社会保険労務士・行政書士 田村事務所トップへ




個別労働紛争解決基準としての労働判例シリーズ


                就業規則の解雇事由の拘束力

1.ポイント


(1)就業規則に定められた解雇事由の定めは、

解雇事由を限定的に列挙したもの(限定列挙)か、

例示的に列挙したもの(例示列挙)かが問題となる。

裁判例では、普通解雇の場合、限定列挙と解するものが多いが、

例示列挙と解するものも見られる。



(2)懲戒解雇の場合には、懲戒解雇事由の定め限定列挙である。


2.モデル裁判例


  東芝柳町工場事件 最一小判昭49.7.22 民集28‐5‐927

(1)事件のあらまし


 原告労働者Xらは、電気機器等の製造販売会社Yに

契約期間2ヵ月の臨時従業員として雇用され、

最も少ない者で5回、最も多いもので23回の更新を経て

1年ないし3年8ヵ月の間雇用が継続された後、

Yによって契約更新を拒絶された。

Xらは、この更新拒絶は実質的に解雇に他ならないなどと主張し、

労働契約の存在確認等を求めて提訴した。



(2)判決の内容 

労働者側勝訴


 最高裁は、Xらの労働契約は期間満了ごとに更新を

重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に

異ならない状態で存在していたものであり、その雇い止め(更新拒絶) には

解雇に関する法理(解雇権濫用法理) が類推適用されるとした上で、

本件雇い止めの根拠・効力について次のような判断を示した。


 就業規則に解雇事由が明示されている場合には、

解雇は就業規則の適用として行われるものであり、

したがってその効力も右解雇事由の存否のいかんによって決せられるべきであるが、

右事由に形式的に該当する場合でも、それを理由とする解雇が

著しく苛酷にわたる等相当でないときは解雇権を行使することができない

ものと解すべきである。


 Yの臨時社員就業規則8条は、臨時従業員の解雇事由を列挙しており、

その3号は契約期間の満了を解雇事由として掲げているが、

本件各労働契約が期間の満了毎に更新を重ねて実質上

期間の定めのない契約と異ならない状態にあったこと等に

かんがみると、Yにおいて従来の取扱いを変更して右条項を

発動してもやむをえないと認められる特段の事情の存しないかぎり、

期間満了を理由に雇い止めをすることは

信義則上からも許されない。

この点につきYは何ら主張立証していない。


 Yの臨時社員就業規則8条は、( 上記の3号以外に)

期間中における解雇事由を列記しているから、

これらの事由に該当する場合には雇い止めをすることも

許されるというべきであるが、原判決はYの主張する本件

各雇い止めの理由がこれらの事由に該当しないとしており、

その判断は相当というべきである。

3.解 説




(1)労働基準法における解雇事由の扱い


 労働基準法は、各企業(事業場)における解雇に関する基準を

明確化し、無用な紛争の防止を図るなどの観点から、

解雇事由についていくつかの規定を置いている。 

まず、労働基準法89条は、就業規則作成義務を負う使用者に対し、

解雇事由を「退職に関する事項」の一環として就業規則に記載することを

義務付けている(3号)。

解雇事由は、労働契約締結時に書面をもって労働者に明示することも

必要とされる(労基法15条1項、労基則5条)。

また、労働者を解雇した使用者は、解雇された労働者から請求が

あった場合、当該解雇の理由を記載した証明書を発行しなければならない

(労基法22条。この規定は、解雇予告期間中も適用がある)。



(2)就業規則上の解雇事由の意義


 上記各規定のうち、就業規則上の解雇事由の定めをめぐっては、

それが解雇事由を限定的に列挙したものであるか(限定列挙説)、

あるいは例示的に列挙したものか(例示列挙説)が問題になる。

限定列挙説に立つ場合には、

使用者は就業規則上の解雇事由のいずれにも該当しない理由で

労働者を解雇することができないという帰結になる。

これに対し、例示列挙説に立てば、就業規則上の解雇事由の

いずれにも該当しない解雇理由も、解雇権濫用法理の中で、

解雇理由として考慮されうることになる(このほか、

いずれの立場に立つかによって裁判時の立証責任の分配に

違いが生じるとする見解もある)。なお、実際上は就業規則に

列挙された解雇事由の中に「その他前各号に準ずる場合」などの

形で包括的な解雇事由の定めが置かれることが多いが、

この場合には限定列挙説と例示列挙説のいずれをとっても

大きな差は生じない。




(3)普通解雇の場合


 普通解雇(懲戒解雇以外の解雇)については、

裁判例の多くは限定列挙説に立っている。


モデル裁判例は、有期労働契約の雇い止めに解雇法理を

類推適用する中で、就業規則上に解雇事由が列挙されている

場合には、解雇は当該就業規則を適用して行われる(が、

就業規則上の解雇事由に形式的に該当するとしても解雇が

認められない場合もありうる)との判断を示したものであり、


限定列挙説的な立場に立つと評しうる最高裁の判決である。

もっとも、本件では就業規則中に列挙されていない事由に

基づいて解雇(雇い止め)が行われたわけではないので、

限定列挙説をとるか例示列挙説をとるかによって本件の結論が

直ちに左右されるわけではない。したがって、本判決をもって、

最高裁が限定列挙説に立つことを明確に示したものということは

できないと考えられる。


 下級審裁判例をみると、

限定列挙説に立つ最近の裁判例として、

茨木消費者クラブ事件(大阪地決平5.3.22 労経速1490‐21)、

中央タクシー事件(徳島地決平9.6.6 労判727‐77) などがある。

他方、例示列挙説に立つ裁判例も見られ、

最近の裁判例としては、

ナショナル・ウエストミンスター銀行(第3次仮処分)事件(東京地決平12.1.21 労判782‐23)、

朝日新聞社事件
(大阪地判平13.3.30 労経速1774‐3)などがある。



(4)懲戒解雇の場合


 一方、懲戒処分として行われる懲戒解雇については、

懲戒処分を行うための要件として、就業規則等に処分事由が

明示されていることが求められることから、学説・判例とも、

就業規則上の懲戒解雇事由の定めは限定列挙であると解する

ことで一致している。



(5)労働協約上の解雇事由


 労働協約で解雇事由が定められている場合についても、

労働組合との間で解雇事由を限定する合意がなされ、

それが労働条件の基準として労働契約に適用される

(労組法16条)と解されるので、

当該定めは限定列挙と考えられる。











   行 政 書 士 田村事務所
     社会保険労務士田村事務所
               
       〒531-0072     大阪市北区豊崎三丁目20−9 (三栄ビル8階)
   
     TEL(06)6377−3421         FAX(06)6377−3420
  
     E−mail tsr@maia.eonet.ne.jp URL http://www.eonet.ne.jp/~tsr   


                                         行 政 書 士
               所長  特定社会保険労務士 田村 幾男

                     

           お問合せは、下記メールをご利用下さい
     
                                             





            

                      行 政 書 士 田村事務所
                                            社会保険労務士田村事務所の営業区域

     (大阪府)
      大阪市(北区・中央区・西区・浪速区・天王寺区・都島区・旭区・鶴見区・城東区・東成区・生野区・平野区・東住吉区
       全区
            住吉区・阿倍野区・西成区・住之江区・大正区・港区・此花区・福島区・西淀川区・淀川区・東淀川区)
     
      豊中市・吹田市・箕面市・池田市・茨木市・摂津市・高槻市・枚方市・交野市・寝屋川市・守口市・門真市・大東市

      四条畷市・東大阪市・八尾市・藤井寺市・柏原市・羽曳野市・松原市・富田林市・大阪狭山市・河内長野市・和泉市

      堺市・高石市・泉大津市・岸和田市・貝塚市・泉佐野市・泉南市・阪南市・
     
       島本町・美原町・忠岡町・熊取町・田尻町・岬町  

    (兵庫県)

      神戸市・尼崎市・伊丹市・川西市・宝塚市・芦屋市・三田市・西宮市・明石市・加古川市・高砂市・姫路市・
      
      播磨町・稲美町・猪名川町


社労士に委託するメリット      トピックス      トピックス(2)     国民年金・厚生年金保険      健康保険制度
社会保険労務士業務  取扱い法律一覧      個人情報保護方針      就業規則    社会保険労務士綱領の厳守      
助成金概要      助成金診断について      リンク集へ       報酬額表     最新NEWS  サービス提供地域
田村事務所へようこそ   田村事務所運営理念  社労士業務(その二)  特定社会保険労務士    産業カウンセラー
代表者プロフィ−ル   田村事務所アクセス   大阪の社労士からの、発信    お問合せ
     キャリア・コンサルタント

 あっせん代理      改正雇用保険法    メンタルヘルス対策      中小企業労働時間適正化促進助成金

短時間労働者均等待遇推進等助成金         均等待遇団体助成金   外国人雇用状況届出制度      常用雇用転換奨励金

                                                                           社会保険労務士・行政書士田村事務所トップへ

本ページトップへ



          お願い:当事務所のホームページの記載事項に関しましては、充分に細心の注意を払い記載しておりますが、

           万が一記載内容により、発生した損害につきましては、責任を負い兼ねますので、ご留意・ご了承下さい。
          

             copyright(c)2007-2008 Ikuo Tamura All Rights Reserved 社会保険労務士・行政書士田村事務所