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個別労働紛争解決基準としての労働判例シリーズ


                      企業の再編・組織変更時の雇用保障


                                                                      解散

1.ポイント

(1)会社が解散した場合、

清算終了時

労働契約は終了する。


(2)解散した会社の

業務が、新たな会社の下

ほぼ同一の資産内容経営陣業務内容をもって継続されており、

解散会社の労働者も大部分が新会社に雇用されているような場合には、

両会社は実質的に同一であるなどとして、

新会社に雇用されなかった労働者についても

新会社の従業員としての地位を認められることがある。


(3)労働組合壊滅目的など、不当な動機目的をもって会社を解散し、

別会社で事業を継続している場合にも、

法人格の濫用に基づく法人格否認などを理由として、

解散会社の労働者別会社の従業員としての地位が認められることがある。


2.モデル裁判例



  新関西通信システムズ事件 大阪地決平6.8.5 労判668‐48

(1)事件のあらまし


 ファクシミリ等の販売業を営むA会社(旧会社)は経営悪化により倒産が危ぶまれる

状況になった。このためA会社は解散して新たに設立したY会社(被告、代表取締役は

A会社と同じ)に営業を譲渡するともに主要な資産や負債(一部を除く) をY会社に

引き継いだ。


 A会社の解散により、X( 原告) を含む同社の従業員は全員解雇された。Yは、解雇

されたA社の従業員の大部分を採用したが、Xは不採用とされた。このため、XはYを

相手として、雇用契約上の地位確認等を求めて提訴した。



(2)判決の概要


労働者側勝訴


 A会社の解散は純粋な事業継続意思の喪失、断念ということから出たものではなく、

むしろ、差押、これによる取引先の信用失墜、廃業という事態を避けるために旧会社

解散、新会社設立という法技術を利用したものであり、本件はAの事業継続のために

新会社Yを設立して大半の資産・負債を譲渡し、Aを解散したという事案である。


 更に、Y会社設立計画は、少なくともその当初はXらを嫌悪してなされたものでは

ないが、その後の経緯に照らすと、YらはA会社の解散により労働者を解雇し新たに

Yへの採否を決定することで、同一会社の継続中であれば当然問題になる解雇法理の

適用を受けずにXのような者を排除できるという意図をも併せ持って、A解散、Y設立の

機会を利用したものと推認せざるを得ない。


 以上の事情に照らせば、Xとしては労働契約がYに承継されることを期待する合理的

理由があり、実態としてもAとYに高度の実質的同一性が認められるのであり、YがAとの

法人格の別異性、事業廃止の自由、新規契約締結の自由を主張してXとの雇用関係を

否定することは、実質的に解雇法理の適用を回避するための法人格濫用と評価せざるを

えない。したがって、Xに対するAによる解雇とYによる不採用は実質において解雇に

相当するものであり、解雇法理を類推適用すべきである。


 本件事案に解雇法理を類推適用すると、実質整理解雇と解されるものの、その要件を

満たすものとはいえない。



3.解 説

(1)会社解散と労働契約関係


 労働契約の使用者である会社が解散する場合、労働契約は原則として、当該会社の

法人格の消滅(=清算の終了)をもって、自動的に終了する。労働契約の一方当事者が

存在しなくなってしまうためである。使用者が真実事業を廃止する意図で会社を解散した

ものと認められれば、そこに組合壊滅目的等の不当な動機・目的が併存したとしても、

解散の効力は影響を受けない

三協紙器事件 東京高決昭37.12.4 労民集13‐6‐1172など)。なお、会社法人格が

消滅しない間に行われた解散を理由とする解雇については、解散の決定に違法な点が

ない場合にも解雇権濫用にあたり無効とされる余地がある(会社による解散の決定

自体に違法な点はないが、労働組合や従業員との誠実な交渉を尽くす信義則上の

義務が果たされていないとして解散を理由とする解雇を無効とした例として、

グリン製菓事件 大阪地決平10.7.7 労判747‐50など)。



(2)別会社で事業が継続される場合


 一方、解散した会社の資産等が別会社に譲渡され、この別会社の下で、解散会社の

事業がほぼ同一の態様で継続されることもある。この場合、解散会社の労働者の雇用が

別会社で継続されるか否かは、形式的には別会社との間で新たな労働契約が締結

されるか否かの問題であり、別会社は採用の自由に基づいて採否を自由に決定できる

ことになるが、この帰結をそのまま認めてよいかは問題となる。


 裁判例において、この点に関する確立した判断枠組みは存在しておらず、別会社での

雇用継続の是非を検討するための法律構成としては、以下のようにいくつかのものが

見られる。



 第一に、営業譲渡法理の適用により、解散会社の労働者の労働契約を別会社に承継

するとの黙示の合意が存在するものとして、別会社での雇用継続が肯定されることが

ある

タジマヤ事件 大阪地判平11.12.8 労判777‐25など。

(72)[ 企業の再編・組織変更時の雇用保障] 参照)。


 第二に、法人格否認法理の適用により、解散会社の法人格が形骸化している場合や、

組合壊滅目的、解雇法理の適用回避目的等の不当な動機・目的で解散が行われた

場合に、別会社での雇用継続が認められることがある

第一交通産業(佐野第一交通)事件 大阪地岸和田支決平15.9.10 労判861‐11)。


 第三に、裁判例の中には、解散会社と、その事業を継続する別会社の間に、資本

関係、資産内容、経営陣、業務内容等の点で実質的同一性が認められることを理由と

して、解散会社の労働者の別会社への承継を認めたり、別会社が解散会社の労働者を

不採用とすることに対して解雇法理の適用を認めたりするものも存在する

日進工機事件 奈良地決平11.1.11 労判753‐15など。実質的同一性の否定例と

して、

東北造船事件
 仙台地決昭63.7.1 労判526‐38)。


 モデル裁判例は、

@Yへの雇用承継に対するXの合理的期待の存在、

A解雇法理の適用回避を目的とした法人格濫用、

BAとYの高度の実質的同一性、を理由として、Xに対するAによる解雇とYによる

不採用という一連の手続は実質的に解雇と同視できるとし、解雇権濫用法理を

類推適用したものであり、上記の考え方を組み合わせることで、Xの雇用がYの下で

継続されるという結論を導いたものといえる。




(3 )不当労働行為制度上の扱い


 使用者が労働組合壊滅目的で会社を解散し、労働組合員を除外して別会社で

事業を継続することは、不利益取扱い(労働組合法7条1号)、支配介入(同3号)の

不当労働行為となる。この場合、労働委員会は、救済命令として、別会社への組合員の

雇い入れ等を使用者に命令することができる。







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