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個別労働紛争解決基準としての労働判例シリーズ


                                                 採用・職業紹介

                                                                                             (職業安定法) 適用   



1.ポイント



(1)港湾運送、建設業務、その他命令で定める職業を除き、

有料紹介事業は、原則として自由化された

ただし、業務を行う者は厚生労働大臣の許可が必要である。


(2)スカウト行為およびアウトプレースメントのように職業紹介の

付加的サービスを伴う事業も、職業安定法上の職業紹介であるから、

職業安定法の適用がある。



2.モデル裁判例




  エグゼクティブ・サーチ事件 最二小判平6.4.22 民集48‐3‐944



(1)事件のあらまし


 一審原告X(控訴人・上告人)は、企業の依頼に応じてその求める

人材を探索し、勧奨して、求人企業に就職させるいわゆる

人材スカウト等を目的とする会社であり、有料職業紹介事業を行うことに

つき、旧職業安定法32条1項但書に基づく労働大臣(当時)の許可を得ている。

一審被告Y(被控訴人・被上告人)は、内科及び婦人科の診療所を

経営する者である。


 Xは、Yに対し診療所の院長として勤務することのできる医師を探索し、

紹介する旨を約し、医師Aを紹介した。

その結果、Yは、Aを院長として年俸1,000万円で雇用する旨の契約を

締結した。

Y は、X に対し、A の就職に至るまでの上告人の業務

( 以下「本件業務」という。) の対価として、調査活動費の名目で50 万円、

報酬の名目で150 万円の合計200 万円を支払うことを約したにも

かかわらず、Y は、本件業務は、旧職業安定法5 条1 項、32 条1 項但書の

規定する職業紹介に当たるから、

その報酬額は、同条6 項、同法施行規則24 条14 項、別表第3 により、

A の6 ヵ月分の賃金の10.1 パーセント相当額である50 万5,000 円が

最高額であり、これを超える金額については支払義務がないと主張して、

右最高額を超える部分の支払いを拒むに至った。


 そこで、Xは、報酬額と遅延損害金の支払いを求めて訴えを提起した。



(2)判決の内容 


労働者側敗訴


 旧職業安定法32条6項、同法施行規則24条14項、別表3の定める手数料の

最高額を超える報酬契約は、超える部分につき無効であるとし、

50 万5,000円及びこれに対する商事法定利率年6分の割合による額の

支払いのみを認めた第二審の判決を支持した。


 職業安定法にいう職業紹介におけるあっ旋とは、求人者と求職者との間に

おける雇用関係成立のための便宜を図り、その成立を容易にさせる

行為一般を指すものであり、あっ旋には、求人者と求職者を引き合わせる

行為のみならず、いわゆるスカウト行為も含まれる。


 したがって、Aに対するスカウト行為等は、職業紹介における

あっ旋に当たる。


 旧職業安定法32条6項は、有料職業紹介の手数料契約のうち

労働大臣(当時)が中央職業安定審議会に諮問の上定める手数料の

最高額を超える部分の私法上の効力を否定し、契約の効力を所定

最高額の範囲内においてのみ認めるものと解するのが相当である。



3.解 説

(1)職業安定法の職業紹介


 近年、労働者派遣業・人材スカウト業などの多種多様な

人材ビジネスが出現し、発展してきている。なかでも、ヘッドハンティング業は、

求人企業から委託を受け、特定の専門技術を有する労働者に、

就職するように勧奨することを事業内容とするものである。


 モデル裁判例は、スカウト(ヘッドハンティング) 行為が職業安定法に

いう職業紹介に当たるか否かが争われた事件である。最高裁は、これを

職業安定法の職業紹介におけるあっ旋に該当すると述べた。そして、

有料職業紹介の手数料規制が求職者の保護のみならず求人者の利益を


も保護する趣旨を含むものと解し、求人者と紹介者間の手数料契約の

規制に違反する部分の効力を否定した。



(2)職業紹介制度の見直し


 旧職業安定法32条は、弊害の多かった有料職業紹介事業を

原則として禁止し、例外として特別の技術などを必要とする職業に

関して労働大臣(当時)の許可を得て有料職業紹介ができるもので

あった。これによって、民間の有料職業紹介事業は、その対象とする

職業を制限され、国の厳格な規制の下に置かれてきた。


 しかし、産業構造の変化等に伴い、労働力需給のミスマッチが拡大し、

職業紹介制度そのものについても見直しの気運が高まり、1997年には、

有料職業紹介事業の原則自由化や許可制・手数料規制の緩和を内容と

する職安法施行規則24条の改正が実現し、その後2000年に職業安定法

自体も改正されるに至った。




(3)改正職業安定法


 改正職業安定法におけるもっとも大きな変更点は、有料職業紹介に

関する部分である。これまでは、限定的に列挙されていた事業にのみ

有料職業紹介が認められる、いわゆる、ポジティブリスト方式が採用されていた

が、今回の改正で、一定の職業以外は原則自由化される、いわゆる

ネガティブリスト方式が導入され、港湾運送、建設業務、その他命令で

定める職業を除き(32条の11)有料職業紹介事業が原則として自由化

された。ただし、事業を行う者への厚生労働大臣の許可制度はそのまま

維持されている(30条)。



 また、許可の有効期間が従来の1年から3年に、更新後の有効期間が

5年に延長されている。


 さらに、改正職業安定法48条に基づく指針は、スカウト行為および


アウトプレースメントも職業紹介に該当することを明らかにしている。

(4)紹介手数料


 紹介手数料については基本的サービスを行う事業は従来どおり

命令による上限( 職安則別表第2)の範囲内で徴収する方法で行う

ことができ、付加的サービスをあわせて行う事業はあらかじめ厚生労働大臣に

届け出た手数料表による方法を選択することができる(32条の3第1項、第4項)。

ただし、手数料表に基づく手数料が著しく不当な場合は、厚生労働大臣による

変更命令がなされうる(同条4項)。また、原則として求職者からは手数料を徴収

してはならないことが規定されている(32条の3第2項)。
 モデル裁判例のスカウト等の行為については、前述のように指針において

職業安定法の有料職業紹介に該当することが明言されている。したがって、

Aに対するスカウト行為等は、あらかじめ厚生労働大臣に届け出た手数料表に

よってなされねばならない。平成11年11月17日職発815号によれば、支払賃金額

の5割、1年をこえる雇用にあっては1年間の支払賃金の5割を上限に手数料を

受け取ることができるとされている。モデル裁判例では、Aが年俸1, 000万円で

契約を締結したとあるので、あらかじめ厚生労働大臣に届出をしていればXは

500万円を限度に手数料をYから徴収できることになる。したがって、この事件が

法改正後の事例であったならば、Xは、あらかじめ厚生労働大臣に手数料表を

届け出ることによって、約束の200万円の手数料を徴収することが可能であったと

考えられる。










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