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個別労働紛争解決基準としての労働判例シリーズ


                                              労働時間・適用除外



1.ポイント



(1)労基法上労働時間休憩及び休日関する規定は、

@農業、畜産・水産業の事業に従事する者林業は含まれない、

A管理・監督者、及び機密の事務を取り扱う者

B監視または断続的労働に従事する者で使用者が行政官庁の許可を受けたもの

には適用されない

ただし

深夜業及び年休に関する規定はこれらの者にも適用される。


(2)管理・監督者に該当するか否かは、

経営方針の決定に参加し、

または

労務管理上の指揮権限を有するなど、経営者と一体的な立場にあるかどうかを、

肩書の名称に関わらず、

実態に即して検討することにより判断される。

具体的事例では、

勤務時間について自由裁量を有するか、

役職手当等によりその地位にふさわしい待遇を受けているか等の

点も重視される。



(3)監視・断続的労働従事者に対する適用除外には

行政官庁の許可が必要である。

許可を得ない限り、

実態が監視・断続的労働であっても、

労基法の規制を受ける。
.




2.モデル裁判例


  株式会社ほるぷ事件 東京地判平9.8.1 労判722‐62

(1)事件のあらまし


 本件は、書籍等の訪問販売を主な業務とするY会社のA支店販売主任である

Xが、Y社に対して時間外手当及び休日手当を請求した事案である。

Yは、Xは労基法41条2号に定める管理・監督者に該当するため、

これら手当を支払う義務はないと主張した。



(2)判決の内容


労働者側勝訴


 労基法41条2号にいう管理・監督者とは、労基法が規制する

労働時間、休憩、休日等の枠を超えて活動することが当然とされる

程度に、企業経営上重要な職務と責任を有し、現実の勤務形態も

その規制になじまないような立場にある者をいう。そして、管理・監督者か

否かは、経営方針の決定に参画したり労務管理上の指揮権限を有する等、

経営者と一体的な立場にあり、出退勤について厳格な規制を受けず自己の

勤務時間について自由裁量を有する地位にあるか否か等を、具体的勤務

実態に即して検討すべきものである。


 Xは、YのA支店における販売主任[部下の指導・育成を行うとされる職種]・

資格4級[管理者としての自覚と旺盛な意欲をもって業務向上に貢献しうるとの

条件を満たす者] である。Xは、A支店に支店長が常駐していないため、支店長

会議に出席することもあり、また、支店内会議の資料の作成等を行い、朝礼時に

支店長からの指示事項を伝えるなどしていた。しかし、Xは、タイムカードにより

厳格な勤務時間管理を受けており、自己の勤務時間について自由裁量を

有していなかった。また、支店の営業方針を決定する権限や、具体的な支店の

販売計画等に関して独自にA支店課長に対して指揮命令を行う権限をもっていた

とは認められない。したがって、Xは経営者と一体的な立場にあったものと

認められず、管理・監督者には該当しない。

3.解 説



(1)管理・監督者の判断基準


 管理・監督者に該当するか否かの判断について、行政通達は、

ポイント.に掲げたように、当該労働者が経営者と一体的な立場にあるか

否かを実態に即して判断すべきとしている。この判断に当たっては、出退勤等に

ついて厳格な管理を受けているか否か(昭22.9.13基発17号) や、役職手当等の

支給や賞与についての優遇などにより管理・監督者の地位にふさわしい待遇を

受けているか否か(昭63.3.14基発150号)も重視される。


 裁判例は一般に、管理・監督者か否かの判断を厳格に行い、

容易に管理・監督者とは認めない傾向がある。モデル裁判例の他に

管理・監督者に該当するか否かが争われた裁判例として、以下のものがある。


静岡銀行事件(静岡地判昭53.3.28 労民集29‐3‐273)


  銀行の支店長代理相当職の者について、通常の就業時間に拘束されて

出退勤の自由がないこと、並びに、部下の人事及びその考課の仕事に関与

していない等、経営者と一体となって銀行経営を左右するような仕事には全く

携わっておらず、管理・監督者でないとした事例。


日本コンベンションサービス(割増賃金請求) 事件( 大阪高判平12.6.30 労判792‐103)
  「マネージャー職」の労働者について、タイムカードの打刻を免除されていたが、

実際には業務量の増大に伴い残業を余儀なくされ、出退勤の自由はなかった等の

理由から、管理・監督者でないとされた事例。


風月荘事件(大阪地判平13.3.26 労判810‐41)


  カラオケ店店長につき、他の従業員と比べて格段に高額の風紀手当

(月13万円)が支給されているが、他方で、会社の営業方針等の決定に

参画する権限はなく、タイムカード等による時間管理を受け、日常の就労

状況についても査定を受けており、当該店舗の従業員に対する人事権も

なかったことから、管理・監督者ではないとされた事例。


東建ジオテック事件(東京地判平14.3.28 労判827‐74)


  地質調査会社の「係長」「課長補佐」「次長、課長待遇調査役」

「次長待遇調査役」の地位にある者につき、部下の評価を行うなど

労務管理の一端を担っていたものの経営者と一体的立場にあったとは

いえず、タイムカードの打刻は免除されていたが、遅刻早退につき支店長ら

による勤怠管理を受けており、勤務時間について自由裁量を有していたとも

言えない等の理由で、管理・監督者でないとされた事例。




(2)監視・断続的労働
 「監視労働」は、原則として一定部署にあって監視することを本来の業務とし、

常態として身体の疲労または精神的緊張の少ない労働を指す

(昭和22.9.13発基第17号)。

「断続的労働」とは、実作業が間欠的に行われて手待ち時間が多い労働を

指す。監視・断続的労働に当たるとされうる職種としては、守衛、重役専用の

自動車運転手、団地管理人、ビル警備員などがある。

静岡市教職員事件(最三小判昭47.12.26 民集26‐10‐2096)では、

公立小中学校教職員の修学旅行・遠足における引率の勤務は、

監視・断続的労働に当たらないと判断されている。


 監視・断続的労働について適用除外を受けるためには、行政官庁の

許可が必要である。したがって、実質的に監視・断続的労働に該当しても

許可を得ていない限り、労働時間等の規制が適用される。例えば、一日に

8時間を越えて労働させた場合、使用者は割増賃金の支払い義務を負う

共立メンテナンス事件 大阪地判平8.10.2 労判706‐45)。










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