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        個別労働紛争解決基準としての労働判例シリーズ

                           懲戒処分


                                       業務命令違反

1.ポイント


(1)労働者は,労働契約の趣旨と内容に従った労働を行う義務を負い、

単なる機械的労働義務にとどまらず、誠実労働義務を負う。

(2)労働義務に対応する使用者の権利は、労働指揮権と称される。

しかし、使用者は、労務の指揮それ自体にとどまらず、

業務の遂行全般について労働者に対して必要な指示・命令

発することができ、この指示命令を業務命令という。

(3)この業務命令が、就業規則の合理的な規定に基づく

相当な命令である限り労働者は、その命令に従う義務がある。

そして、それに違反した労働者は、就業規則の定めに従い

懲戒処分等の対象となる場合がある



2.モデル裁判例

  国鉄鹿児島自動車営業所事件 最二小判平5.6.11 労判632‐10

(1)事件のあらまし

 本件は、国労組合員が組合バッジの取り外し命令に従わなかったところ、

10日間にわたって1人で営業所内に降り積もった火山灰の除去作業に

従事させられた。

そこで、労働者が、右火山灰除去作業を命じた営業所長、同助役に

対して、同作業従事命令の違法を主張して、

50万円の慰謝料の支払いを求めた事案である。


(2)判決の内容

 労働者側敗訴

 本件業務命令は、労働者が上司の取り外し命令を無視して

本件バッジを着用したまま点呼執行業務に就くという違反行為を

行おうとしたことからなされたものである。

そして、職務規律維持の上で支障が少ないものと考えられる

屋外作業である降灰除去作業に従事させられることとしたものである。

これは、職務管理上やむをえない措置ということができ、

これが殊更に労働者に対して不利益を課するという違法、

不当な目的でされたものであるとは認められない。


3.解 説

(1)判決の理由

 一、二審が、違法行為を止めない労働者に対しては基本的に

懲戒処分によって対応すべきであるとする立場である

のに対し、最高裁は、「職場管理」の観点から業務命令による

対応を肯定しており、

モデル裁判例は業務命令の限界を論じる上での興味ある判決である。

(2)他の裁判例

 業務務命令違反に関する判例としては、

2回に渡る出勤停止処分の満了後出社した労働者に対し

「新しい職場が見つかるまで」自宅待機を命じたことに

合理性があるとした

ダイハツ工業事件
(最二小判昭58.9.16 労判415‐16)、

労働者に対し就業規則たる健康管理規定に基づき、

精密検査を受診させ、病院ないし担当医師を指定し、

検診実施の時期を指示する業務命令は、

その内容・ 方法に合理性、相当性が認められる限り、

労働者の診療を受ける自由及び医師選択の自由を

侵害することにはならないとした

電電公社帯広局事件( 最一小判昭61.3.13 労判470‐6)、

国労マーク入りのベルトを着用して就業した組合員に対し、

会社が就業規則の書き写し等を命じたことが、

労働者の人格権を侵害し教育訓練に関する違法なものとして、

会社に損害賠償義務が認められるとした

J R東日本(本荘保線区) 事件( 最二小判平8.2.23 労判690‐12)、

営業部での勤務を命じる配転命令は職種限定契約に反するもので

無効でありそれに従わなかったことを理由とする懲戒解雇は無効であるとした

大京事件
( 大阪地判平16.1.23 労経速1864‐21) 等があるが、

特にJ R東日本事件は、同じく服飾闘争の手段として多用される

「リボン・バッジ・腕章」等

国鉄青函局事件 札幌高判昭48.5.29 労民集24‐3‐2 57、

大成観光事件 最三小判昭57.4.13 民集36‐4‐659等) と異なり、

必需品といえるベルトの会社による一律禁止には合理的理由が認められないと

しており注目に値する。



           

                 
  









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