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        個別労働紛争解決基準としての労働判例シリーズ


                         懲戒処分



                                           義務・職務懈怠

1.ポイント



(1)使用者は、企業の存立・運営に不可欠な企業秩序を定立

維持する当然の権限を有し、

労働者は、労働契約の締結によって

当然にこの企業秩序の遵守義務を負う。


(2)労働者は、労働義務を履行するにあたり、

就業規則上の行為規範たる服務規律に従う義務がある。

使用者は、企業秩序を害するような違反行為を行った

労働者に対して、乱された企業秩序の回復に

必要な限度で、当該労働者に指示命令を発し、

場合によっては、制裁としての懲戒処分を行うことができる。


2.モデル裁判例



  大熊鉄工所事件 名古屋地判昭62.7.27 労判505‐66

(1)事件のあらまし

 労働者が夜勤においてプレナーを操作中に約7分間居眠りをしてしまい、

プレナーテーブルに損傷を与えてしまっていたので、

使用者はこれを理由として労働者を出勤停止10日の懲戒処分に付した。


労働者は一旦これに従ったものの、処分明け後になり出勤停止10日の

懲戒処分は過去の例に鑑みれば重過ぎるとして、使用者に対し

懲戒処分の取消を求めてきた。

そこで、使用者が労働者に「改心の見込みがない」と判断し、

通常解雇したものである。


 本件は、使用者からの労働者に対する損害賠償請求訴訟が提起された後に、

労働者が解雇の違法を主張して

使用者に対して損害賠償請求の反訴を提起したもの、である。



(2)判決の内容


 労働者側敗訴


 プレナー作業においては、作業者の不注意やミスが

重大な結果をもたらす危険があることは労働者も争わないところである。

原告には重大な過失があったというほかない。

本件解雇が解雇権濫用に当たり無効であったとしても、

このような無効な解雇をなした使用者の行為が、

直ちに不法行為を構成するかはおのずから別個の事柄である。

普通解雇の意思表示は就業規則、労働基準法所定の手続に従って

なされるものであるかぎり、

使用者において自由になし得るのが原則であるから、

これが違法とされるのは、使用者が当該解雇の意思表示が

無効であることを知りもしくは知りうべきであるのに、

害意を持ってあえてこれをなした場合に限るのが相当だからである。


使用者は、労働者との信頼関係が消滅したこと、職場の秩序の維持、

安全管理体制の保持の見地から、労働者を解雇することもやむをえないとし、

普通解雇の道を選択したものである。

そして、使用者がこのような見地に立った事情については

それなりに理解できるところであるが、ただ、就業規則の定める普通解雇

事由の該当性については、果して詳細な検討がなされたか否か

について今一つ明確ではなく、前記職場秩序維持、安全管理体制保持を

優先する論理が先行してしまった感が強い。

しかし、右該当性について使用者の主張するところは、うなづけない

ものではなく、当裁判所の判断と異なったのは、事実関係の評価、

規定の解釈が裁判所と微妙に異なったことに由来するというべき

である。


そうである以上、使用者に過失があったとすることは困難である。

3.解 説

(1)解雇の無効と不法行為成立要件としての違法性の関係


 モデル裁判例は、出勤停止という懲戒処分後に反省の態度を見せない

労働者を解雇した事案である。

このような場合、たとえ、その解雇が解雇権の濫用にあたり

無効であったとしても、使用者の労働者に対する解雇処分がそのまま

ストレートに不法行為となるわけではない。

本判決は、このような場合に使用者に過失が認められるのは、

使用者が当該意思表示が無効であることを知りもしくは知りうべきであるのに、

害意を持ってあえてこれをなした場合に限るとした。

乱された企業秩序を回復させる際の使用者の方法選択に

ついて、ある程度の裁量の範囲を認めるものである。


 ただ、使用者の本件損害賠償請求は、労働者の出勤停止処分

撤回要求に対する報復措置たる性格を持つとの感が免れがたいこと、

使用者の本件損害賠償請求は本件がはじめてであること、居眠りが

労働者の過失である点は否定できないとしても、かかる事態の発生は

企業経営の中で予定さるべき危険の範囲として使用者として受忍

すべきと解する余地もあり、結論については評価が分かれる。


(2)他の裁判例について

 定められた「週間訪問ルート票」にしばしば違反し、

上司から再三叱責、説諭を受けていたこと、得意先訪問開始前にしばしば

喫茶店に入って相当長時間にわたり勤務を放棄したこと等を理由とする

外商員の懲戒解雇が有効とされた

大正製薬事件
( 東京地判昭54.3.27 労判318‐44)、事前の届出のない

遅刻および欠勤日数が就労すべき日数の31% 弱に達した従業員に対する

懲戒解雇が有効と認められた

東京プレス事件
( 横浜地判昭57.2.25 判タ477‐167、労経速1117‐3)、

旅行券を改竄した金銭不正取得を理由とした懲戒解雇が有効と認められた

東武トラベル事件
(東京地判平15.12.22 労経速1862‐23)、

別会社を設立してその会社を通じて下請け2 社からリベートや供応接待を

受けていたことを理由とする懲戒解雇が有効とされた

トヨタ車体事件(名古屋地判平15.9.30 労判871‐168)等が挙げられる。





















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