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個別労働紛争解決基準としての労働判例シリーズ


                                                           労働時間・休憩



1.ポイント



(1)休憩時間とは、

労働からの解放が完全に保障されている時間であり、

その自由利用の原則が労基法において定められている。



(2)休憩時間中であっても

労働者は、企業施設管理及び規律保持の観点からの制約には

服する必要がある。

このような制約の例としては、

ビラ配布・政治活動の許可制

保安等を目的とする一定区域への立入禁止

指定場所での喫煙などが挙げられる。



(3)上記の制約に形式的には違反する行為であっても、

実質的にみて企業における秩序を乱す恐れがない場合

またはその恐れが極めて少ない場合には、

違反行為とはならない

したがって、この行為を理由とする懲戒処分は違法無効となる。



2.モデル裁判例


  電電公社目黒電報電話局事件 最三小判昭52.12.13 民集31‐7‐974

(1)事件のあらまし


 原告側労働者Xは、被告側使用者Yの目黒電報電話局に勤務する職員である。

Xは、「ベトナム侵略反対、米軍立川基地拡張阻止」と書かれたプレートを着用

して勤務したところ、これを取り外すよう上司から再三注意を受けた。

Xはこの命令に抗議する目的で、

「職場の皆さんへの訴え」と題したビラ数十枚を、

休憩時間中に職場内の休憩室と食堂で配布した。

Yの就業規則には、「職員が職場内で演説やビラ配布等を行う場合には

事前に管理責任者の許可を受けなければならない」という内容の規定が

あり、YはXのビラ配布が就業規則に違反し、

懲戒事由に該当するとして、Xを戒告処分に付した。


 Xは、休憩時間中のビラ配布を懲戒処分の対象とすることは

、労基法34条3項の定める休憩時間自由利用の原則に違反すると

主張して提訴した。



(2)判決の内容


労働者側敗訴


 従業員は休憩時間を自由に利用することができ、

使用者はこれを妨げたり、休憩時間の自由利用として許される行為を

とらえて懲戒処分をすることは許されない。

しかし、休憩時間の自由な利用も、

企業施設内で行われる場合には、使用者の企業施設に対する管理権の

合理的な行使として認められる範囲で制約を受ける。


 局所内において演説やビラ配布等を行うことは、

休憩時間中であっても、局所内の施設の管理を妨げるおそれがあり、

更に、他の職員の休憩時間の自由利用を妨げてその後の作業能率を

低下させ、その内容いかんによっては企業の運営に支障をきたし企業秩序を

乱すおそれがある。したがって、休憩時間中のビラ配布等を管理者の許可に

かからせることは、合理的な制約である。


 Xの行為は、形式的にみて事前許可制を定めた就業規則に違反するが、

実質的にビラの配布が職場の秩序風紀を乱す恐れがないという特別な

事情が認められるときは、就業規則の違反になるとは言えない。

しかし、本件ビラ配布は、上司の適法な命令に抗議する目的で行われたもので

あり、ビラの内容も上司への抗議や局所内の政治活動をあおること等を

含んでいた以上、休憩時間中に平穏な態様で行われたとしても企業秩序を

乱すおそれがある。


3.解 説

(1)休憩時間自由利用の原則


 労基法34条のいう休憩時間とは、労働からの解放が完全に保障されている

時間である(労働時間との区別については(20)[ 労働時間] 参照)。

労基法34条3項は休憩時間の自由利用の原則を定め、使用者が休憩時間中の

労働者の行動に制約を加えることを禁じている。行政解釈は、休憩時間中の

外出について所属長の許可を受けさせることは、事業場内において自由に

休憩しうる場合には、必ずしも違法にならないとする(昭23.10.30基発第1575号)。

しかし、学説の多数は原則として外出も自由であり、合理的理由がある場合に

届出制や客観的基準に基づく許可制をとることのみが許容されると主張している。




(2)自由利用の原則に対する制約の可否


 労働者は、企業施設内で休憩する場合においては、使用者による施設管理や

職場の規律保持のために必要な制約には服する。また、当然ながら他の労働者の

休憩を妨げてはならない。


 モデル裁判例に掲げた

電電公社目黒電報電話局事件では、職場内でのビラ配布を許可制とする

就業規則の規定が休憩自由利用の原則に違反しないか否かが争われた。

最高裁は、このような規制が企業施設管理及び規律保持の観点から許されることを、

一般論として明らかにしている。この種の規制の具体例としては、モデル裁判例の

ようなビラ配布・政治活動の許可制の他、保安等を目的とする一定区域への立入禁止、

指定場所での喫煙などが挙げられる。



(3)規制違反の具体的判断



 なお、事業場内でのビラ配布や政治活動については、それが形式的には

就業規則の規定(許可制・禁止など)に違反する場合であっても、実質的に

みれば職場の秩序を乱す恐れがない場合、またはその恐れが極めて少ない

場合には、就業規則に違反しないとされる。したがって、そのような行為を理由と

する懲戒処分は懲戒権の濫用となる。モデル裁判例も、「形式的に……

[ ビラ配布の事前許可制に] 違反するようにみえる場合でも、ビラの配布が

局所内の秩序風紀を乱す恐れのない特別の事情が認められるときは」違反に

ならないとしている。同様の一般論を述べると共に、昼食休憩時間中に食堂内で

政党の選挙ビラを平穏に配布した行為をビラ配布の許可制に違反しないと判断した

裁判例として、


明治乳業事件(最三小判昭58.11.1  労判417‐21)がある。











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