや

特殊な事案であるが、労働者派遣契約の中途解約が派遣労働者の雇用をめぐる紛争に

つながりやすいことを示している。


 この点に関する法規制としては、派遣先企業が、派遣労働者の国籍、信条、性別、

社会的身分、労働組合の正当な行為をしたこと等を理由として、労働者派遣契約を

解約することは禁止されている(労働者派遣法27条)。また、1999年法改正の際に

設けられた指針では、派遣先企業が、派遣労働者に責任を負わせるべきではないような

理由で労働者派遣契約を解約する場合、派遣先企業と派遣元企業は、派遣労働者の

新たな就業機会を確保する措置(たとえば派遣先の関連会社での就業をあっせんする

など)を講じなければならないとされている。また、派遣先の責に帰すべき事由により

契約を解除するときは、少なくとも30日前の予告または30日分の賃金に相当する額の

損害賠償を行わなければならない(平成11年労働省告示第137号「派遣元事業主が

講ずべき措置に関する指針」、平成11年労働省告示第138号「派遣先事業主が講ず

べき措置に関する指針」)。



(3)派遣先企業による派遣労働者の直接雇用



 労働者派遣法33条1項は、派遣元企業での雇用が終了した後、派遣労働者を派遣先

企業が直接雇用することを正当な理由がないのに禁止する旨の契約を、派遣元と派遣

労働者との間で締結してはならないとしている。派遣元が派遣先との間で同様の契約を

することも禁止されている(労働者派遣法33条2項)。裁判例には、派遣労働者を

派遣先で雇用するために労働者派遣契約の更新を拒絶した場合は、派遣先は派遣元に

対して高額の解約料(約260万円)を支払うとする契約も、33条に実質的に違反し無効で

あると判断したものがある

ホクトエンジニアリング事件 東京地判平9.11.26 判時1646‐106)。


 また、派遣先企業は一定の場合に、派遣労働者を直接雇用すべき責任を負う。

派遣先企業は、@派遣期間に制限のない業務について、3年間を超えて同一業務に

同じ派遣労働者を受け入れた後に、その業務に従事する労働者を雇い入れようとする

場合、A期間制限がある業務について、その期間の満了後もその労働者を受け入れ

ようとする場合、当該労働者が希望するならば、その派遣労働者に対して労働契約の

申込みをしなければならない(40条の5、40条の4)。また、期間制限のある業務に

派遣労働者を1年間以上受け入れた後、その業務に従事させる労働者を雇い入れ

ようとする場合には、その派遣労働者を雇い入れるよう努めなければならない

(40条の3)。

なお、派遣先と派遣労働者との間に労働契約が成立していたか否かが争われた事件と

して

( いよぎんスタッフサービス事件 松山地判平15.5.22 労判856‐45 を参照) がある。








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