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個別労働紛争解決基準としての労働判例シリーズ


                           賃金・パート労働者の賃金差別

1.ポイント



(1)パート労働者とは、

本来、

通常の労働者と比べて労働時間数ないし労働日数短い労働者をいう。

もっとも、実際には我が国においてはパートと呼ばれながらも

通常の労働者と同様な時間数と日数勤務するフルタイムパート

擬似パート)も存在する。


(2)労働内容、労働時間等が正社員とほぼ同一のフルタイムパート労働者

正社員との間の賃金格差に関しては、

労働基準法3条4条の根底にあるおよそ人はその労働に対し等しく

報われなければならないという均等待遇の理念

その格差の違法性判断において重要な判断要素として考慮される。


(3)臨時社員賃金同じ勤務年数の正社員8割以下となるときは、

使用者に許された裁量を逸脱したものとし公序良俗違反(民法90条)として

無効とされる場合がある。

2.モデル裁判例


  丸子警報器事件 長野地上田支判平8.3.15 労判690‐32

(1)事件のあらまし

 製造販売会社である使用者Yは、正社員と勤務内容や勤務時間等も変わらない

7〜28年勤務する43歳から63歳までの女性フルタイムパート労働者(労働者Xら)と

女性正社員との間において賃金格差を設けていた。そこで、XらがYに対して、Xらは

使用者の正社員と勤務内容や勤務時間等も変わらないフルタイムパート労働者として

勤務をして来たにもかかわらず、過去5年余の間に1人約230万円から550万円の賃金

差別を受けたとして、不法行為に基づく損害賠償請求として差別賃金相当額等の損害

賠償請求をした。



(2)判決の内容


 労働者側勝訴
 Xらの賃金と各年の想定女性正社員の給与額の8 割に当たる額との差額及びこれに

対する遅延損害金について請求を認容した。


 その理由を要約すると以下の通りである。


 @Yの臨時従業員制度の存在意義は認めることができる。

 AYの臨時従業員制度は、その運用において労働基準法4 条により禁止される

男女差別があったとは認められない。

 B「正社員」と「臨時社員」の区別は、労働基準法3 条にいう「社会的身分」には

該当しない 。


 C臨時社員の労働内容が女性正社員と同一であるにもかかわらず両者間に賃金

格差を設けているYの臨時従業員制度は、同一(価値) 労働同一賃金の原則の根底に

ある均等待遇の理念に違反する格差があり、公序良俗違反となる。


 Dもっとも、同一(価値)労働同一賃金の原則は公序ではないこと、均等待遇の

理念も抽象的なものであり均等に扱うための前提となる諸要素の判断に幅がある

以上使用者側の裁量を認めざるをえないことから、Xらの賃金が同じ勤務年数の女性

正社員の8 割以下となる場合に使用者の裁量が公序良俗違反になるとして、その

差額分につき違法な賃金差別を認める。


3.解 説

(1)背景


 近年のコスト削減要請の下、正社員からパートへの移行が加速しており、平成13年の

パートタイム労働者は約1, 205万人であり、全体の2 割強を占めるに至っている。しかし、

現状においてはパート労働者の基幹化が進んでいるにもかかわらず正社員とパート

労働者との間には大きな処遇格差があることが多いため、労働市場全体の不安定化や

処遇条件の低下をもたらしかねない状況にある。そのため、正社員かパート労働者かを

問わず「働きに応じた公正な処遇」を確立することが求められている。ポイントとして掲げた

のは、このような観点を取り入れたものと解されるパート労働者の賃金差別に関するモデル

裁判例を要約したものである。



(2)均等待遇の理念の具体化


 労働契約においては、どのような賃金を定めるかは基本的には契約の自由の原則が

支配するので自由に定められる

日本郵便逓送(臨時社員・損害賠償)事件 大阪地判平14.5.22 労判830‐22)。

しかし、パート労働者と通常の労働者との間においては、労働時間、労働日数が短い

ことや就業実態の差異等から生ずる合理的な範囲を超えた格差を設けることは

許されない。

但し、一般的にも、外見的に同一の労働のようでも、基幹的正社員とパ―トなどとの

間には、採用手続、人材育成、残業や異動などでの義務の存否・程度、期待される

勤続年数等において厳然たる差があり、その差異の限界を安易に2 割程度と評価

できるのか等については疑問が提起されていた。



(3)モデル裁判例の上級審の判断



 そのため、上級審での判断が注目されていたところ、平成11年11月29日東京高裁

にて次のような和解が成立し、今後、同種事案解決の一つの指針を示すものとして

注目されている。即ち、?給与を日給制から月給制にする?今後5年間に毎月5,000円

ずつの月給増額で格差を是正する?一時金の支給月数を正社員と同じにする?和解

成立後の勤続に対する退職金の計算方法を正社員と同一にし、和解成立時までの

勤続に対する退職金は従前の2.5倍に改める等である。これにより、賃金体系の

是正により5 年後には原告らの賃金は正社員の90%前後にまで改善されることに

なった(平成11年11月30日日経新聞記事参照)。



(4 )関連法令等


 この点に関連して、平成5 年に成立した「短時間労働者の雇用管理の改善等に

関する法律」においては、事業主はパートについて「通常の労働者との均衡等を考慮

して」適正な労働条件の確保等を図るための措置を講ずるものとされ(同法3 条)、パート

タイム労働指針においても、フルタイムパート労働者について「通常の労働者と同様の

就業の実態にあるにもかかわらず、処遇又は労働条件等について通常の労働者と区別

して取扱われているものについては、通常の労働者としてふさわしい処遇をするように

努める」よう(同指針2 の3)、さらに、一般パートについても「賃金、賞与、退職金に

ついては、短時間労働者の就業の実態、通常の労働者の均衡等を考慮して定める」

(同指針2 の1?)ものとされている。


 また、平成15年8 月に、パートタイム労働法に基づき事業主が講じなければならない

措置を定めたパートタイム労働指針が改正され、パートタイム労働者と正社員との均衡を

考慮した処遇の考え方が具体的に示されるとともに、事業主が講ずべき措置が追加

されている(平成15年10月1日適用)。








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