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個別労働紛争解決基準としての労働判例シリーズ


                                                        年次有給休暇・計画年休



1.ポイント

 
労使協定によって、

個々の労働者年次有給休暇の取得の日があらかじめ特定されると、

その特定された年休の日については、

一人一人の労働者の時季指定権と使用者の時季変更権なくなる


 このことは、年休の計画的な取得を定めた労使協定適用がある職場

すべての労働者におよぶ



2.モデル裁判例



  三菱重工業長崎造船所事件 福岡高判平6.3.24 労民集45‐1・2‐123



(1)事件のあらまし


 造船業を営む第一審被告の会社Yは、従業員の約98%を組織する

A組合と取り結んだ協定に基づいて、

A組合の組合員と組合員ではない管理職者を対象として、

年休のうち2日分を夏期一斉休暇として実施してきた。

そして、昭和63年の労働基準法(以下、労基法)改正をきっかけに、

すべての従業員を対象として、平成元年7月25日と26日の2日間を

計画年休とする協定をA組合と取り結んだ。


 Yは、少数派組合のB組合とも同じ内容の協定を取り結ぼうと

話し合ったが、結局、合意には至らなかった。そこでYは、年休に

関する就業規則に計画年休の規定を新しく作ることにした。


 そのような状況の下で、少数派組合のB組合に所属する第一審原告の

労働者Xは、平成元年6 月27日および28日に年休を取得して勤務しなかった。

これを受けて、Yは、Xが持っている年休日数は、計画年休として当初指定された

2日分を除くと1日しかなかったとして、6 月28日については欠勤として取り扱い、

その日の分の賃金を差し引いた。



 そこでXは、計画年休は違法・無効なものであり、自分が残存して持っている

年休日数の確認を求めるとともに、持っている年休日数を超えて休暇を取得

したことで差し引かれた賃金の支払いをYに求めて訴えを起こした。



(2)判決の内容


労働者側敗訴


 労働者の訴えは全面的に斥けられた。Xが残存して持っている年休日数に

ついて、Y主張の日数(1日)が認められ、差し引かれた賃金の支払請求は

認められなかった。


 労使協定によって、年休の取得時季が集団的・統一的に特定されると、

その日数について、一人一人の労働者の年休時季の指定と、会社の年休

時季の変更はできなくなる。このことは、年休の計画的取得を定めた労使

協定により、労使協定の適用がある職場のすべての労働者に及ぶ。


 職場の労働者の約98%で組織される労働組合と、会社との間で取り結ばれた

労基法39条5項所定の労使協定にしたがって行われた年休の計画的な付与に

ついて、その労使協定の効果は、適用対象とされた職場のすべての労働者に

及ぶ。


 そして、このような年休の計画的取得に反対する労働組合に所属する労働者を、

このような協定に従わせることが著しく不合理となるような特別の事情が

認められたり、協定の内容が著しく不公正であって年休の計画的取得に反対

する労働者に及ぼすことが計画年休制度の趣旨を無視したりするような事情

はない。

従って、年休の計画的取得に反対する労働者も、このような内容を定めた

協定に従わなければならない。




3.解 説

 労働基準法39条5項に従って計画年休が取り決められている限り、

その適用対象となっている事業場のすべての労働者の年休の時季指定と、

会社の年休の時季変更は、できなくなる。モデル裁判例に見られる通りである。


 ところで、

全日本空輸(大阪空港支店)事件(大阪地判平10.9.30 労判748‐80)において、

裁判所は、計画年休制度の運用を非常に厳しく捉えている。

この事件で、会社は、公休・ 年休・夏季特別休暇などを組み合わせて、

連続16日を限度に取得できる長期休暇制度を設けていた。裁判所は、

次のように述べて、この事件における計画年休制度を認めなかった。


 @計画年休とは、労働者に対して年休を与える時季を書面の協定で

定めれば、その時季における労働日が年休として確定して、労働者は時季

指定ができなくなる(その反面として、使用者の年休時季の変更もできなくなる)。

A 計画年休には@ のような法律効果があるので、計画年休協定では、

計画年休を与える時季、その具体的日数を明確にしなければならない。

Bその上で、この事件における計画年休協定は、長期休暇の取得時季を

通年とし、具体的内容は希望者の多くが取得できるよう、各部・課別に基準を

設定することにしていて、協定の中に定められておらず、年休を与える時季や

具体的日数が明確にされているとはいえない。Cしたがって、この事件における

計画年休協定は、労働基準法上の要件を満たしているとはいえない。


 しかし、年休のうち5日を越える日数については、労働組合と会社との間で、

自主的・自律的に年休取得の促進を図るべく取り扱うことができるものである

から、この事件における裁判所の考え方のように、計画年休制度を厳しく考えて

よいのか、よく考えてみる必要があるだろう。










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