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個別労働紛争解決基準としての労働判例シリーズ


                                               労働時間・休日





1.ポイント




(1)労働契約上休日が特定されている場合にも、

業務上必要な場合には休日の振替をなしうることを

就業規則等で規定し、

あらかじめ他の日を休日として特定した上で振り替える場合には、

労働者の個別的同意がなくても休日を労働日とすることができる



(2)(1)のように休日振替を行う場合、

振替がなされた後で、

労基法35条が定める最低基準週一回の休日または

四週間を通じて四日の休日)が満たされていれば

労基法上の休日労働は発生しないので、

三六協定の締結や休日割増賃金の支払いは必要ない。




(3)あらかじめ振替日を特定しないまま

就業規則等で休日とされている日労働させ

事後的に休日を与える場合(一般的に「代休」といわれる場合)には、

休日を労働日に変更しないで労働させることになる。

したがって、それが労基法35条によって義務づけられる休日である場合には、

労基法上の休日労働となり、

三六協定の締結・届出と休日割増賃金の支払いが必要となる。







2.モデル裁判例





  三菱重工業横浜造船所事件 横浜地判昭55.3.28 労判339‐20

(1)事件のあらまし


 被告側会社Y横浜造船所では、就業規則により土日が休日と定められていた。

Y横浜造船所では、昭和49年4月11日・12日に交通ゼネストが実施されるため、

両日における操業が困難であると判断した。そこでYは、あらかじめ、11日・12日の

両日( 木曜日及び金曜日) を振替休日とし、13日・14日の両日(土曜日及び日曜日) を

振替出勤日とする方針を決定し、4 月3 日以降その旨を従業員に通知をした。

なお、Y横浜造船所の就業規則には、業務上必要がある場合は休日を他の日に

振り替えることがある、との規定が存在していた。


 Yは、原告側労働者Xらが4 月13日・14日に出勤しなかったことから、

この2 日分の賃金をカットした。Xらが休日振替は無効であると主張して、

カットされた賃金の支払いを求めて提訴した。



(2)判決の内容


労働者側敗訴


 Y社就業規則は、休日振替を無条件で許容するものではなく、

業務上必要のある場合にのみ振り替えうるとするものであり、

企業の運営上、休日を変更して他に振り替える必要の生ずる場合の

あることは容易に理解しうるところであるから、この就業規則の定め自体が

無効であるとは解しえない。


 使用者は、本件就業規則所定の条件(業務上の必要性)が満たされる限り

、特定された休日を振り替えることができるものというべく、たとえ、

個々の振替の際に労働者の同意、了解がなくとも、直ちに休日振替が違法、

無効となるいわれはない。


3.解 説

(1)週休制の原則と休日の特定


 労基法35条1項は、毎週少なくとも週一回の休日を与えなければならない

ことを定め、同条2項は、1項の例外として、四週間を通じ四日の休日を与える

ことを許容している。今日、多くの企業では週休二日制が採用されているが、

労基法が義務づけているのは週一回の休日である。したがって、例えば、

就業規則において、土曜日及び日曜日が休日とされている場合(土日週休

二日制)であっても、労基法35条により付与すべき休日(法定休日)は、土曜日

または日曜日のいずれか一方のみである。
 労基法上、休日となる日をあらかじめ特定することは必要とされていないが、

行政指導においては、週休制の趣旨に鑑み、就業規則により休日をできるだけ

特定させるという方針がとられている。




(2)休日振替と労働者の個別的同意の要否
 休日が特定されている場合、それを振り替えること、すなわち他の労働日を

休日にするかわりに就業規則上特定されている休日を労働日とすることができるか

否か、という問題が生じる。モデル裁判例は、「業務上必要のある場合には休日振替を

行う」という就業規則の定めは有効であり、労働契約の内容になるとした。そして、

この就業規則の規定に基づいて、あらかじめ別の日を休日として特定してなされる限り、

使用者は個々の労働者の同意がなくても休日を振り替えることができるとするもの

である。

行政解釈も同様の立場に立っている(昭23.4.19基収1397号など)。




(3)休日振替と労基法上の規制との関係


 休日振替にあたっては、振り替えた後の状態が、労基法35条の定める最低

基準を満たすこと、すなわち週一回の休日または四週間を通じて四日の休日が

与えられることが必要である。モデル裁判例も、振替後の状態が35条に違反して

いないことを確認している。


 あらかじめ休日振替が行われ、かつ上記の基準が満たされる場合には、

就業規則において休日とされている日は通常の労働日となる。したがって、


労基法上の休日労働は発生せず、三六協定の締結や休日割増賃金の支払いは

不要である。




(4)「代休」と労基法上の規制との関係



 これに対して、あらかじめ振替休日を特定しないまま、就業規則上休日と

されている日に労働させ、事後的に休日を与える場合(一般的に「代休」と

いわれる場合)には、就業規則上の休日は労働日に変更されないので、労働者を

休日に労働させることになる。したがって、その休日が労基法35条により付与を

義務づけられる休日に該当する場合は、労基法上の休日労働となり、三六協定の


締結・届出と休日割増賃金の支払いが必要となる。









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