社会保険労務士田村事務所 事務所便り 『のぞみ』 平成20年8月号
2010年発足予定
「日本年金機構」の組織改革
◆社会保険庁の組織改革
抜本的な組織改革を行っている社会保険庁。2008年10月には政府管掌健康保険の運営を「全国健康保険協会」という
新しい公法人に分離し、2010年1月には社会保険庁を廃止して「日本年金機構」という新しい公法人が設立されます。
とりわけ日本年金機構は、社会保険庁の相次ぐ不祥事と年金問題に対応するために、徹底した改革を迫られています。
◆人員削減と懲戒処分者の排除
政府の「年金業務・組織再生会議」がまとめる、社会保険庁組織改革の最終報告書案をみてみましょう。
同会議は、業務の外部委託や情報技術(IT)の活用で、大幅な人員削減が可能と判断。日本年金機構の発足時の
正規職員数を約10,900人とし、現行比17%減とすることが決定しています。一方で、民間からの採用を拡大し、機構発足時に
外部から1,000人を採用するため、社会保険庁から正規職員として移行するのは約9,900人にとどまります。
個人情報の覗き見などで懲戒処分を受けた職員の排除も重視し、懲戒を受けたことのある職員は正規職員として
採用されません。懲戒処分者については有期雇用とし、退職金にも差をつけることとしています。こうした方向性が明らかに
なるにつれ、退職の意向を示す、過去に処分を受けた職員が続出しているそうです。
これまで、社会保険庁では、「厚生労働省採用のキャリア組」「社会保険庁採用のノンキャリア組」「地方採用の
ノンキャリア組」という3層構造を維持してきました。各層間で問題を共有しない一体感を欠いた運営が、今日の年金
記録問題につながったとも言われています。この反省から、人事権を本部に集約すると同時に、年金機構の幹部に厚生労働省
出身のキャリアを充てる場合には本省には戻さない「ノーリターンルール」を適用し、現場への監督責任を明確化するそうです。
◆今後の課題は?
今回の改革では、「数減らし」にこだわり過ぎた感があることも否めません。全国の社会保険事務所の窓口には年金記録
関連の相談者が殺到しており、慢性的に人手が足りない状況が続いています。今後も増大する業務量に改革後の人員数で
どのように対応するかなど、実務面での課題は多く残っているといえます。結局、非正規雇用などで穴埋めすることになれば、
相談などの業務でサービスの質が保てるか不透明です。
数は減らしながらもいかにサービスの質の向上を目指すか、一見矛盾したようにも見えるこのテーマにどう取り組むかが、
今後の課題です。
注目される「労働者派遣法」改正への
動き
◆派遣法改正に関する与党案の内容
先日、自民・公明両党でつくる「新雇用対策に関するプロジェクトチーム」が、労働者派遣制度の見直しに関する基本方針を
決定、発表しました。同チームでは、この基本方針を踏まえ、今秋に開かれる予定の臨時国会において労働者派遣法の改正を
求めており、厚生労働省でも、改正案を提出する準備を進めているようです。
ここでは、同チームで決定された基本方針をご紹介します。主な内容は、以下の通りです。
◆「日雇い派遣」の原則禁止
低賃金や不安定な身分などが社会問題化している「日雇い派遣」については、通訳などの専門性の高い一部の業務を除いて
(ポジティブリスト化して)、原則として禁止する方針です。しかし、派遣会社をはじめとする産業界からは、反対の声が上がっている
ようです。
◆グループ企業内での「専ら派遣」の規制強化
大手企業グループの派遣会社で働く派遣労働者のうち、約8割の人が同じグループ企業内への派遣となっており、また、
3割を超える派遣会社がグループ内の企業のみに労働者を派遣していることが、厚生労働省の調査で明らかになっています。
これらは、労働者派遣法で禁止されている「専ら派遣」となっているのではないかとの指摘があり、何らかの規制が必要との
意見が以前から上がっていました。このグループ内での「専ら派遣」について、規制を強化していく方針です。
◆偽装請負の派遣先に直接雇用の行政勧告
請負契約であるのに派遣労働者のように働かせたり(いわゆる偽装請負)、建設・港湾などといった禁止業務で派遣労働者を
受け入れたりするなど、派遣労働者を違法に受け入れた企業を対象に、派遣労働者の直接雇用を行政官庁が勧告できるように
する(勧告に従わない場合は企業名を公表する)制度も検討されています。
これまで違法派遣については、派遣元に対する罰則しかなかったため、派遣先にもその対象を広げることにより、違法派遣を
抑制したい考えです。
◆その他の内容
上記の内容以外にも、派遣先の労災責任の明確化、派遣元の手数料(マージン率)の公開義務付け等も方針として挙げられており、
今後の法改正への動きが注目されるところです。
高止まりする自殺者数と急がれる対策
◆急がれる自殺防止への取組み
昨年1年間に自殺した人は全国で3万3,093人。10年連続で3万人を超えたことが、警察庁のまとめで判明しました。
こうした現状を踏まえ、自殺防止への取組みが急務となっています。
◆警察庁の自殺統計データから
昨年の自殺者数は前年よりも2.9%増加し、2003年の3万4,427人に次いで過去2番目の高水準となりました。
男性が全体の約7割を占める2万3,478人で、女性は9,615人でした。30歳代と60歳以上は過去最多となり、
特に60歳以上は自殺者全体の36.6%と3分の1を超えました。人口10万人当たりの自殺者を示す「自殺率」は、
50歳代が38.1%と最も高くなっています。
また、警察庁は昨年、自殺統計原票の原因動機や職業分類を見直し、自殺防止対策に役立てるために今年から
詳細なデータを発表しています。細かな項目では「うつ病」(6,060人)が全体の18%を占め最多となり、「身体の病気」
(5,240人)、「多重債務」(1,973人)の順となっています。また、介護や看病疲れが理由とみられる265人の内分けに
ついては、60歳以上が153人を占めました。
職業別では、無職が全体の半数以上に上る1万8,990人、会社員などの被雇用者が9,154人、自営業者が3,278人、
学生や生徒は873人となっています。都道府県別の自殺者数は、東京都が最も多く、次いで大阪府、神奈川県の順と
なっています。
なお、警察庁の自殺統計は、死亡届をもとに集計する厚生労働省の人口動態統計より、人数が多くなる傾向があります。
これは、死亡届を出した後に警察の調べで自殺と判明したケースや、日本国内で自殺した外国人なども数に含まれるためです。
◆「自殺対策基本法」と「自殺総合対策大綱」
政府は、自殺者数を減少しようと、相談体制の整備、自殺防止のための啓発、調査研究の推進等に取り組んできました。
そこで2006年に制定されたのが「自殺対策基本法」です。この法律は、自殺を個人的な問題としてのみ捉えるのではなく、
社会的要因を踏まえ、社会的な取組みとして対策を実施するべきであるという理念のもと、自殺の防止を図り、併せて自殺者の
親族等に対する支援の充実を図ることを目的としています。
さらに、この基本法に基づき、政府が推進すべき自殺対策の指針として「自殺総合対策大綱」が策定されました。
しかし、自殺者数の減少傾向はみられないのが現状です。スタートして間もない法律でもあり、具体的な形での効果は
まだ出ていないといえます。今後に向けて、早急な対策が急がれます。
8月の税務と労務の手続
[提出先・納付先]
10日
○
源泉徴収税額・住民税特別徴収税額の納付[郵便局または銀行]
○
雇用保険被保険者資格取得届の提出<前月以降に採用した労働者がいる場合>
[公共職業安定所]
○
労働保険一括有期事業開始届の提出<前月以降に一括有期事業を開始している場合>[労働基準監督署]
31日
○
個人事業税の納付<第1期分>
[郵便局または銀行]
○
個人の道府県民税・市町村民税の納付<第2期分>[郵便局または銀行]
○
労働保険料の納付<延納第2期分>
[郵便局または銀行]
○
健保・厚年保険料の納付
[郵便局または銀行]
○
日雇健保印紙保険料受払報告書の提出 [社会保険事務所]
○
労働保険印紙保険料納付・納付計器使用状況報告書の提出[公共職業安定所]
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