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個別労働紛争解決基準としての労働判例シリーズ


                                    女性労働・セクシュアル・ハラスメントの態様

1.ポイント



(1)セクシュアル・ハラスメントは、

仕事や行為者の職務上の地位

利用してなされた場合、違法である。


(2)強制猥褻行為性的行動を過度に要求する行為

違法である。

しかし、性的行動を誘う程度の行為は、

違法ではない場合もある。


(3)性的発言を流すことは、

職場環境の悪化を招き、

人間の尊厳を傷付ける行為と評価される。

特に、性的発言など被害者の退職

結びつく場合には、違法である。


(4)職場外就業時間外

セクシュアル・ハラスメント行為であっても、

違法とされる場合がある。

2.モデル裁判例



  福岡セクシュアル・ハラスメント(丙企画)事件 福岡地判平4.4.16 労判607‐6



(1)事件のあらまし


 原告女性Xの上司(編集長・被告Y2)は、編集業務におけるXの役割が重要になり、

かつ、A係長とXの間で業務方針が決定されることが多くなったために疎外感を持つ

ようになった。その後約2年間、Y2はXの異性関係が派手であるなどの噂を社内外に

流したため2人の関係は悪化した。

XはB専務らに関係悪化による問題の解決を求めたが、Bらは個人的な問題と捉え、

話し合いによる解決をXとY2に指示した。

Xの使用者であるY1は、話し合いによる解決が不可能な場合にはXを退社させる

との方針を決め、BはまずXに妥協の余地を打診したが、XがあくまでY2の謝罪を

求めたため、話し合いがつかなければ退社してもらう旨告げたところ、Xは退職の

意思を表明した。Y1は一方で、Y2に対して3 日間の自宅謹慎と賞与を減給する

措置を取った。そこでXは、上記行為や対応は、違法な行為、または契約違反に

当たるとして、Yらに対し、損害賠償(300万円)等の支払いを求めた。



(2)判決の内容


 労働者側勝訴


 Y1とY2が連帯して慰謝料150万円などを支払う限度で、Xの請求を認めた。


 1)Y2の責任


 Y2の発言は、異性関係などXの個人的性生活をめぐるもので、働く女性としての

Xの評価を低下させる行為である。しかも、最終的にはXをY1から退職させる結果に

及んでいる。これらは、Xの意に反してその名誉感情その他の人間の尊厳を傷付ける

行為であり、またXの職場環境を悪化させる原因であった。

Y2は一連の行為により、そのような結果を招くことを十分に考えることができた

のであり、Y2の行為には違法性を認めざるを得ない。


 2)Y1の責任
 BおよびY1代表者は、Xの上司として、その職場環境を良好に調整すべき義務を

負う立場にあった。しかし、早期に事実関係を確認するなどして、適切な職場環境の

調整方法を探り、いずれか労働者の退職という最悪の事態の発生を極力回避する

方向で努力することに、十分でないところがあった。また、Bは、話し合いの経緯から

Xがやむなく退職を口にするや、これを引き止めるでもなく、直ちに話し合いを打ち切り、

一方でY2については、解決策について特段の話し合いをせず3日間の自宅謹慎を命じた

に止まった。すると、Bらの行為についても、職場環境を調整するよう配慮する義務を

怠り、また、雇用主としてXの譲歩や犠牲において職場関係を調整しようとした点に

おいて違法性がある。したがって、Y1は、上記の違法な行為について、使用者としての

法的責任を負う。

3.解 説

(1)強制猥褻的行為のセクシュアル・ハラスメント


 業務の遂行と関連して、強姦など強制猥褻行為に該当するセクシュアル・ハラスメント

(以下S.H.) を行った場合はもちろん犯罪となる。たとえそれが勤務場所外・

勤務時間外に行われたものであっても、S.H.行為者は、法的責任を負う。

また、行為者が、被害者よりもより高い地位にある者であれば、会社もその

使用者として法的責任を負う

千葉セクハラ(不動産会社)事件 千葉地判平10.3.26 判時1658‐143。

慰謝料等330万円。

岡山セクハラ(リサイクルショップA社) 事件 岡山地判平14.11.6  労判845‐73。

損害賠償額約765万円。有限会社D( セクハラ) 事件 大分地判平14.11.14 

労判844‐92。損害賠償額220万円)。なお、違法性の高い強制猥褻行為では

なくとも、S.H.行為が反復継続される場合には、違法性の高い強く非難されるべき

S. H .があったと判断される場合もある(2年間にわたるセクハラ行為について、

熊本セクハラ(教会・幼稚園)事件 神戸地尼崎支判平15.10.7  労判860‐89。

損害賠償額350万円)。




(2)性的行為誘因のセクシュアル・ハラスメント


 直接的に肉体関係を迫る行為はS.H.として違法とされる

(岡山セクハラ(労働者派遣会社) 事件 岡山地判平14.5.15 労判832‐54。

S. H .行為者と会社に対して合わせて純粋にS.H.行為による慰謝料として

250万円の支払いが認められた)。


 他方、判断は微妙だが、次のような事件がある。泊まりがけの研修会で

社長から混浴を強要されたという事件では、社長との混浴は女性従業員多数と

原告でなされ、原告が混浴に応じたことは1,2回程度であったこと、混浴は

強要ではなく勧誘程度であったことから、原告女性の主張は認められなかった

バイオテック事件 東京地判平11.4.2 労判772‐84)。

また、会社社長の女性労働者に対する無神経な行為や言動(顧客との会食中に

「昨晩あなたはどうやって私の部屋に入ってきましたか」と発言)は違法な行為

ではないと判断された事件がある。

しかし、同じ事件で、出張先のホテルで原告をベッドに誘う行為は、地位を利用

した違法な行為と判断されている

(大阪セクハラ(歯材販売会社) 事件 大阪地判平10.10.30 労判754‐29。

慰謝料10万円)。



(3)噂の流布・不当な発言


 この問題については、モデル裁判例のとおりである。さらに、従業員同士が

男女関係にあるかのような会社取締役の発言によって、女性従業員が退職を

余儀なくされたという事件もある。裁判所は、会社には、労働者との契約上、労働者の

プライバシーが侵害されないよう、また労働者が意に反して退職することがないように

職場環境を整備する義務があるとして、損害賠償責任を認めている( 京都セクハラ

(呉服販売会社)事件 京都地判平9.4.17 労判716‐49。損害賠償約214万円)。

同様に、上司という立場を利用して部下である女性労働者に関して性的な風評を

流布する行為が女性労働者を退職に追い込む結果を招来した場合には、S.H.行為者と

会社は法的責任を負う(前掲岡山セクハラ(労働者派遣会社) 事件。女性労働者2名に

対して、慰謝料、未払い給与相当損害金、退職後1年分の逸失利益、弁護士費用

合わせて、損害賠償総額約3,010万円)。



(4)就業時間外のセクシュアル・ハラスメント


 この問題に関しては、就業後の宴席が典型的な例として挙げられる。就業時間外の

宴席二次会において、女性をソファーに押し倒す、顔を近づける、手の甲にキスをする、

スカートをたくし上げようとするなどの男性の一連の行為は、性的自由や人間の尊厳を

傷付ける違法な行為である。そして、就業時間外であっても、男性の行為は、女性に

対して職務上上位にあるという地位を利用して、業務に関連して行われた違法なもの

である。さらに裁判所は、その男性上司の責任を会社にも負わせている(大阪セクハラ

(S運送会社)事件 大阪地判平10.12.21 労判756‐26。慰謝料等110万円)。

しかし、宴席での飲酒の強要と二次会出席の強要については、飲酒を伴う宴席では

行われがちであるという程度を越えていなければ、違法な行為とまでは言えない

(東京セクハラ(A協同組合)事件 東京地判平10.10.26 労判756‐82)。











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