社会保険労務士田村事務所 事務所便り 『のぞみ』 平成20年6月号
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未成年者を、アルバイトなどで雇う場合の注意点
◆雇用に関するトラブルに注意!
人材難と言われる昨今、高校生などの年少者や未成年者のアルバイト等は、貴重な労働力となっています。
しかし、社会的経験の浅い年少者や未成年者の雇用はトラブルにつながりやすい危険性もあります。
採用の際や労働に関して、どのようなことに注意しなければならないのでしょうか。
◆親の許可が必要なのか?
ある会社からの質問で、「高校生のアルバイトを採用するにあたり、履歴書の親権者の署名捺印欄が空白ですが、
何か問題があるでしょうか?」という相談がありました。
未成年者の雇用についてはまず、労働基準法第58条第1項 の「親権者又は後見人は、未成年者に代って労働契約を
締結してはならない」といった部分が思い浮かびます。また、賃金についても、未成年者であっても独立して受け取ることが
できます。そう考えると、特に親権者の承認が必要とは考えにくいものです。
しかし、労働基準法第58条第2項では、「親権者若しくは後見人又は行政官庁は、労働契約が未成年者に不利であると
認める場合においては、将来に向ってこれを解除することができる」とあります。また。民法第5条第1項では「未成年者が
法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない」とあり、そして第2項では「前項の規定に反する法律行為は、
取り消すことができる」とあります。つまり、親権者(法定代理人)の同意がない労働契約は、親権者によって取り消す
(結果として、突然アルバイトを辞めてしまい会社に迷惑がかかる)ことがあり得るのです。したがって、履歴書の親権者の署名捺印は、
トラブル防止のためにも記入してもらい、親権者の同意を得ておいたほうがよいでしょう。
◆年齢を証明する書面、身元保証人
また、年少者(18歳未満)の場合、年齢を証明する書面(住民票記載事項証明書など)を、事業場に備え付ける必要があります。
また、万一の際のトラブル防止に備え、身元保証人をつける(できれば複数)ことも大切です。併せて身元保証人の連絡先も把握しておき、
万一の際に連絡できる体制を作っておいたほうがよいでしょう。
◆その他の注意点
他に注意するポイントとしては、年少者はほとんどの変形労働時間制(例外あり)や午後10時以降の業務等も禁止されており、
注意が必要です。そして、未成年者の場合、特に注意しなくてはならないのが、飲酒や喫煙です。飲酒や喫煙が発覚した際に
どのような処置をとるかといったことは、労働契約時に書面および口頭でしっかり確認しておくことが望ましいでしょう。
問題噴出の「後期高齢者医療制度」
◆低所得なのに保険料増!?
後期高齢者医療制度(長寿医療制度)に関するマスコミ報道が跡を絶ちません。
厚生労働省は当初、「低所得者は保険料負担が軽くなる」と説明してきましたが、国民健康保険(国保)から移行した
低所得の夫婦世帯の多くで、保険料負担が増えている可能性が高いことが明らかになりました。
これまで同省は、全国の市町村の8割が採用している算定方式を用いた試算により、同制度の保険料は国保のときよりも
減ると説明していましたが、この算定方式が適用されるのは国保の加入者数で見ると5割に満たないことから、試算方法を
見直すほか、市区町村ごとの実態調査を実施するようです。
◆1万2,000人に新保険証が届かない
保険証の問題も深刻です。厚生労働省は、新たな保険証が届いていない高齢者が5月1日の時点で約1万2,000人いることを
発表しました。
転居の届出をしていないために行方がわからなくなっている人も多いそうで、同省では、未着の場合には引き続き古い保険証や
免許証で医療が受けられるように医療機関に要請するとしていますが、すべての保険証が届くのはまだまだ先のことのようです。
◆障害者が事実上「強制加入」
寝たきりなどの理由から障害者と認定された人が後期高齢者医療制度に加入しないと医療費補助を打ち切る措置をとっている
自治体があることもわかっています。
この措置をとっているのは10道県(北海道、青森、山形、茨城、栃木、富山、愛知、山口、徳島、福岡)で、任意とされているはずの
障害者の加入が「事実上強制となっている」との批判が起きつつあるようです。
◆保険料は7年後に4割増!
厚生労働省は、本人負担の保険料が7年後には約4割も増えると試算しています。現役世代の負担が大きくならないよう、
高齢者の負担割合を引き上げるのがその理由であり、
2008年度は年額6万1,000円の保険料が2015年度には
約39%増の8万5,000円になると見込まれています。
◆果たして制度の見直しはあるのか?
野党4党は、後期高齢者医療制度の廃止法案を共同で参議院に提出し、早期可決を目指す意向を示しています。
また、与党である公明党でも制度の見直し(低所得者の保険料引下げ、保険料天引きの廃止など)に着手しているといわれています。
「年金記録問題」関連での新たな動き
◆年金記録訂正後の見込額を示す
「仮計算書」を発行へ
先日、舛添厚生労働大臣は、「ねんきん特別便」が到着した受給者が社会保険事務所で年金記録を訂正した際に、
訂正後はどのぐらい年金額が変動するかの試算結果を示した「仮計算書」を発行することを明らかにしました。
今月からこの「仮計算書」を発行するとしており、すでに訂正が終了している人にも発行されるそうです。
◆記録訂正で年金減額となる場合の対応
新たに年金記録が判明した場合、年金記録を訂正することにより「年金増額」となるのが一般的ですが、
「年金減額」となる場合もあります。
そのような場合、これまでは窓口の職員により、減額したりしなかったりと対応がまちまちだったようですが、
「減額とするのは合理性に欠ける」との理由から、基準が統一されることになりました。
社会保険庁は、上記のように減額となる場合には「修正なし」として取り扱って受給額が減らないようにする方針を
決定しました。同庁は、今月からこの措置を実施するよう全国の社会保険事務所に指示を出したそうです。
◆年金保険料の過払いを通知へ
また、社会保険庁は、年金を満額受給するのに必要な期間を超えて保険料を支払った人に対して、
何らかの通知を行うことを検討しているようです。
今月から、過払いの申出をした人に対しては過払い分の保険料の返還を開始しましたが、申出を前提とした対応自体を
改めることとしました。しかし、現行のシステムを改善するのには1年程度かかるため、実施されるのはまだ先になりそうです。
◆「ねんきん特別便」いまだに55万通が未着
上記のように、受給者や被保険者のための対策がいろいろと講じられています。
しかし、「宙に浮いた年金記録」の持ち主である可能性が非常に高い約1,030万人に送付された
「ねんきん特別便」については、全体の約5.3%に相当する約55万通が未着となっているそうです。
「年金記録問題」の収束にはまだまだ時間がかかりそうです。
「新型インフルエンザ」への対策
◆政府による対策は?
新型インフルエンザへの政府の対策づくりが急ピッチで進んでいます。海外からの流入を防ぐ水際対策や国民への
ワクチン事前摂取計画等を公表し、4月下旬には対策を実行に移す改正法も成立しています。
◆行動計画と具体的な対策
政府は2005年に新型インフルエンザに備えた行動計画を策定しました。また、2007年3月には、その計画に基づくガイドラインも
公表しています。
2005年以降の取組みの内容は以下の通りです。
1.都道府県における対策本部の設置、行動計画の策定
2.厚生労働省を中心とした関係府省庁による対策を迅速・確実に実施するためのガイドラインの策定
3.農林水産省による主要国際空港における鳥インフルエンザ発生国からの入国者に対する靴底消毒の徹底
4.新型インフルエンザ・ワクチンの生産に関する緊急調査研究
5.タミフル等必要物資の備蓄・配付、研究者・医療関係者・動物衛生専門家の能力強化、インフルエンザ・ワクチン開発支援の
国際協力の推進
◆なぜ急に対策が進んだのか?
インフルエンザ流行の危機は、急に差し迫ったわけではありません。鳥インフルエンザウイルス「H5N1型」の人への感染も
2006年がピークでした。ではなぜ、政府の対策が一気に進んだのでしょうか。
「国家の安全保障の問題である」という認識を欠き、欧米よりも鈍い政府の反応にしびれを切らした専門家らが、様々な手法で
問題提起し、今年になってやっと政府の動きが活発になった感があります。
◆これからの課題は?
今後の課題としては、水際対策で流入を遅らせることはできても、被害を免れることは難しいことが挙げられます。
「H5N1型」の鳥インフルエンザの流行が、インドネシアやベトナム、中国などに集中しているため、大流行が起きれば、
先進国では日本が欧米より先に巻き込まれる可能性は高いです。ワクチンの事前摂取もどれだけ効果があるのか未知数です。
流行時に医師やベッド、人工呼吸器などをどのように確保するのか、また、備蓄量に限りのあるワクチンや抗ウイルス薬を
どのような順番で投与していくのか、具体策の策定が急がれます。
今国会に提出されている主な労働関係改正法案
◆通常国会の会期は6月15日まで
ここでは、現在開会中の通常国会に提出されている、企業に影響を与えると思われる労働関係の改正法案について
みていきます。
◆中小企業にも障害者雇用納付金を義務化
障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)の一部を改正する法律案が提出されています。
主な内容は、現在は障害者の雇用者数が法定雇用率(1.8%)に満たない従業員「301人以上」企業に課されている
納付金の支払義務を、順次「201人以上」、「101人以上」の企業へも拡大するという内容です。また、障害者雇用義務の
対象となる労働者に、週の労働時間が20時間以上30時間未満の「短時間労働者」も追加されることとされています。
この法案が可決されれば、2009年4月1日の施行予定です。ただし、納付金支払義務が課される企業の拡大については、
「201人以上」へは2010年7月、「101人以上」へは2015年7月とされています。
◆「行動計画」提出義務付け企業を拡大へ
「ワークライフバランス」の実現に向けて、次世代育成支援対策推進法(次世代法)の改正案も今国会に提出されています。
従業員の子育てを支援する「仕事と育児の両立支援に関する行動計画」(一般事業主行動計画)の策定・届出を義務付ける
対象企業を、現行の従業員「301人以上」の企業から「101人以上」の企業に拡大するのが主な内容です。この改正により、
約4万2,000社が新たに策定・届出義務を負うことになると推計されています。また、「行動計画」の公表・従業員への周知も義務
付けられるようになります(策定・届出義務のある事業主のみ)。
この改正法案自体の施行予定日は2009年4月1日となっていますが、「行動計画」の策定・届出義務付け企業の拡大は、
2011年4月1日の予定です。
◆労働基準法の改正案
月の時間外労働が一定の時間を超えた場合に、高い割増賃金率を適用することなどを内容とする労働基準法の一部改正案も
国会で審議中です。主な内容は以下の通りです。
・月の時間外労働時間が45時間を超え80時間までの場合の割増賃金率については、2割5分以上の率で労使協定で定める率と
する(努力義務)。
・月の時間外労働時間が80時間を超えた場合の割増賃金については、5割増とする。
6月の税務と労務の手続
[提出先・納付先]
10日
○ 源泉徴収税額・住民税特別徴収税額の納付[郵便局または銀行]
○ 雇用保険被保険者資格取得届の提出<前月以降に採用した労働者がいる場合>
[公共職業安定所]
○ 労働保険一括有期事業開始届の提出<前月以降に一括有期事業を開始している場合>[労働基準監督署]
30日
○ 個人の道府県民税・市町村民税の納付<第1期分>[郵便局または銀行]
○ 健保・厚年保険料の納付
[郵便局または銀行]
○ 日雇健保印紙保険料受払報告書の提出[社会保険事務所]
○ 労働保険印紙保険料納付・納付計器使用状況報告書の提出[公共職業安定所]
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