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        個別労働紛争解決基準としての労働判例シリーズ


 

                          懲戒処分


                                          服務規律違反

1.ポイント


(1)就業規則により

職場内における政治活動を禁止する措置は,

原則として違法ではない

(2)プレート着用行為ビラ配付行為などに対し、

懲戒処分を認める場合は

当該行為の具体的内容に照らし

懲戒処分の有効性が個別に判断される。


2.モデル裁判例

  電電公社目黒電報電話局事件 最三小判昭52.12.13 

                                         民集31‐7‐974、労判287‐26、判時871‐3、判タ357‐116、労経速967‐5


(1)事件のあらまし

 @プレート着用行為

 労働者が就業場所で作業衣左胸に

「ベトナム侵略反対、米軍立川基地拡張阻止」と

書いたプレート(「本件プレート」)を着用して勤務した。

 Aプレート取りはずし命令違反行為

 複数の上司が本件プレートを取りはずすよう注意したが、

労働者は従わなかった。

 Bビラ配布行為

 労働者は、プレート取りはずし命令に抗議するため、

休憩時間中に無許可で、抗議意見とプレート等をつけることの

呼びかけを書いたビラを休憩室・食堂で配布した。

 C懲戒戒告処分

 使用者は、労働者に対し、@ABが就業規則上の懲戒事由に

あたるとして懲戒戒告処分に付する旨の意思表示

(「本件処分」)をした。

 D懲戒戒告処分無効確認の訴え

 労働者が懲戒戒告処分の無効確認を求めて提訴した。


(2)判決の内容

 労働者側敗訴

 @について

 企業秩序維持の見地から就業規則により職場内における

政治活動を禁止することは合理的な定めとして許される。

プレート着用行為は、社会通念上政治的な活動にあたり、

実質的に見ても秩序維持に反するから、懲戒事由となる。

 Aについて

 上司の命令に従わなかった以上、懲戒事由となる。

 Bについて

 ビラ配布行為は、無許可であり、実質的に見ても

上司の適法な命令に抗議する目的でなされ、

内容的にも、上司の適法な命令に抗議し、

職場内の政治活動、プレート着用等違法な行為をあおり、

そそのかすことを含むものであり、秩序を乱すおそれの

あったものであるから、懲戒事由となる。


3.解 説

(1)政治活動を行った場合

 典型的な事実はモデル裁判例である。

 その他に、昼の休憩時間に、休憩室兼食堂において、

日本共産党支持のビラ等を食事中の労働者数人に1枚ずつ

平穏に手渡し、他は食卓上に静かに置くという方法で行われた等、

ビラの配布の態様(状況)、経緯及び目的並びに本件ビラの内容から、

工場内の秩序を乱すおそれのない特別の事情が認められる場合に当たり、

懲戒戒告処分は無効であるとされた最高裁判決がある

明治乳業事件 最三小判昭58.11.1 労判417‐21、判時1100‐151、判タ515‐118、労経速1169‐3)。


(2)その他の違反行為を行った場合

 判例上、懲戒解雇が認められた場合として以下のようなものがある。

 @商品部長という要職にありながら、勤務会社の業種と同種の

小売店を経営し、勤務会社の取引先から商品を仕入れ、

また、商品納入会社に対する正当な理由のないリベートの

要求・収受を行った場合

ナショナルシューズ事件 東京地判平2.3.23 労判559‐15、労経速1393‐13)。

 A無断でコンピューターデータを抜き取り、メモリーを消去し、

加工用テープを持ち帰った場合

東栄精機事件 大阪地判平8.9.11 労判710‐51、労経速1631‐17。

なお、本件は、懲戒解雇事由が認められる場合であったが、

通常解雇として解雇された事例である。)。

 B 所定の手続を経ることなく無断で総額1, 500万円の機器を

私用のため購入し、納入業者から不正納品書及び請求書を

提出させ、同社から過払いとして返金を受けた現金10万円を勝手に

使用した場合

(バイエル薬品事件 大阪地決平9.7.11 労判723‐68、労経速1665‐22)。

 C営業所長ないし所長代理として、

経理担当者の横領行為を容易に知り得る状況にあった

にもかかわらず、経理内容のチェックを著しく怠ったため、

横領行為の発見が遅れ、その結果、被害額を著しく増大させた場合

関西フェルトファブリック事件 大阪地判平10.3.23 労判736‐39、労経速1666‐9)。

 D同僚の出勤表にタイムレコーダーで退出時刻を不正に

打刻した場合

八戸鋼業事件 最一小判昭42.3.2 民集21‐2‐231、判時475‐55、判タ207‐83)。

 E直属の上司によるいじめや嫌がらせ

(実際には存在しなかった)によるとする鬱病の治療後、

職場復帰が可能となったにもかかわらず、直属の上司を避けた

配置転換にも応じず労務提供を拒否した場合

ニューサンノー米軍センター事件 東京地判平14.12.10 労判840‐90)等がある。



          








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