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個別労働紛争解決基準としての労働判例シリーズ


                                     有期契約(更新拒絶)

1.ポイント



(1)期間を定めた雇用契約有期雇用契約)であっても、

契約期間満了により契約は当然には終了しない


(2)有期雇用契約において更新拒否が違法とされるのは

@反復更新を繰り返して、あたかも期間を定めていないのと同視できるような実態

なっていると、みなされる場合

A労働者に対し雇用継続の合理的期待持たせるような言動

使用者がしていたような場合などである。



2.モデル裁判例


  日立メディコ事件 最一小判昭61.12.4 労判486‐6




(1)事件のあらまし

 労働者Xは、昭和45年12月1 日に、雇用期間を同月20日までと定めて使用者Yに

臨時工として雇用され、同月21日以降は、期間2 ヵ月の労働契約を5 回にわたって

更新されてきた。しかるに、Yは、昭和46年10月21日以降、不況に伴う

「業務上の都合」を理由としてこの契約の更新を拒否するに至った。

そこで、Xは、XとYとの間における労働契約は期間の定めのないものであったことを

前提に、本件更新拒否解雇にほかならないところ本件解雇は権利濫用として

無効であるとして、労働契約上の従業員としての地位が存在することの確認を求めた

ものである。


(2)判決の内容 


労働者側敗訴


 @労働契約に期間の定めを設けることは民法90条に違反せず、5 回の更新に

よって期間の定めのない契約に転化したり、あるいは期間の定めのない労働契約が

存在する場合と実質的に異ならない関係が生じたということもできない。


 A季節的労務や特定物の製作のような臨時的作業ではなく、その雇用期間が

ある程度継続することが期待される作業に従事し、2 ヵ月雇用を5 回更新した

臨時員につき、更新拒否をするに当っては解雇法理が類推適用(*2 )される。


 Bしかし、更新拒否の効力を判断すべき基準は、終身雇用下のいわゆる

本工を解雇する場合とはおのずから合理的な差異がある。


 C従って、独立採算の工場の人員を削減する必要があり、余剰人員を他の

事業部門へ配置転換する余地もない場合に、当該工場の全労働者につき

希望退職者募集の方法をとらず、まず臨時員全員の更新拒否を行ったことが

不当・不合理な措置とはいえない。


3.解 説

(1)期間の定めのある労働契約と期間満了

 期間の定めのある労働契約は、民法の原則からするならば労働期間が終了すれば

終了する。しかし、期間を定めた労働契約につき期間満了を理由として更新を打ち切る

こと(一般に更新拒否又は雇止めという)に関しては、民法上の黙示の更新(*1。民法

第629条1 項) により契約関係の継続があるだけではなく、判例上においても以下の

通りの対応をしている。



(2)期間の定めのある非正規従業員と解雇権濫用の法理


 期間の定めのある、臨時工、パートタイマー、契約社員などの非正規従業員との間の

労働契約について、これを期間満了などにより終了(更新拒否又は雇止め)した場合の

問題については、裁判所は、モデル裁判例のほか、常用的な臨時労働者に対する

最高裁の

東芝柳町工場事件判決
(最一小判昭49.7.22 民集28‐5‐927) の考え方を適用して

いると見てよい。この判決は、「期間が定められていても、特別の事情がない限り反覆

更新され、不況のときに正規従業員に先立って更新が拒否(雇止め)され、実質上期間の


定めのない契約と異ならず、仕事の内容も正規従業員と大差のないような常用的臨時

労働者」の場合は、更新拒否(雇止め)を行なう際に、正規従業員に対して適用されている

「解雇権濫用の法理(解雇法理)」(*2) を適用する。その上で、「余剰人員の発生等

従来の取扱い(反覆更新) を変更してもやむを得ないと認められる特別の事情」が

なければ更新拒否(雇止め)できない、とした。その後、モデル裁判例においても、ある

程度の継続が期待され反復更新された雇用関係の更新拒否(雇止め) には、解雇

法理が類進適用されるとしているし、近時の判例においても同様な傾向がある(清和

ウエックス事件 大阪判平17.5.13 労経速1906‐24等)。



(3)更新拒否に関する具体的適用の基準


 しかし、裁判所はモデル裁判例や前掲東芝柳町工場事件判決などを機械的に

適用することなく、各々の非正規従業員・期間雇用労働者の雇用の実態に即して、

事案ごとに更新拒否(雇止め)の効力を判断している。その基準を抽象的に言えば、

問題となっている雇用の臨時性・常用性、更新の回数、雇用の通算期間、契約期間

管理の状況、雇用継続の期待を持たせる言動・制度の有無などが考慮されている。



(4)判例の傾向



 また、ごく短期で更新も一定範囲でしか予定されていない臨時性の強いアルバイトや

パートタイマーを除いて、更新拒絶するには一定の合理的な理由を必要とするとの判断も

定着している。たとえ第1回目でも更新拒否の合理的理由を求める判例(龍神タクシー

(異議) 事件 大阪高判平3.1.16 労判581‐36) の登場などに見られるように、

ポイントは更新の回数ではなく、長期雇用の期待を抱かせるような言動を使用者が

とっていたか否かである。


 また、労働者を採用する際に契約期間を定めたとしても、その趣旨・目的が労働者の

適性を評価・判断するためのものであるときは、期間の定めは契約の存続期間ではなく、

試用期間であるとして雇止めを制限した事例もある

神戸弘陵学園事件 最三小判平2.6.5  民集44‐4‐668)。



(5 )関連法令等


 平成15 年の労基法改正により、有期労働契約の締結及び更新・雇止めに関する

基準を定めることができる根拠規定を設けるとともに、行政官庁が有期労働契約を

締結する使用者に対して必要な助言及び指導を行うことができることとした(労基法

14 条2 項、3 項)。これを受けて「雇止めに関する基準」は、契約締結時における

更新の有無の明示、契約期間満了日の30日前における雇止めをする旨の予告、

雇止めの理由の明示等を要請している。


*1 黙認により契約が更新されるとの意味


*2 社会通念上認めることできる合理的理由がないと解雇権を濫用したこととなり

解雇が無効となるとする原則をいう。







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